昭和のスターは、時代に置いてけぼりにされ、苦悩した。

イヤミの絶望
プロデューサーの前で、首吊り自殺をしようとするイヤミ。
引き止めるプロデューサーに対し、イヤミは言う。
イヤミ「プロデューサー。この番組でミーってなんか浮いてないザンスか? イマドキを描いた六つ子のワチャワチャしたやり取りに、どうも入っていけないザンス」
これはイヤミ役の鈴村健一が抱えていた悩みでもある。
個性的な六つ子がメインの『おそ松さん』だと、イヤミはそもそも出番が少ない。
「ミーだけ馴染んでない。距離がある。溝がある。絡んだら絡んだで、どうしても昭和感が漂うザンス。これどうしようもないザンス」
「くん」と「さん」の構図の違い
イヤミの立ち位置のズレには、「くん」と「さん」の話の構造の違いが大きく関係してくる。
原作と、アニメ1966年版と1988年版の『おそ松くん』は、六つ子の個性は無いに等しい。存在自体がギャグだ。
となると視点を別に設けて、彼らをいじるキャラクターが必要になる。
ここでイヤミとチビ太がライバル兼傍観者として登場。結果として、イヤミとチビ太は六つ子よりも目立つ存在となった。
88年版の『おそ松くん』の、細川たかしが歌うOPの主役はイヤミだ。サラリーマンとして働き、満員電車で通いながら愛想笑いをする様子が描かれている。
当時の日本の父親の様子を彼が背負ったことで、より身近度はアップ。タイトルも「〜〜ザンス」というものが多い。ファミコンソフト「おそ松くん バックツーザミーの出っ歯」に至っては、完全にイヤミが主役だ。