「文明展」と聞くと、ちょっと小難しい勉強イメージを持つ人もいるかもしれない。
だが、憧れを抱いたことがある人も多い「ナスカの地上絵」も、「シカンの黄金の仮面」も「インカ帝国」も、みんな古代アンデス文明だ。
そして、これらの時代・地域ごとの切り口で開催されてきた展覧会を、ひとつにまとめ、体系的に見せてくれるのが、今回の「古代アンデス文明展」なのだ。そう思うと、確かに勉強にはなる。
しかし、実際に行ってみると、「文明展」であることや、勉強的要素をいったん忘れ、シンプルにアートとしての魅力に引き込まれてしまった。
土器のユニークな造形の裏に恐ろしい背景も
ミイラなどを展示している撮影NGのスペース以外、基本的に撮影OKということもあり、造形的可愛さ・面白さに、思わず写真を撮りまくってしまった。
例えば、シュールな表情や、ユニークな造形の中には、『神のちから』時代のさくらももこ的なタッチのものや、中川いさみや吉田戦車的なもの、『神聖モテモテ王国』のファー様(ファーザー)のようなデザイン、雷句誠の『金色のガッシュ!!』に出てきそうなデザインもある。
しかも、「斬られた自分の首を両手で持つ男をかたどった土器」のような恐ろしいものもあれば、一見、フレンドリーな猫が肩を揉んでくれているような造形ながら、実はいけにえを押さえ込んで、噛もうとしているなど、面白さ・可愛さの裏に、ひどく恐ろしい背景が潜むものもある。
失礼ながら「わっ、すごい顔!」「ヘンな顔~!」などと、夫婦で静かに盛り上がりながら進んでいくと、終盤で見つけたのが、こんなポスターだ。
「古代アンデス文明展特別企画 ♯変顔アンデス展 フォトコンテスト開催中!」
しかも、シャクレな顔に「アゴ呼ぶな!」、動物の小さな装飾のついた土器に「アンデスのフチ子」、カモを肩のほうにのせた土器に「あれ? 声が遅れて聞こえてくるよ」など、まるで大喜利のようなタイトルを添えたものが例として添えられている。
シュールで面白い造形を、勝手に楽しんでいるつもりだったのに、実はこんな風に堂々と「変顔」を楽しんで良い展示だったの!?
そこで、広報担当者に、このコンテストの企画のきっかけなどを聞いてみた。
来場者の声がきっかけに
「来場者から、『展示物が可愛い』という声が多かったことが、きっかけです。『古代アンデス』というと、どちらかというと固いイメージがありますが、作品の中にはポップでシュールなデザインや、鮮やかな色合いなど、今の感覚でも美術品として楽しむことのできる作品が多いんですよ。
確かに、自分などは、古代アンデスのアートとしての魅力に、まんまとハマってしまったクチだ。
しかし、「面白い」だけでなく、資料的価値は非常に大きい。
「作品はどれもアンデス文明の謎を紐解くためのキーになっている貴重な出土品なので、もっと歴史的背景など知れば知るほど楽しめる展覧会となっております」
ちなみに、今回は写真と一緒に、その写真のタイトルも募集中!
「なかには、趣向を凝らしたタイトルをつけてくださる方もおり、思わずニンマリしてしまうような作品も多くあります」
可愛くわかりやすいポップなオフィシャル・ガイドブックもあるほか、アンデスのビールやコーラ、石、塩など、お土産コーナーも充実。
古代アンデス文明に興味がある人はもちろん、ただただシュールでポップなアートが好きな人、お笑いが好きな人、大喜利(?)に自信がある人なども、ぜひ一度訪れてみては?
(田幸和歌子)