一期の最終回は「なにかに選抜されて勝ち抜いた挙げ句宇宙に行って死んだ」というナンセンスな内容だった。
対して二期最終回は比較的かっちりと作られており、ドタバタながらも味のある回に仕上がっている。

以下ネタバレありなので要注意。
「おそ松さん」二期最終回。赤塚不二夫の開けた穴から六つ子は走り出す【ネタバレあり】
「おそ松さん」エンディングテーマ「大人÷6×子供×6」。歌っているThe おそ松さんズは、2013年の「ワールド・ハピネス」で集結した、高橋幸宏、鈴木慶一、大貫妙子、矢野顕子、奥田民生など豪華なメンバー

意外とストーリーのあった最終回・あらすじ


冒頭は24話のラストから続く。
弟たちの元に何かを伝えに来たおそ松。ところが彼が話しかけようとした瞬間、宝探しに出発したイヤミの飛行機が落下。六つ子とイヤミは即死してしまう。

死んだ後出会った閻魔大王は、聖澤庄之助(ヒジリサワショウノスケ)だった。
一期二期通して、何者かわからない存在として描かれていたが、実は六つ子のあり方を見守っていたらしい。

即断で地獄行きの6人。責め苦にあってすっかりダウンしていたところ、おそ松が思い出す。
「まだ全員、童貞じゃなかったっけ?」
6人は復活する決意を固める。

最後は自力で這い上がれ


一松「でもまあしょうがないんじゃない。だって今日で最終回だもん。今日でもう終わりだからね」
カラ松「確かにな。最後だから死ぬしか無いか」
一松のセリフを見るに、アニメの最終回が来たら、とても寂しいけれどまあ仕方ないよね、と諦念せざるを得ない感覚にちょっと似ている。


けれどもおそ松が「童貞だった」と気づいてからは、何が何でも復活しようとする。
やり残したことはある、コンテンツを復活させたい、という二期スタッフの意気込みの表現だろうか。

六つ子の死亡と蘇生は、一期二期通じての『おそ松さん』アニメのあり方と重ねて見ることができる。

最初に地獄に救いの糸を垂らしたのは、原作者・赤塚不二夫だ。
次に六つ子を救うため現れるのは、チビ太やトト子という原作からのメインキャラ
アニメ『おそ松さん』が、原作の力でスタートしたのと同じだ。

そこから先は、アニメ一期・二期のオリジナルキャラたちが道を切り開いている。
(ただしチビ太が助けた花の精とカラ松が助けたドブスは、原作のキャラだが作中でも死んでいるので登場している)

トド松の代わりにスカウトされたマイコマツ(二期13話)、宇宙海賊シャーザー(二期16話)、コーチ松(一期最終回)、合コン相手のミワとクミ(二期7話)、「三国志さん」の曹操(二期7話)、イヤミの自殺を止めに来たプロデューサー(二期23話)などなど。二期3話にゲスト出演していた照英までいる。

中でも一際目立つのは、一期のイケメン化六つ子・F6。1話では散々やらかした(けどお蔵入りなので今は見られる媒体がない)。
彼らが搭乗したのは、二期1話で出てきたロボットチャントシター

どっちも1話で、作品を『おそ松くん』から『おそ松さん』にするため、弾みをつけたキャラだ。
(参考・ネット大騒ぎ。収録中止「おそ松さん」“幻の第1話”を徹底的に振り返ってみた

二期14話「実松さん第9話」に出てくる実松が重要なところで助けに来る。
実松が住む世界は、現実によく似た生々しいサラリーマン社会。
彼が妄想した楽しい世界が『おそ松さん』の六つ子ワールドということらしい(パラレルっぽいけど)。14話では六つ子と邂逅することができ、とても楽しそうだ。
しかし現実では、実松は交通事故にあって死亡している。

六つ子は実松を覚えている。
実松は六つ子と再開できた。彼は六つ子が再び現世に復活することを望み、力を貸した。
「俺ら(視聴者)」の立ち位置にとても近い彼がかけつけるシーンは、『おそ松さん』が好きだった視聴者が六つ子の活動を後押ししているかのようで、熱い。

みんなに助けられたあとは、ギリギリまで六つ子が自分たちで鬼と戦っていく、というのもいい。

コンテンツの持つ強度は、最終的には六つ子のキャラクターの力にかかっている。

誰も見てくれなかったイヤミ


六つ子は両親や友人たち、にゃーちゃん、キン子、十四松の彼女など、色々な人にその死を悼まれた。
ところが一緒に死んだイヤミに対しては、誰も悲しまなかった。
六つ子がちゃんと火葬されたのに対し、イヤミは適当な河原に土葬されて、アイスの棒を立てられているだけ。六つ子が「腐っていた」のに対し、イヤミは「骨」しかない。
最終カットは、イヤミの「シェー」だ。

昭和に取り残され苦しんだイヤミは、23話で自殺まではかった。
今回は蘇っても肉がない。
イヤミはこの作品の強靭なギャグの骨格でありつつ、六つ子のように肉付けされない(できない)悲しい存在だ。
でもそういう切ない状況にこそ、笑いがあるはずだ。

『おそ松さん』は、酸いも甘いもネタにすることを重視した作品だ。
救いの糸を目前に、六つ子が鬼に捕まるシーン。

赤塚不二夫はそれを見て、手助けすること無く、大笑いしている。
これでいいのだ。イヤミがカラッカラでなにもない状態に干上がっても、それはそれで面白いから、いいのだ。

人生の渋みをゲラゲラ笑うのが楽しかった、『おそ松さん』二期。
原作のネタでやってほしいものも多いし、是非三期を期待したいところ。
……だけれども、それまでにコンテンツの肉が再び全快するか、六つ子のようにゾンビ化し、全部そげ落ちてイヤミのように骨だけになるかは、わからない。
なるようになったら、それが正解、くらいの気持ちで待ちたい。

(たまごまご)
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