帯ドラマ劇場『トットちゃん!』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)第8週。

NHKの入社試験に合格したトットちゃんが、研修生として最後の選考に挑む。


ピュアというよりクルクルパーに見える!


今週のエピソードは、昨年放送された満島ひかり主演の『トットてれび』とかなりかぶっていたので、『トットてれび』を見ていた方にとっては「もう見たよ!」という感じだったかも知れない。

しかしこれだけ短期間に、同じ実在の人物の同じエピソードが二度もドラマ化されることってなかなかないので、それぞれの女優がどのようなアプローチで演じていくのか見比べるのもなかなか興味深かった。

満島ひかりが若干モノマネ感のあるアプローチで、空気を読まない現在の黒柳徹子に近いキャラクターを作りあげていたのに対し、清野菜名ちゃんは、ほんのりと徹子感を出しつつも「とにかくピュアな子」というポイントに重きを置いていた。

NHKの研修中も、ザ・ピュアネス……というより、クルクルパーにしか見えない!

録音用のマイクを見たら「マイクって銀色の蜂の巣みたい」と観察をはじめ、録音された自分の声を聞けば「NHKの機材は壊れている」とスピーカーをぶっ叩く。効果音役として、籠に入れた小豆を揺すってザザーッとやっている人がいれば、本番中なのに「ホントの波みたい〜」とつぶやいてしまう。

どう考えてもダメダメだったトットちゃんが選考に残った理由のひとつに「無色透明」であることが挙げられていたが、無色透明とクルクルパーは思いっきり紙一重だ。

このクルクルパー感を、満島ひかりが演じたとしたら、演技が巧みすぎてあざとくなってしまいそうなところだが、自身も透明感全開の清野菜名ちゃんは、見ていて本気で心配になってしまうくらい天然過ぎるトットちゃんを演じきっていた。


もちろん、他のドラマや映画での演技を見れば、あれがナチュラルな清野菜名ちゃんではなく、すんげー演技力であのクルクルパー感を出していることが分かるのだが。

夢破れていく凡人たちの悲しみ


ピュアネスなトットちゃんが、ピュアネスゆえの壁に突き当たりつつも、何だかんだで順調にテレビ女優としての階段を上って行くのと対照的に、夢半ばで挫折していく人たちも描かれていた。

トットちゃんと同じく、NHKの研修生となっていた音楽学校時代からの同期・シャープさん(趣里)も、戦時中、国民学校の教師として教え子たちを戦地に送り出してしまったことを後悔し「子どもたちに夢を届ける俳優になりたい」と夢を語っていた鐘坂(遠藤雄弥)も、トットちゃんにいじわるをしていた有象無象たちも、みーんな選考でアッサリと落とされてしまい消えていった。

さらに、伯爵令嬢という地位を捨ててダンサーになったエミーさん(凰稀かなめ)も、プロフェッショナルとして踊ることはあきらめ、カレー屋のシイナさん(小澤征悦)と結婚することを選んだようだ。

夢に向かって前のめりだった人たちが次々夢破れていく中、「子どもに上手にお話しをしてあげられるお母さんになりたい」くらいのボンヤリとした考えでNHKを受けたトットちゃんがテレビの世界で成功していくというのは、「結局、やる気よりも天賦の才能!」と見せつけられているようでちょっとツライ。

芸能の世界で生き残る秘訣として「蹴落とさないやつは蹴落とされる」と教えられショックを受けていたトットちゃんだが、ナチュラルに秀でてしまう人間は、結局のところ自分が意図せずとも、知らず知らずのうちに凡人たちをバシバシ蹴落としているのだから……。

次週予告によると、入団の決まっていた歌劇団を蹴ってまでNHKへの入社に前のめりだった、そして常にトットちゃんに対して上から目線で接していたシャープさんが、トットちゃん担当のメイクとなって再登場するという、なかなかエグイ展開が待っているようだ。


ピュアネスなトットちゃんは、思いっきり現実を突きつけられ、挫折してしまった友達に対してどう接するのか!?
「トットちゃん!」第8週。森繁久彌が徹子の胸にタッチする衝撃映像…残り1か月、やっぱり時間が足りない
イラスト/北村ヂン


マッチが黒柳徹子の胸を……!


『トットちゃん!』は、『徹子の部屋』からCMを入れずに続けて放送するという、なかなか思い切った編成となっており、『徹子の部屋』との連携もウリのひとつ。

今週のゲストは、大人トットちゃんを演じる清野菜名ちゃんをはじめ、高橋克典、近藤真彦、真瀬樹里と『トットちゃん!』に出演する人たちが目白押しだった。

清野菜名ちゃん回では、徹子役を演じるにあたっての演技プランが明かされた。

「ただのモノマネにはしたくない」という意向はありつつも、『徹子の部屋』の直後に放送されることもあり、みんなが知っている時代の徹子さんとイメージが違うと違和感を持たれるということで、テレビに出演する以前は自由に演じ、テレビに出演するようになり、現在に近づくにつれ、じょじょに徹子感を出していこうとしているという。

NHKの入社試験前後からひんぱんに登場するようになった「あらま」というセリフなどは、その「徹子感」の一環なのだろう。今後どの程度、徹子に寄せてくるのか楽しみなような怖いような……。


そして、何と言っても衝撃的だったのが、『トットちゃん!』で森繁久彌を演じる近藤真彦のゲスト回。

マッチと森繁久彌、まったくイメージが重ならないので、どうやって演じるんだろうと思っていたのだが、のっけから想像以上の森繁久彌コスプレ(コスプレとしか言い様がない!)で登場。

迎える徹子さんもタキシードを着ており、ドラマ中でも再現されるであろう『徹子の部屋』初回放送の森繁久彌回を再現していた。

『徹子の部屋』初回放送といえば、森繁久彌が徹子の着ているタキシードを触るついでに胸をスリスリなでたというのが伝説となっているが、それを忠実に再現し、マッチが黒柳徹子の胸をスリスリするという衝撃的過ぎるスタート。

さらにだめ押しで、実際の初回放送の映像も流された。

話には聞いていたものの、映像を見たのははじめてだったのだが、胸を触られた若き日の徹子さんの反応が初々しく、なかなかいやらしい。


当時、リアルタイムで見ていた人にとっては、かなりショッキングな映像だったことだろう。

「実際の初回放送で徹子さんが胸を触られたということは、まさかドラマ中でもマッチが清野菜名ちゃんの胸を!? グワーッ、マジかよ!」と、悶えていたら、出し惜しみすることなく、一足お先にドラマでのそのシーンも放送していた。

マッチが清野菜名ちゃんの胸を触るのか触らないのか、それとも上手いこと映像的にごまかすのか!? モヤモヤしながらドラマの放送日を待とうと思っていたのに、ここで見せちゃうんかーい!

見ての感想は……まあ、ドラマでの放送まで取っておきましょう。

森繁久彌役の近藤真彦をはじめ、野際陽子役を演じる実の娘・真瀬樹里、黒柳徹子にとって初の代表作となった「ヤン坊ニン坊トン坊」の作家・飯沢匡役の高橋克典、やたらと似ている渥美清役の山崎樹範、その他にもディーン・フジオカや三宅健などなど、濃厚なキャラが勢揃いして、いよいよ本格的にテレビジョン編がスタート……というところなのに、残り1ヵ月かよ。どう考えても時間が足りない!

エミーさんとシイナさんの恋愛とか、おばさん(八木亜希子)の恋愛とか描いてる場合じゃないよ!
(イラストと文/北村ヂン)

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