連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第26週「みんなでわろてんか」第150回 3月30日(金)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:本木一博
「わろてんか」150話「あさイチ」有働、イノッチ最後の朝ドラ受け。彼らが朝ドラにもたらしたもの
イラスト/まつもとりえこ

150話はこんな話


伊能商会の手を借りて天満風鳥亭の再建が進むなか、続々と仲間が戻ってくる。
てん(葵わかな)は、新しくできた青空寄席で新しい喜劇のショウを行おうと提案する。


みんな戻って来た!


焼け跡に寄席を作っていると、キースとアサリ(大野拓朗、前野朋哉)が現れる。
相変わらず、飄々とした調子で、インチキ商売をやっていて、その様子が明るく、場を和ませる。
さらに、亀井(内場勝則)は、「ごめんやす」と顔を出しただけで、ぱぁっとあったかい灯が灯るようだ。
万丈目吉蔵と歌子(藤井隆、枝元萌)は、人情ものの滋味を出す。
すでに帰って来ていたリリコとシロー(広瀬アリス、松尾諭)は、華やかさと、トボけた可愛らしさを振りまいている。
なかなかすばらしい面子である。
ただ、イチ(鈴木康平)とお楽(河邑ミク)に関しては、ほとんど描かれなかったので彼らの特性がわからないままと最終回を迎えそう。
先日の風太(濱田岳)によるイチへの「やっと役に立ったな」という台詞のほかに、彼らに活躍の場がもう少しあったら良かったのに。最終回、風鳥亭全員出動(?)のお芝居「北村笑店物語」で、ワンチャンあるだろうか?

隼也とてん


隼也(成田凌)も戻って来た。
ふらりと現れるなり「舞台、舞台やで」と大喜び。
そんな息子を、ようやくぎゅっと抱きしめるてん。なにはともあれ、良かった、良かった。
さっそく「僕にもこの寄席手伝わせてください」と言う隼也。このひと、こればっかりですね・・・。

戦場で笑いがどんだけ大事か身に染みてわかった、と笑いの大切さを台詞でさくっと説明。
最後までプロットレベルの台本であるが、一応、擁護すると、映画館にかかる作品(ただしテレビドラマの映画化みたいなもの)だったら、ピンポイント作戦でも十分通用する。
閉ざされた暗闇で、フィクションの世界を楽しんでいる意識がある場だと、唐突に印象的な台詞があっても観客を引き込むことはいくらでもできる。音楽もあるし、画面も大きくて迫力もあるから。
一方、テレビドラマは、身の回りに日常が転がっているから、嘘に入り込み辛い。集中できない環境で、どうドラマに入り込ませるかが作り手の力の見せどころだが、朝ドラは、長年の努力によって、劇場空間のような、作り手と視聴者が一体化する独特の世界を築き上げたからこそ、多少のはしょりも“お約束”として、許されるようになったのではないだろうか。

幽霊レギュラーといい、ある意味革新的なところを突き進んだ脚本家の吉田智子先生は、3月31日(土)のフジテレビ「新・週刊フジテレビ批評 The批評対談」(土曜あさ5時〜)に大ヒット脚本家3人として、「コンフィデンスマンJP」がはじまる古沢良太と、「半沢直樹」「陸王」などの八津弘幸と共に出演して語る予定になっている。

伊能とてん


復興の様子を見ながら、伊能(高橋一生)は、これから、エンターテインメントによる楽しい世の中をつくっていきたいと抱負を語り、
「君とならきっとそんなパートナーになれる」とてんに握手を求める。
伊能「ぼくらのゴールはまだまだ先だろう」
てん「競争なら負けまへん」
予告で「君とならきっとそんなパートナーになれる」という場面が出てきたとき、てんと伊能の再婚あるか? と思ったが、そういうわけでもなさそうな・・・。

北村笑店物語


てんは、万丈目が疎開先で書いた台本「北村笑店物語」を青空寄席でやることにする。
藤吉役を誰かやるかとなって、旅芸人をやっていた若手・田口一郎(辻本祐樹)に白羽の矢が立った。
辻本祐樹は朝ドラ「ちりとてちん」(07年)の後半、主人公(貫地谷しほり)の夫(青木崇高)のはじめての弟子・勇助を演じていた俳優で、「わろてんか」でも次世代キャラの役割を担うこととなった。
大阪出身で、事務所のプロフィールを見ると、この2月「泣いたらアカンで通天閣」という芝居に出ていたようだ。
てんは、この一郎をやけにじぃーっと見つめていて、自信がないようなことを言う彼に昔の藤吉を重ね合わせる。
結果「ほな うちも出ます」と言い出す。
この流れで、まさか、年下男子に恋したのか、と思った視聴者もいるのではないだろうか。逆に、それくらいの飛距離があったほうが、そんなアホな! と言えて気が楽だ。

あさイチ、最後の朝ドラ受け


イノッチ「あした最終回ですよ」
柳澤「うん うん」
有働「・・・(ニコニコしてるだけ)」
なんと、有働由美子は(酒やけで)声が枯れていて喋り辛いという状況だった。
つまり、最後の朝ドラ受けは、3月29日(木)だったということになる。
有働が「そこからのスタートだから 寄席があるってね」とか、(リリコが戻ってきて)「よかった」、「一芸は身を助ける」とか言い、イノッチは「これからが楽しみだね」と語った。


30日、有働、イノッチ、柳澤最後の「あさイチ」のテーマは「引き継ぎ」。朝ドラ受けを、博多華丸・大吉、近江友里恵アナが引き継ぐかどうかについても語られた。
前述した、作り手と視聴者の一体化は、これについては、拙著「みんなの朝ドラ」にも書いているが、「あさイチ」での「朝ドラ受け」という媒介があったからこそ。
有働、イノッチ、柳澤の話芸が、朝ドラを、視聴者みんなが笑ってツッコんで成立する、お約束の世界として仕上げた。
2018年3月、3人の卒業によって、この流れに、ひとつの区切りがついたのではないだろうか。
この流れを引き継ぎ、新たなフェーズへと進化を遂げられるか、刮目したい。

(木俣冬)