帯ドラマ劇場『トットちゃん!』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)第11週。

トットちゃん(清野菜名)が留学先のニューヨークから戻ってきて、トレードマークであるタマネギ頭が完成し、『徹子の部屋』や『ザ・ベストテン』がはじまり、『窓ぎわのトットちゃん』が出版され……と、黒柳徹子のキャリアの中でも特にアツかった時期が描かれた。

「トットちゃん!」第11週「男と付き合ってたのよ」アピール強過ぎる、芸能界面白交遊録がもっと見たいよ
イラスト/北村ヂン

徹子の「男いたのよ!」という主張


観ている人たちもよく知っている時期の話だけに、あんなエピソード、こんなエピソード、ドラマ化して欲しいポイントは沢山あるはずだが、なぜか主軸に置かれていたのはカール・祐介・ケルナー(城田優)との遠距離恋愛。

そもそも徹子の恋愛にあまり興味がないし、祐介の魅力もイマイチ伝わってこないので、「恋愛話はいいから、それよりもっと徹子の芸能界オモシロ交遊録を見せてくれ!」と思ってしまうのだ。

イケメンな上に世界的ピアニスト。しかもボランティアで子どもたちにピアノを教えているナイスガイという非の打ち所がない男なのだが、それだけに人間味が希薄で魅力を感じないのだ。

徹子を誘う手紙が「My room 210. I love you. yusuke」とか、スカし過ぎてるだろ!

しかし、視聴者的にあまり需要のなさそうな祐介との恋愛話が、どうしてドラマの主軸に据えられているのだろうか?

昨年、NHKで放送された『トットてれび』との差別化として、『トットてれび』では描かれていなかった恋愛方面に力を入れているということもあるとは思うが、それ以上にリアル・徹子の意向を感じ取ってしまう。

ドラマ中、芸能界での成功をつかみつつあるトットちゃんが森繁久彌(近藤真彦)から、

「みんなの欲しがるものをすべて手に入れつつあるね、でも男がいない」

と言われるシーンがあったが、アレは、芸能界に長らく君臨しているけど、なぜか色っぽい話をまったく聞かない黒柳徹子に対して、多くの人たちが抱いているイメージそのものではないだろうか。

そんな「男がいない」という世間のイメージに対し、「男、いたのよ! イケメン! しかも国境を越えた遠距離恋愛!」と反論したい、徹子の強い意向を感じてしまうのだ。

……いや、ホントにああいうスカしたイケメンと遠距離恋愛していたのかも知れないけどさぁ。

トリッキー過ぎる父・守綱の死に様


今週は、父・守綱(山本耕史)がいきなり死んだのにもビックリさせられた。

ちょくちょくドラマ内時間が行ったり来たりするので混乱しがちな『トットちゃん!』だが、守綱の死の描き方はホントにややこしかった。

守綱と朝さん(松下奈緒)が仲良く『徹子の部屋』を見ていたかと思ったら、場面が変わって、ルクセンブルクの教会で祐介とトットちゃんの逢い引き。協会内でバイオリンを弾く人を見て涙を流すトットちゃん。

そこへいきなり、

「徹子の父・黒柳守綱はその年の春、他界していました」

のナレーションだ。

ええーっ、いつの間に死んでたの!? つい5分前まで、元気そうにしてたのに!

そこから時間が巻き戻って守綱の元気な頃〜死が描かれるのだが、だったらルクセンブルクのくだり、必要なかったんじゃ……。
どうしても祐介との逢い引きを描きたかったのか?

守綱の最期の言葉は「ママ、僕死ぬの?」だったそうだが、サイコパスに見えるほどのツンデレっぷりを発揮していた守綱、最期の盛大なデレ。説明セリフで処理するんじゃなく、ちゃんと見せてもらいたかった……。

時間の進み方がおかしいよ、このドラマ


それにしてもこのドラマ、登場人物たちのドラマ内年齢がホントに分かりづらい!

現実では、守綱が亡くなったのは1983年、守綱74歳の時なのだが、守綱も朝さんも、多少白髪は入っていたものの、どうがんばっても40代くらいにしか見えない。

それに比べて今週、『徹子の部屋』に登場したダニー市川(新納慎也)の老けっぷりはすさまじかった。

先週は、諸星和己っぽい髪型にグラサン&パンタロンという若作りにもほどがある格好で登場していたのに(その時点で、推定年齢60歳以上なのだが)、この短期間で何があったのだ!?

一方、ダニーの妻だったエミー(凰稀かなめ)やシイナ(小澤征悦)のビジュアルは、服装こそ大麻でも育ててそうなヒッピー感のあるファッションに変わったものの、年齢の変化はほとんど感じられない。ダニーさんだけ老化が異常に早いよ!

『トットちゃん!』ではこれまでも、ロケやセットなどで再現すべき昭和の光景をミニチュアで代用したり、明らかに雑なCGで表現したり、大人の昼ドラだけに、視聴者の想像力を信頼した作り方をしているドラマだった。

同じように登場人物の加齢に関しても、「それなりに年を取っていると思ってね」ということなんだろうけど、せめて「この人が今、何歳なのか」というテロップくらい出してくれた方が分かりやすいと思うのだが。

ちなみに現実では、

・徹子が留学から帰ってきて『13時ショー』がスタートしたのが1972年(徹子39歳)。
・『徹子の部屋』のスタートが1976年(徹子43歳)。
・『窓ぎわのトットちゃん』の出版が1981年(徹子48歳)。
・父・守綱が亡くなったのが1983年(徹子50歳)。
・シリーズ47作目となる『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』の公開が1994年(徹子61歳)。

……今週だけで少なくとも22年も経過していたのか。



さて、来週は早くも最終週。

残り1週でどう話をまとめてくるのか? ……というか、リアル・徹子が健在なだけに、彼女の人生のどのあたりまで描くのか気になるところ。

今週の引きから考えると、渥美清(山崎樹範)の死は描かれそうだうし、「身体の中で何か変化が起こっている」カール・祐介・ケルナーも死にそうな予感全開だ。

結婚はせず「どちらかが死ぬまで、ずっと恋人でいる」ことを選んだトットちゃんだけに、祐介との死別がクライマックスになりそうな気もするが、未だに祐介との恋愛話にイマイチ乗り切れていないボクはちゃんと感動できるのだろうか……?

架空の未来に突入して、徹子の死後、『徹子の部屋』が徹子アンドロイド・tottoに受け継がれて、『tottoの部屋』がスタート。「なんで次回予告にアンドロイドが出ているんだ?」という謎をキレイに回収する最終回だったら、ボクは熱い涙を流すと思うが。
(イラストと文/北村ヂン)
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