「おそ松さんVR」が登場するそうで。
おそ松さんVR
六つ子と一緒に銭湯に入れるという内容。

よりによって銭湯、ってのが『おそ松さん』らしい。動画を見ると、6人兄弟の一員になったかのようで、とても楽しい。実松が兄弟の中に入って幸せそうだった回を思い出す。
うまくいったら、六つ子の部屋VRとか、トト子&にゃーのライブVRとか、デカパンハウスVRもやってほしい。
ノベルティグッズのよくわかってる感がすごいので一見の価値あり。

トト子の哀しみ


「おそ松さん」2期16話「私なんて全然かわいくない」ワガママ娘トト子の葛藤と敗北
『おそ松さん』2巻BDパッケージ

16話の「となりのかわいこちゃん」は、原作にも『おそ松くん』アニメ2期にもあるエピソードの改変版。「わがままなトト子」のキャラクターをしっかり見せる点でとても重要な話だ。


松野家の隣の家に来た、日焼け肌にショートカットの女性キン子
六つ子はすぐキン子と親しくなった。恋愛感情というより、友達関係だ。
それを見たトト子は、激しい嫉妬を燃やす。

六つ子とキン子が買い物にいくシーンで、キン子はフリフリの服を試着する。
それに対し、ほぼ全員がおべっかを使わず、「似合わない」「微妙」とつっこんでいる。

六つ子全員が女性に対して本音で話せている、珍しいシーンだ。
特に人見知りの一松が家族以外に話しているというのは、大事件。

トト子は自分を納得させるべく、自説を立てる。
「ほほーう、なるほどね、つまりモテないみんなからすると、トト子はちょっとレベルが高すぎるんだよね、だからああやって庶民をターゲットに変えたと」

六つ子がキン子に対して、ストレートな恋愛感情や性欲で動いていたら、まだましだった。
「女の魅力」として切り分ければ、方向性の違いとして片付けて、トト子も上から目線で語れる。

しかしトト子は近所の幼馴染ポジションだ。

自分がおさまるべきだった、六つ子とのフランクな仲という立場に、上位互換のキン子がするっと収まってしまった。

トト子の敗北


トト子にとって六つ子は別に恋愛対象ではないから、そこへの嫉妬あまりないだろう。
「別に私は彼女なわけじゃないし」「荷物持ちなんてさせるかわいくない女なんかやだよね」「すぐぷりぷり怒って超マイペース。全然かわいくない」
お姫様体質の彼女はみんなに、かわいいと言ってフォローしてもらいたいだけだ。

ここで、おそ松が一言。
「うん。全然かわいくない。
どうしたのトト子ちゃん。ドタキャンそんな怒ってんの? 今日なんか変だよ」

観察眼の鋭いおそ松が、トト子が今まで気づかなかった自信の無さを暴いてしまった。

ネットでの感想を見ていると、今回のトト子に共感したファンは非常に多く、Twitterのトレンドに「トト子」が入るほどだった。
彼女は、とてもめんどくさい子だ。
ことあるごとに嫉妬する。毎回何かしら言い訳をつくる。
相手を下げることで自分をあげ、「かわいい」と町内の人に言われることで、安心している。
視野が狭いのはなんとなくわかっていても、六つ子をはべらせておけば、とりあえず褒めてもらえる。心を満たすことができる。
図々しいようで、実際はとても脆い。

キン子に誠実に謝られた時、トト子は、完全敗北する。
泣いたのは、悔しいからじゃない。
自分の惨めさに気づいたからだ。

妥協できる勇気


キン子は昼食を食べるときに、豪華なレストランを選ばずにハンバーガー屋を選んだ。みんなで楽しむための、前向きな妥協だ。
一方でトト子は、妥協することが悪い意味でできない。
1期24話「トト子大慌て」で、結婚相手として石油王を探しに行った際、男性たちを容赦なく切り捨てている。
今までは傲慢で、失敗してからの立ち直りが早かったからよかった。
だが今回はキン子が比較対象に並んでいるため、妥協する勇気がない自分の姿から、逃げられない。

ラスト、トト子はキン子に最大限のお礼としてマグロを嬉々として渡した。
トト子が他人に頭をさげ、プレゼントをあげた、貴重な場面。
何一つ譲歩できない彼女が、他人を尊重する勇気を持ったシーンだ。

『おそ松さん』では新キャラの女の子が出て来ると、メインキャラが大きく成長する。
今回は、自信過剰に見えて、他者の評価がないと一気に不安定になるトト子が、やっと自分に向き合えた。
彼女が迷走した時に必要なのは、自分と真逆な性質の人間と、全く同じ性質のライバル。キン子とにゃーに出会えた彼女は、幸せ者だ。

(たまごまご)