帯ドラマ劇場・第3弾『越路吹雪物語』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)最終週。

越路吹雪(大地真央)の人生を描くドラマだけに、最後は病死しておしまい、というのは予想できていたが、こんなに唐突にがんが発見され、すぐに死んじゃうとは。

「越路吹雪物語」最終週。結局大泣き吉田栄作の印象が凄い…1年後の「やすらぎの刻〜道」の番宣が衝撃だ
イラスト/北村ヂン

唐突すぎる「がん」発覚からの死


本格的な演技の勉強をするためにミュージカルや歌の仕事を休止し、宇野重吉(山本學)と組んで舞台「古風なコメディ」を成功させたコーちゃん。

しかしその直後、手遅れなほど進行したがんが発見され、余命3ヵ月と判明してしまう。

さっきまで次の舞台の構想を語っていたのに、いきなり余命3ヵ月って!

ドラマとして考えると急展開すぎるのだが、現実の越路吹雪も、ちょっと前まで元気そうだったのに突然入院することとなり、約3ヵ月で突然亡くなってしまったようだ。

ドラマでは、やたらと変な咳が出ていたり、精神的に不安定になっていたりと、悲しい結末に向けての伏線が多少は張られていたものの、現実の死は伏線なんて張られる余地もなく、突然やってくるということだろう。

……にしても、がんが発覚して2話で死んじゃうというのは唐突すぎる印象だったけど。

コーちゃん本人は、がんであることを告知もされず、ただただ弱っていくだけだったのでドラマを展開させにくいにしても、そんなコーちゃんに対してどうせっするべきか葛藤する周囲の人間をもう少し見たかった。

タバコを止めさせようとする岩谷時子(市毛良枝)と、助かる見込みがないならば、最期は好きなことをさせてやりたいと考える夫・内藤法美(吉田栄作)との対立あたりは、深掘りしたら面白かったと思うけど。

「本当の家族ではない」問題


夫である内藤以上に長い間、コーちゃんと一緒に過ごしてきて、「家族」同然に付き合ってきた時子だが、最期に壁となったのが「本当の家族ではない」という事実だった。

詳細な病状も「ご家族の方以外にはお話出来ません」と、教えてもらえず(その後、こっそり教えちゃう主治医もどうかと思うが)、危篤となったコーちゃんに会おうとしても「家族の方以外はご遠慮下さい」と止められてしまった。

しかしそこで、それまで時子と対立する立場にあった内藤が、「家族です! その人は妻の家族です!」と時子を招き入れて、グッと来てしまった。

結局、コーちゃんの最期は内藤と時子で看取ることとなった。……というか、ドラマ上の関係性の深さを考えると「吉田栄作、いらんよ」という感じではあるのだが。

コーちゃんの死後の時子が見たかった!


「法美さん、コーヒーを入れなきゃ」

弱り切っていたコーちゃんが突然ベッドから起き上がって、病室のドアを開けるとステージ。

「愛の讃歌」を歌いながらこれまでの出来事がダイジェストで流れ、その姿を、子ども時代を演じた岩淵心咲と、青年期を演じた瀧本美織が見守っている……という演出はさすがに感動的で見入ってしまった。

しかし回想ダイジェストで、ドラマの序盤〜中盤にかけての重要人物である八重子がほぼモブ扱いレベルでしか出てこないのはどういうこった!

最終週全体を通しても、八重子のことをまったく思い出していなかったし……。
ホントに八重子って何だったんだ。

結局、序盤はコーちゃんが時子と出会うまでの間を埋めるための要員として。中盤以降は、かわいそうなことになっている八重子を時々思い出してコーちゃんを泣かせるためのタマネギ要員としてしか機能していなかった。

だったら、子ども時代の話を全部飛ばして、コーちゃんと時子の出会いからドラマをスタートすれば、もっと「コーちゃんと時子の物語」というテーマがハッキリしたと思うのだが。

「愛の讃歌」を高らかに歌い上げるコーちゃんの姿から、バツッと暗転して病室に戻るともう死んでいるという幕切れもショッキングだった。

そこからもう少し話が続くのかと思いきや、ナレーションで越路吹雪の歌碑の紹介をしただけでサクッと終わってしまったので、最終的に頭に残っているのが大泣きする吉田栄作という……。

いや、そこはもっと時子にフォーカスして!

最終週、時子の母親が亡くなる際にも「コーちゃんはいい子ね、いい子」と言っていたし、コーちゃんと時子の最後の会話も「お時さんはいい子」「コーちゃんもいい子よ、ありがとう」と、「いい子」というワードが印象的に使われていた。

第1話の冒頭は「愛の讃歌」の歌唱からはじまり、岩谷時子が越路吹雪の百か日法要で発表した詩「眠られぬ夜の長恨歌」が朗読されていたのだが、その中に「よい子よ、日本一のよい子よ」というフレーズがあるので、そこにつなげてくると思ったんだけど……特にそういうこともなかったね。

ドラマ全体として見ると、やはり人が生まれてから死ぬまでを描くにしては1クールというのは短いという印象が強くて、特に最終週は(現実にも唐突だったとしても)ちょっと駆け足で死が描かれていた印象が強い。

オリンピックの影響で放送が1回休止となっていたせいで、最終週にしわ寄せが来てしまった、というわけではないと思いたいが……。

さすがの大地真央の歌唱盛りだくさんで、死の演出もよかっただけに、そこが若干残念だった最終週だった。テレビ朝日さん、せっかくの帯ドラマなんだか、休止させないでちゃんと月〜金で放送してあげて!

1年後の『やすらぎの刻〜道』はどうなる!?


しかしこの「帯ドラマ劇場」枠は、この後1年間お休みとなり、来年の4月から『やすらぎの刻〜道』がスタートする。


せっかく、『徹子の部屋』→帯ドラマ劇場→『ワイド・スクランブル』という視聴習慣が定着していたのに、どうしてくれるんだ!

それだけの準備期間をおいての『やすらぎの刻〜道』は2クールどころか4クール……1年間の放送ということでメチャクチャ楽しみなんだけど、来年4月スタートのドラマ番宣ってはじめて見たよ。

同じくシニア層をターゲットとしているドラマ『水戸黄門』は「来週まで生きていられるか分からないから」という視聴者からの要望を受けて1話完結になったという話もあるくらいなのに、シニア視聴者に1年後のドラマの告知するという、すごいことをやるテレビ朝日。

「人間、いつ死んじゃうか分からないよ」みたいなドラマを見せられた後だっていうのに!

というか、高齢者の多い出演者や倉本聰の1年後がどうなっているかの方が心配だが……。

みなさん、なんとか生き残って1年後にまた会いましょう!?
(イラストと文/北村ヂン)

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