吉岡里帆主演の火曜ドラマ「きみが心に棲みついた」
ひどい目に遭いながら男から離れられない依存体質の女をめぐる三角関係を描く。先週放送された第5話の視聴率は横ばいの5%。
ちょっと最近同じようなエピソードが多くて、展開にドライブ感がないのがつらい。
「きみが心に棲みついた」5話。体張ってる吉岡里帆だがストーリーは停滞気味か。原作との決定的違いはアレ
原作3巻

「あいつの化けの皮、剥がしてやるよ」


オープニングから下着姿を披露する吉岡里帆。今週も体張ってるなぁ……。露出は第3話ほどではないにせよ、これをフックにしようとしているのは明白。とはいえ、これは完全に原作通り(3巻4巻)の展開なので、演出サイドを責めるのは筋違い。

一方、今回も「キョドコのくせに」と決まり文句を言いながら下着姿の今日子(吉岡)に迫る星名(向井理)。
途中で頭ポンポンの仕草が入るところが面白い。少女マンガなどでは魅力的なものとして描かれてきた頭ポンポンが、本当は無遠慮で不気味なものだということがよくわかる。実生活でこれを好きでもない男にやられると猛烈に腹が立つという女性も多い。

星名は「キョドコなんか遊び相手にもならないよ」と今日子の自尊心を削りつつ、彼の敵意は今日子をかばう吉崎(桐谷健太)に向かう。 

「あいつの化けの皮、剥がしてやるよ」

誰かが今日子の価値を認めてしまうと、今日子が自分の手から離れてしまうと考えているのだろう。「どうしよう、星名さん、何をする気?」とうろたえる今日子だが、それなら吉崎に「星名ってヤバい奴がいる」と一報入れるべきなんじゃないだろうか。
でも、それができないんですな。

ちなみに原作ではここで星名が今日子を抱いていないことが明らかになるが、ドラマではスルーしている。また、原作では星名が今日子を自分の代わりに友人の牧村(山岸門人)に抱かせているが、これは公開ストリップに置き換えられている。

星名の姉が登場して、星名の過去の一端が描かれていた。極度に厳しい父親に詰られ続けて育てられた上、どうやら母親が父親を刺殺したらしい。また姉によると、星名の顔は整形なんだそうだ(牧村も同じようなことを言っていた)。


「私はその日、生まれてはじめて、好きな人とキスをしました」


星名は吉崎とスズキ次郎(ムロツヨシ)を誘い、週末に真冬のバーベキューをすることになる。バーベキューには今日子のほか、先輩の堀田(瀬戸朝香)、稲垣(周本絵梨香)、吉崎の後輩の為末(田中真琴)、そして牧村と今日子の大学時代の先輩で星名の元カノ、レイコ(小林恵美)も参加していた。

バーベキュー場の片隅で、牧村に過去のストリップ映像を見せられてしまう今日子。ストリップ映像を吉崎に見られてしまったら、吉崎に嫌われてしまう――パニックになった今日子は吉崎の前でぶっ倒れる。

「何したって、過去の自分は消せないから」と涙を流す今日子に、吉崎は「友達として」「味方でいる」ことを告げ、頭ポンポンをして去っていく。ああ、女性は好きな人にされるとやっぱり嬉しいものなのね……。

先に一人で帰ってしまった今日子を追いかけようとする吉崎。
そこに星名が現れて、吉崎に追いかけないほうがいいと忠告する。

「少しでも優しくすると、全身全霊で寄りかかってくる。心当たりあるでしょう?」

星名の言葉をさらっとかわして、今日子を追いかける吉崎。うーん、心がイケメン。そしてついに今日子が吉崎に思いのたけを打ち明ける。

「好きです。
私、吉崎さんのことが大好きです」

今日子を黙ってハグする吉崎。「正直、どう扱っていいかわかんねえんだよ」というのは正直な言葉だろう。「でも、放っておけないんだ。自分でも抑えがきかないぐらい」と言いつつ、今日子にキス。「私はその日、生まれてはじめて、好きな人とキスをしました」というモノローグでこの回は終わり。幸せな言葉に聞こえるが、実はとてもつらい言葉だ。

「きみが心に棲みついた」5話。体張ってる吉岡里帆だがストーリーは停滞気味か。原作との決定的違いはアレ
原作4巻

「薄気味悪い」天堂きりんの原作


結局、星名の「化けの皮」発言の真意がよくわからなかったのだが(バーベキューで何をしたいのかもよくわからなかった)、この回はほとんど原作に忠実に構成されている。ラストのキスのくだりも原作どおりだ。牧村への膝蹴りも原作どおり。

ただし、登場人物たちのセックスシーンは丁寧に取り除かれている。たとえば、第4話では飯田(石橋杏奈)と星名が繰り返しセックスするシーンがなくなっていた。第5話ではバーベキューから帰宅した星名が既婚者のレイコとハードなセックスをするシーンがカットされている。行為の最中、吉崎が今日子を追いかけていくところを思い出した星名が興奮してさらに激しくレイコに挑みかかるところは、星名の性癖が表現されていて興味深い。天堂きりんの原作は、可愛らしい絵柄なのに本当にストレンジだ。

『ダ・ヴィンチ』2月号では原作者の天堂きりんと対談した吉岡里帆は、原作について次のように語っている。
「きみが心に棲みついた」5話。体張ってる吉岡里帆だがストーリーは停滞気味か。原作との決定的違いはアレ
「ダ・ヴィンチ」2月号

「わっ、毒を盛られた!」
「これは褒め言葉なんですけど、ずっと薄気味悪い感じがあるんです」
「キョドコの被害妄想の強い性格が、どんどん世界を気味の悪いものに変化させていく。きりん先生が絵で表現されているその部分を、お芝居で表現したいなと思っているんです」

たとえば、今日子が星名に依存して心のバランスを崩す瞬間、目の当たりに異様なクマができて笑顔がひきつり、なんとも言えない不気味な顔になる。『カイジ』のように顔がグズグズに崩れていくカットもある。それを吉岡里帆は過剰な演技で表現しようとしているのだろう。

星名の場合、今日子への執着が表れたり、冷酷さが表れたりするカットでは顔が笑顔のお面になる。彼の不気味な人間性を表現しているのだが、原作での表現に比べると、向井理の演技はまだ理解の範囲内にある。今後のハネ具合に期待したい。

『きみが心に棲みついた』のセールスポイントはストレンジな毒っ気だ。ただ、ドラマ版はまだそれが足りない。セックスシーンを描かない、実写では顔が崩れないというハンデを、どう取り返していくか。

第5話でドラマは折り返しなのだが、この時点で『きみが心に棲みついたS』の4巻まで消化。残りは2巻(連載は継続中)なので、ドラマの後半はオリジナルの展開になる。ここのところ、ちょっと物語が停滞気味だったので、『あなたのことはそれほど』の後半で飛ばした脚本・吉澤智子の手腕に期待したい。……と思ったら、3話から『豆腐プロレス』の徳尾浩司が書いているのね。『あなそれ』は吉澤が一人で全話書いていたけど……降板?

本日放送の第6話では、今日子と吉崎が正式に付き合うことに! しかし、当然、星名が黙ってないはず。夜10時から。
(大山くまお)