先週放送された第9話では、中世古(瑛太)が主導してきた偽札づくりが警察に露見し、ハリカ(広瀬すず)、亜乃音(田中裕子)、持本(阿部サダヲ)、るい子(小林聡美)が営んできた疑似家族というべきコミュニティが崩壊してしまった。そして、ハリカと彦星(清水尋也)の恋も辛い展開を迎えてしまう。

偽札づくりに取り憑かれた男たち
偽札づくりを見つけた花房(火野正平)の首を締める中世古だったが、周囲の制止もあって未遂に終わる。花房は亜乃音たちを叱責するが、警察沙汰にはしなかった。
しかし、偽札づくりは中世古の小さなミスから綻びが広がり、あっという間に警察の手が迫る。夫の犯罪行為に気づいた妻・結季(鈴木杏)と子が出て行こうとしても、中世古は偽札づくりへの執念を隠そうとしない。
彼は完璧な偽札づくりに取り憑かれていた。以前、自分の眼の前で完璧な偽札を出した男をについて、「あの男が住んでいるのは、この世の中から紙切れ一枚分外れたところです。僕も彼のようになりたい」と言っていたが、完璧な偽札が別の世界へのパスポートになるとでも信じているようだ。彼は、目の前の現実世界に興味を失っている。ニセモノ(=偽札)だけが自分を救ってくれると思っているのだろう。
持本も同じく、偽札づくりに取り憑かれた男だ。
ハリカの悲しい嘘
一方、たこ焼きや手巻き寿司を囲んで、楽しげにニセモノの家族としての生活を営んでいるハリカたち。警察に追われたときも、家族のふりをして逃げようと言って笑い合っていた。中世古や偽札をめぐるシーンは冷たい青のトーンで画面が覆われているが、ハリカたちの食卓のシーンは暖かなオレンジ色に包まれている。
そんな中、ついにハリカが彦星と直接会うことになる。亜乃音が買ってきたピンクのワンピースと赤いカーディガンに袖を通すハリカ。お土産のぶどうパンを持って心軽やかに病院に向かうが、その途中で彦星に恋心を抱く香澄(藤井武美)と出くわしてしまう。香澄が彦星の治療に必要な大金を用立てることができることを聞き、ハリカは安堵のあまり泣き出してしまう。しかし、香澄の申し出は彦星に断られていた。愕然とするハリカは悲しい決断をする。
病室の入り口で、あえて彦星の顔を見ないまま、会話を交わすハリカ。
最後は深く頭を下げて病室を出ていき、ドアの前で崩れ落ちて号泣するハリカ。彼女の姿を見た彦星の弟が、真実を伝えてくれるのだろうか……?
第9話は、一にも二にも広瀬すずだった。彦星の命が助かると知ったときの安堵と涙。そして病室の入り口で語る嘘と号泣。いずれも控えめなカメラワークなれど、見るものを引き込んでいく、静かな迫力に満ちた演技を見せていた。広瀬はクランクアップを報告する自身のインスタグラムに「こんなにお芝居が楽しくて楽しくて仕方ない現場は初めてでした。
るい子の願い事
もう一組のカップル、持本とるい子の関係も終焉を迎えようとしていた。持本はるい子を置いて出ていこうとしていた。余命が尽きる前に、何かをこの世に残したいという気持ちが持本を突き動かしていたのだろう。ハリカのように、ぎこちない嘘を重ねる持本。だが、るい子は若い彦星のように、やすやすと騙されはしなかった。
るい子にとって、持本はこれまで一度もかなったことがない願い事をついにかなえてくれる人だった。彼女の願いとは、「(持本と)ずっと一緒にいたい」とささやかないうものだ。持本を走って追いかけ、手を取って振り向かせて、きつく抱きしめる。ふたりの関係はどうにか繋ぎ止められた。るい子は願い事を「持本を看取ること」に切り替える。
ラストシーンでは印刷工場から偽札のカケラが見つかり、亜乃音が警察に連行されてしまう。亜乃音は帰ってきたハリカを「知らない子です」とかばって警察の車に乗り込む。再びハリカはすべてを失ってしまうのだろうか? 予告によると、ハリカは警察に捕まり、鑑別所に入れられてしまうという。どんな結末が訪れるのか、予想がつかない。最終回は今夜10時から。
(大山くまお)
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