第1週では、黒柳徹子の母・朝(松下奈緒)と父・守綱(山本耕史)の出会いから同棲、結婚、朝の軟禁生活と、ポンポンポーンとテンポよく展開していたが、第2週は妊娠、出産、小学校入学、退学、新しい学校に……と、さらなるジェットコースター展開に。
特に月曜・第6話の詰め込みっぷりはすさまじくて、せっかくの福山雅治のオープニングテーマを1フレーズで切り上げてナレーションに、さらに前週振り返りダイジェストの中でシレッと「(朝は)なんと仕立屋を開業しました」という重要な新情報がぶっ込まれてくる時短技っぷり。
もう1日どころか、冒頭5分を見逃しただけで話についていけなくなるレベルだ。
このバカップルはもうダメだ……
今週も守綱のツンデレ&サイコ夫っぷりが全開だった。
守綱の稼ぎが悪いせいで、朝が仕立ての仕事をしなければならないというのに、ミシンの音に対し「音楽家の耳には耐えがたい!」とブチ切れ。
その後、なぜかバイオリンを演奏しはじめるのだが、演奏中に外の犬が吠えたら「ボクの音楽を邪魔するものをゆるさない!」と再びブチ切れてガラスを割る。
さすがの朝も、こんなクレイジーな守綱の行動に耐えかね、
「天才かも知れないけど、あなたは何かおかしい!」
「もう一緒には暮らせません!」
と出ていこうとするのだが、守綱はあやまりもせず、強引にベッドへ押し倒してうやむやにしようとする。
もう最低過ぎで、今すぐ別れた方がいいという感じだが、「朝の元に早く戻るため前のめりに歩いているせいで爪先側ばかりがすり減っている」という守綱の靴を見た朝は全部許してしてしまうのだ。
ダメだ、このバカップル!
行動の9割はクソなのに、たまに見せる1割の優しさのせいで別れられないというのは、DV被害を受けがちな女性の特徴なんだけど……。
朝と結婚するはずだった婚約者・児玉(本多力)が、クレイジー夫婦っぷりを見て言った「あなた方は人としておかしい、逸脱している!」という言葉が象徴しているが、朝は完全に「まとも」な世界から逸脱してしまったのだ。
ふたりの暮らしていた乃木坂上倶楽部の住人たちも、それぞれワケありで世間の常識からドロップアウトしてしまった人たちばかりだし。
そんな中で、常識はずれの申し子として黒柳徹子が生まれるのだ。
生まれたと思ったら、もう小学校退学
そんなこんなで3年後、遂に子どもが誕生!
しかし、相変わらずクズな守綱は勝手に「男が生まれる」思い込んでいた上に「徹(とおる)」という名前まで考えていたので、子どもが女だと知り露骨にイヤな顔をしてしまうが、気を取り直して徹子と命名。
そして6年後。
……6年後! ホントにポンポン進むなぁ。
ようやく子ども時代の徹子(豊嶋花)が登場し、『窓際のトットちゃん』でも描かれていた有名なエピソードがスタートする。
戦中教育全開の厳しい学校で、好奇心に突き動かされ、机の引き出しを延々パカパカと開け閉めしたり、紙からはみだして机の上にまで絵を描いちゃったり、授業中に外の通りを歩くチンドン屋を呼んでしまったり……。
入学早々、学校から完全にドロップアウトしてしまう。
怖そうな先生たちから「低脳」とまで言われ、ガンガン怒られまくった挙げ句に見捨てられる。
描き方によっては「かわいそう」感が漂ってしまいそうなシーンだが、徹子役の豊嶋花ちゃんがとことんあっけらかんと演じているので(自ら低脳の歌を歌ってしまうくらい)、ドラマ全体が暗くならずに済んでいた。
常にユーモアが漂っている『窓ぎわのトットちゃん』の文体と共通する部分でもある。
豊嶋花ちゃんと言えば、やはり朝ドラ『ごちそうさん』の主人公・め以子の子ども時代を演じていたのが印象的だが、あの頃から比べるとだいぶ成長して、演技もバツグンに上手くなっているのだが、少々舌っ足らずなしゃべり方がまだ残っていて、それがまたかわいらしいのだ。
今後、人気子役になりそう!
えっ、1クールで終わっちゃうの!?
放送前の情報では、朝役の松下奈緒と徹子役の清野菜名ごのダブル主演という話だったので、もう少し黒柳朝(チョッちゃん)の人生もじっくり描いていくのかと思ったら、アッサリとトットちゃんパートに突入してしまった。
乃木坂上倶楽部の大家から「子どもができたら出て行ってくれ」と言われたエピソードや、守綱の収入じゃ食っていけない問題。戦時中なのにダンスパーティーを開いていて仲間が逮捕されてしまった、娘のトットちゃんが小学校を退学させられ悩む……などなど、どれも朝ドラだったら1週間かけて描いてもおかしくないエピソードなのに、サクッと1話で完結していた。
スピード感のある展開で、見ていて小気味いいのだが、せっかくの面白そうなエピソードがもったいない感じもしてしまう。
どうしてこんなに駆け足で進行しているのかと思ったら、前番組の『やすらぎの郷』の放送期間が2クール・6ヵ月間だったのに対し、『トットちゃん!』は1クール・3ヵ月の予定となっているのだ。
帯ドラマなので、普通の1クールのドラマよりは時間があるにしても、大人の徹子役を演じる清野菜名が登場してからが本番と考えると、確かにこのくらいのペースですっ飛ばしていかないと間に合わなそう。
倉本聰からのゴリ押しでもなければ、月〜金の帯ドラマを2クールという冒険はしにくいのかも知れないが、せっかくの『徹子の部屋』→『トットちゃん!』という、テレビ朝日でしか成立しないコンテンツ。どうせなら2クール、じっくりと腰を落ち着けて見たかった気もする。
テレ朝さん、今からでも2クールに変更。もしくは第2シーズンまで想定した作り方にしてくれてもいいんですよ!
(イラストと文/北村ヂン)