「マックのポテトでハゲが治る」の誤解続出! 騒動について研究発表者に聞いた
画像はイメージ ※マックのポテトを食べても薄毛治療の効果はありません

<【超朗報】マクドナルドのポテトでハゲが治る可能性急浮上>

先日、ネット上でこんな話題が大いに盛り上がった。発端は、『ニューズウィーク』が次のように報じたこと。


日本の科学者が、脱毛症(禿げ)の治療法を発見したかもしれない。秘密は、マクドナルドがフライドポテトを作る際に使っている化学物質にあるという

これに対して、ネットではこんなコメントが続出。

「最近ハゲてきたからポテト食おう!」
「むしろこれニュースになると今後髪が薄い人がポテト頼むとバイトの女子高生に『またあのハゲ来てたよwwwポテトL買ってたwww』っていわれそう…」
「ハゲは治ってもデブになる」

しかし、記事を読むとわかるのだが、実験に使われたのは「マクドナルドのポテトを揚げるとき、油の泡立ちを抑えるために使われている化学物質」ということで、「マクドナルドのポテトを食べればハゲが治る」わけではない。

では、そもそもなぜ研究者が「マクドナルドのフライドポテト」で使われている化学物質に着目したのだろうか。この物質は他にはどんな場所・場面で使われているのだろうか。
また、「マックのポテトでハゲが治る」という誤解が広まっていることについて、研究者はどう感じているのだろうか。
横浜国立大学大学院工学研究院機能の創生部門の福田淳二教授に聞いた。


研究リリースの中に「マックのポテト」は出てこない


「どういう経緯でポテトの話が出てきたのかは不明です。海外の記者が後付で加えて記事にしたのだと思います」(福田淳二教授 以下同)

驚くべきことに、「マックのポテト」は、研究と完全に無関係だった!

記事のもととなったのは、2月1日付の学術誌『バイオマテリアル』で発表された研究リリース
横浜国立大の研究チームがマウスを使った実験により、毛包(毛を作り出し維持する器官)のもととなる「毛包原基(HFG)」の大量作製に成功した。
その際に培養器に使われたのが、酸素透過性の高い「ジメチルポリシロキサン」という化学物質だったこと。

毛包原基をマウスの背中に移植すると、それが生着して新しい毛が生えてきた→ヒトでも同様の培養方法で毛髪の生産と移植ができれば、脱毛症の治療への効果も期待される、という内容である。
この中に「マクドナルドのフライドポテト」という言葉は1回も出ていない。
実に不思議な話だ。
「マックのポテトでハゲが治る」の誤解続出! 騒動について研究発表者に聞いた
記事の元となった学術誌『バイオマテリアル』の発表で使用されたマウスの写真(提供=横浜国立大学福田淳二教授)。

あくまで推測だが、おそらく『ニューズウィーク』の記者がリリースを見て、記事を執筆する際、化学物質の名前に一般的ななじみがないことから、「身近では他にどんなところに使われている?」→「マックのポテトを揚げるときに使っているらしい」→「秘密は、マクドナルドがフライドポテトを作る際に使っている化学物質にあるという」としたのだろう。
それがさらに「マックフライに使う物質で毛髪再生に大成功」とされ、「マックのポテトがハゲに良い」と大きく飛躍。
記事の見出しだけを読んだ人達の間で「ハゲに朗報 ハゲはマックのポテトを食べろ!」といった誤解が拡散されていったようだ。
ネットならではの誤解の広がり方である。


話題になった化学物質はどんなもの?


この「ジメチルポリシロキサン」は本当はどんなもので、研究ではどのように使用されているのか。福田教授は次のように説明してくれた。

「この物質は消泡剤で油の中に加えることで、フライをあげるときに油が泡立たないように入っているようです。ただ、私達の研究ではオイルの状態ではなく、ゴムの状態で使用しています。シリコーンゴムですので、簡単にいうとコンタクトレンズと同じです。最初は液体の状態で、型に流し込んでゴムにします。このように型取りがしやすいので使用しています」

ところで、「マクドナルドのポテトを食べるとハゲが治る」「ハゲは治ってもデブになる」「ハゲがポテトを買いにくくなる」といった誤解やネタが広まっている現状について、どのようにとらえているのだろうか。


「最初は困惑しました。発端となったプレスリリースを担当した大学職員の方が謝りに来られました。しかし、私はトピックが脱毛だからしょうがないし、逆にFOX、BBC、Thomsonなど、有名なメディアからも問合せがあり、正確ではなかったものの知ってもらうという意味ではプレスリリースの目的は達せられたと思っています」
ちなみに、多くのメディアは、きちんと情報元を確認して、「間違った報道がされていますが」と断った上で、内容について取材しているという。

ネット上ではおかしな誤解が広まってしまったものの、薄毛治療につながる可能性のある大きな一歩となる研究。その行方に、今後も注目していきたい。
(田幸和歌子)
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