疎開先から東京に戻ってきて、いよいよ大人の徹子・清野菜名ちゃんが本格的に始動。
とにかくピュア過ぎるにもほどがある……というか、ちょっと頭の足りない子にしか見えないトットちゃんのかわいさにヤラレてしまった週だった。
トットちゃんのバカすぎる恋愛
トットちゃんのフリーダムっぷりは子ども時代から存分に発揮されていたが、幼少期を演じた豊嶋花ちゃんがやっている分には「自由奔放な子だな」という程度の印象だった。
しかし、清野菜名ちゃんが同じように「オッケーボッケー花ボッケー!」とか、「アーメンソーメン冷ソーメン」といった奇声を上げて踊っている姿は、どう考えても頭のネジが外れちゃっているようにしか見えない。
終戦したとはいえ、周りの大人たちはまだ戦争の影響を引きずっており、どこか暗い雰囲気を残しているのに対して、トットちゃんの一点の曇りもない明るさは際立っている。とにかく明るい黒柳だ。
そんなトットちゃんが、東京に戻ってきて早々、恋に落ちてしまう。その相手というのが教会の牧師(竹財輝之助)。
トモエ学園時代、初恋の相手だった幸ちゃんに対しても、やたらと鉛筆をけずってあげようとしたり、弁当の具をあげようとしたり、英単語を教えてもらってうっとりしたりと、かなり分かりやすくベタ惚れしていたトットちゃんだが、
「幸ちゃんに感じた気持ちを10倍くらいにした感覚」
という今回の恋愛では、さらに分かりやすく前のめりに。
毎日教会に通ってカレーを食べに行く約束を取り付け、デートのために赤い靴が欲しいということで、白い靴をペンキで塗っちゃったり……。わき上がる牧師さんへの思いに突き動かされるがまま、ぐいぐい突き進んでしまう。
しかし、牧師さんには婚約者がいることが判明し、あっという間に失恋してしまう。
失恋のショックで「顔が青い」と言われたことを気にしたトットちゃんは、青い顔を黄色くするためにパイナップルの缶詰を食べまくるのだった。
……やっぱりバカだ!
すべて、いい大人がやっていたらヤバイ行動ばかりだが、清野菜名ちゃんのピュアネス全開な雰囲気のおかげで「ヤバめな子だけどかわいいからオッケー」と押し切ってしまっている。
ちなみに、牧師さんに恋をしたというエピソードは徹子さん自身が著書などでも触れているように事実らしい。
実際には、牧師さんになにかプレゼントしようと思ったもののあげるものがなかったため、拾ったカマキリの卵を箱に入れてプレゼントしてしまった……という、ドラマ以上の奇行っぷりだったようだが。
ドラマでそのあたりのエピソードがカットされていたのは「いくら事実だとしても、さすがにぶっ飛び過ぎている」という判断だろうか。リアル・徹子、恐るべし!
大人の愛は矛盾に満ちたものなの……と言われても
恋なのか何なのかよくわからないまま失恋してしまったトットちゃんに「大人の恋愛」を見せつけたのは、疎開先の呉から戻ってきたエミー(凰稀かなめ)と、マニラの監獄から帰ってきたダニー(新納慎也)。
エミーが戦後、生きていくために場末の酒場で踊り子をしていたのを知って激怒したダニーはビンタ&ハグ。
「大人の愛は矛盾に満ちたものなの。それが分からないうちは本当の恋愛はできないわね」
と言われても、靴にペンキを塗るの塗らないので大騒ぎしていたトットちゃんには理解不能だろう。
その後、なぜかふたりの濃厚なキスまでのぞいてしまって、トットちゃんは大人の階段を一段上ったのだ!?
両親のバカップルっぷり健在
シベリアに抑留されていたトットちゃんの父・守綱(山本耕史)も、やっと帰ってきた。
誰かを好きになるとガーッと突き進んでしまうトットちゃんもかなり恋愛体質の素養があるが、それは両親から受け継いだものだろう。
母・朝さん(松下奈緒)は、
「ここにいたらパパはいつまでもお帰りにならない気がするの」
ということで、さんざんお世話になった疎開先から突然東京に帰ることを決意。行商をしてガッチリ稼いだ金で新築した家も、
「パパが帰っていらした時、分からなくならないように前と同じ赤い屋根、白い壁のお家にしたのよ」
とのこと。
守綱が帰って来て、5年振りとなる家族揃っての夕食でも、完全にふたりだけの世界を作ってしまっていた。
久々に会った父に、その間にあった出来事をガーッとしゃべりまくるトットちゃんを無視して「ママは本当にキレイだね」なんてバカップル全開な発言。
全体的に朝ドラっぽさが漂っている『トットちゃん!』だけに、いきなりの濃厚なキスシーンにはドキッとさせられてしまった。
ダニー&エミーのキスシーンもそうだけど、久々に妻の元に返ってきたらやることはひとつ! ……ということなんだろうけど。
このあたりは、ドロドロな昼ドラの遺伝子をちゃんと受け継いでいるというところだろうか。
マッチが森繁久彌!?
さて来週は、いよいよトットちゃんがテレビジョンの世界へ。NHKの入社試験に挑むようだ。
昨年、満島ひかり主演でドラマ化された『トットてれび』ともかぶってくるエピソードなので(斉藤由貴主演の映画『トットチャンネル』とも!)、どのように差別化してくるのかも気になるところ。
さらに『トットてれび』では吉田鋼太郎が演じていた森繁久彌を『トットちゃん!』では近藤真彦が演じることも発表されて、このあたりも気になりまくってしまう。
ま……マッチが森繁久彌!?
全60話予定ということで、はやくも折り返し地点を過ぎてしまった『トットちゃん!』だが、今後の展開はさらに濃厚になりそうだ!
(イラストと文/北村ヂン)