帯ドラマ劇場『トットちゃん!』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)第4週。

戦時中の軍国的な教育方針の学校になじめず、退学にされてしまったトットちゃん(豊嶋花)を受け入れてくれたトモエ学園。


「色んな子がいるけど、みんないい子!」精神に貫かれた素敵な教育方針で、普通の学校からはドロップアウトしてしまったトットちゃんも馴染みまくり。「ウチの子もこんな学校に入れたい!」もしくは「ボクもこんな学校、行きたかったよ!」と思った人も少なくないだろう。

しかし第4週では、そんな楽しいトモエ学園にも戦争の影響が……。

それどころか、愛犬・ロッキーとの別れ、家にやってきた外国人との出会い&別れ、弟の死、父親の出征、初恋の人との別れ、青森への疎開、トモエ学園焼失と、悲しすぎる出来事がズドドドドッとトットちゃんに襲いかかる。

いや、いくらなんでも1週間で色々あり過ぎ。小学生には耐えられないレベルだよ。

「トットちゃん!」ケガした弟2分で死亡、第4週も展開早すぎて涙出すヒマもない。花ちゃんは可愛いです
イラスト/北村ヂン

トモエ学園にも戦争の影が……


まず悲しかったのが、トモエ学園の素敵な教育方針を象徴していた「海のものと山のものを入れたお弁当」が終了し、数粒の大豆をかじって水を飲むだけになっちゃっていたこと。

当時の食糧事情を考えれば、そりゃそうなのだが、あんなに楽しそうだったお弁当の時間が……。

お弁当の時間にみんなで歌っていた「よ〜く〜噛めよ〜食べ物を〜」の歌も、「飲〜め〜飲めよ〜水飲めよ〜」に変わっていた。それでもみんな、文句ひとつ言わずに元気よく歌っており、「みんないい子に育ってるなぁ〜」という感じなのだが、それが逆に悲しい。

トモエ学園以外のところでも、戦争の影響は当然出まくっている。

「僕のバイオリンで軍歌を演奏するのは耐えられない」とか言っていたトットちゃんの父・守綱(山本耕史)も国の方針に従ってラジオでクラシックを演奏。

反戦的な態度を取っていた「乃木坂上倶楽部」のアーティストたちも、国策映画に出演したり、戦意高揚のポスターを描いたりと、戦争の波にアッサリ飲み込まれていた。


戦争を描いたドラマや映画では、当然ながら「戦争バンザイ!」という切り口になるケースはほぼないわけで、主人公周りの人物たちも反戦的な発言が多くなるのだが、あんまりその傾向が強いと「当時からそういうこと言ってた日本人なんて多くないでしょ?」と、個人的にはちょっと引いてしまう。

『トットちゃん!』でも、これまで反戦色の強い描かれ方をしてきたのだが、ここにきてアッサリと体制側に転ぶキャラクターを出すことで、バランスを取ってきた感じだろうか。

弟が2分で死。展開早すぎるよ!


今週のトットちゃん悲劇メドレーの中でも、一番衝撃的だったのは、弟・明児(伊藤駿太)の死だろう。

唐突に登場してきたユダヤ人指揮者──日本のシンドラーこと杉原千畝のおかげでドイツから日本に亡命することができたという、それだけで2時間ドラマくらいは余裕で作れそうなエピソードを持つアラン・ヴォルグ(チャールズ・グラバー)から、バイオリンの演奏を褒められ、「明児の一生の思い出になるよ」なんて話をしていたのに……。あれ、死亡フラグだったのかよ。


ボールに当たってヒザにキズを作ってしまった……と思ったら、それが原因で敗血症になってアッサリ死亡。

主人公の弟の死なんて、メチャクチャな重要エピソードのはずなのに、ナレ死どころか、キズができてから2分でいきなり遺影という、脳がちょっとついていけないレベルのジェットコースター展開だ。

これまで、キャラ立ち全開のトットちゃんと比べると、あんまりしゃべらないし、バイオリンの練習させられているなー……くらいの印象しかなかった明児。

最後の最後で強烈なインパクトをガツンと残していったわけだが、もうちょっと事前に明児のエピソードを見せてくれていたら、気持ちよく泣けたのに……。展開が唐突すぎて泣くヒマもないよ。

愛犬・ロッキーにせよ、明児にせよ、視聴者的にイマイチ感情移入できていない段階でいきなりいなくなっちゃったので、気持ちが追いついていけないのだ。
そういう意味では、先週死んだ(よく人が死ぬドラマだなぁ)トットちゃんの同級生・郁夫(横山歩)の死の方が、事前に色々とエピソードが描かれていた分、感情が揺さぶられた。

トットちゃんと徹子アンドロイドのおかげで暗くならないドラマ


暗い話の連発で、鬱展開といってもいい今週のトットちゃん。これだけ悲しい出来事が起こりまくっていたら、明るくフリーダムなトットちゃんもちょっとは大人になりそうなものだが、ぜーんぜん変わらず。

ロッキーがいなくなったり、弟が死んだりするたびに大号泣はするものの、しばらくするとすっかり忘れてしまったかのように、ケロッといつものトットちゃんに。

弟が死んだっつーのに、あんこをなめてウットリしてる場合じゃないよ(その顔がまたかわいいんだ)。

しかし、悲しい話なのにドラマ全体の雰囲気が暗くなっていないのは、そんなトットちゃんのキャラクターによるところが大きいだろう。お昼からあんまりドンヨリした気分になりたくもないので、豊嶋花ちゃんの笑顔にはホントに救われる!

そして、予告編に登場する徹子アンドロイドも、鬱展開の暗い雰囲気をかなり緩和してくれていた。


弟が死に、父親に召集令状が来るという悲しみ回の予告編で、徹子アンドロイドが無感情に言い放った言葉が「アラ泣イチャウワ」だって。

ズコーッ!

この空気の読めなさ、ある意味、最近の『徹子の部屋』での徹子さんっぽくもあるが。

トモエ学園が焼けた……(泣)


悲惨な事が起こりまくり週の最後を締めくくったのが、トモエ学園の焼失。

ここもまた時間が足りないのか、何の前振りも説明もなく、いきなり燃えさかるトモエ学園の前で立ち尽くす小林先生(竹中直人)を見せられて面食らった人も多いのではないだろうか。

現実のトモエ学園は、東京大空襲で燃えてしまっているので、ドラマでも空襲で燃えてしまったということなのだろう。

燃える校舎を見ながら小林先生がつぶやいた「こんどはどんな学校を作るか……」も、現実の小林先生が言った言葉だという。

小林先生は戦後も教育に携わっており、現在、世田谷にある「さくら幼稚園」を創立したりしているのだが、小学校を再建するという夢は実現できなかったようだ。


燃えるトモエ学園のバックで流れる福山雅治が歌う主題歌「トモエ学園」がまた悲しくてね……。トモエ学園がなくなっちゃったけど、来週から主題歌、どうするんだろう?

遂に大人のトットちゃん登場


さて、来週の『トットちゃん!』では、いよいよ大人のトットちゃん・清野菜名ちゃんが登場する模様。

『やすらぎの郷』から続けて見ていた人にとっては、待望の! という感じだろう。

ボクも『やすらぎの郷』(レビュー)で石坂浩二を手玉に取っていた清野菜名ちゃんが、どんな徹子を演じるのかずっと楽しみにしていたんだけど、登場を待つ間に、まんまと子ども時代の豊嶋花ちゃんの演技にヤラレてしまい、豊嶋花ちゃんがいなくなっちゃうのが悲しくなってます。

子ども時代編は、さっさと清野菜名ちゃんを登場させるためなのかとにかく展開が早すぎて、悲しい話なのに泣くタイミングがないくらいポンポン話が展開してしまっていたので、大人編ではもうちょっとゆっくりとドラマを見せてくれるといいな。
(イラストと文/北村ヂン)