第1週「生まれたい!」第3回4月4日(水)放送より。
脚本:北川悦吏子 演出:田中健二

連3話はこんな話
1971年、7月7日。岐阜・東美濃地方の梟町で、ふたりの赤ちゃんが生まれた。
ひとりは、楡野食堂の晴(松雪泰子)の産んだ猿のような女の子。
ひとりは、萩尾写真館の和子(原田知世)の産んだつるんとかわいい男の子。
男の子は、旋律から「律」と名付けられ、
女の子の名前は、紆余曲折を経て・・・鈴愛と決まる。
「まだ名前もない時に僕たちは出会った」
胎児の鈴愛(永野芽郁)に代わって、同日同病院生まれの律(佐藤健)がナレーション。
「まだ名前もない時に僕たちは出会った」
文学を読むような口跡が、とても心地よい。
「うちの母はおっとりとした美人で」という台詞には、律、お母さんのこと好きなんだろうなあ、と思う。
佐藤健については、ずいぶん前(12年)に、
「るろうに剣心」大ヒット7つの理由、これはゆとり世代論であるという記事を書いたことがあって、そこで、佐藤が、ベストセラーの若者論「絶望の国の幸福な若者たち」のなかで著者・社会学者・古市憲寿と同世代対談(85年生まれ)をしていることについても触れた。そこでの佐藤の実直な発言に感心したからだ。
その後、佐藤は「るろうに剣心」の続編もヒットさせ、最近では「8年越しの花嫁 奇跡の実話」も大ヒット。
映画俳優として、着々と歩んでいる佐藤のナレーションは、今後冷静で理知的に描かれるであろう律らしさにあふれていた。
鈴愛が天然で元気な分、彼が抑制している。理想的な対比である。
対比が効いている
鈴愛と律は、生まれ方、見た目、語り口のほか、家の環境、名前のつけられ方まで、何から何まで違う。
楡野家は庶民、萩尾家はややセレブ。
名前も、すぐに素敵な名前が決まった萩尾家と、名前をつけるのが後手後手にまわる楡野家。
ただし、楡野家は、仙吉おじいちゃん(中村雅俊)の悲願があり、お父さん宇太郎(滝藤賢一)が、出産で一番大変だった晴につけさせたいという愛情があり、結果、朝、晴が見たスズメから鈴愛と決まる。
楡野家も萩尾家も、愛情あふれた家庭であることは変わりないようだ。
おじいちゃんの案「つくし」を、「あさイチ」で華丸が「花男か」とツッコんでいたのが可笑しかった。
テレビドラマ好きか。
ちなみに、永野芽郁は映画「ひるなかの流星」(17年)でも「すずめ」という名前の主人公を演じていた。
子どもを産むこと
子どもができて、出産して、おしめを用意して、名前をつけて・・・と出産にまつわる部分を丁寧に描いている「半分、青い。」
病院の院長・岡田貴美香(余貴美子)が助産婦に「子ども産まなあかん」と言うところなど、少子化対策かと思わないでもないが、北川悦吏子先生も体が弱いにもかかわらず出産してお母さんになっている実体験があるからこその説得力はある。
産む、産まないに関しても昨今ひじょうにデリケートな問題になっているので、あんまり産むイコール正義と描かれるといやだなと思ったが、そこは、誰にも公平な公共放送。先生が産んでない(旦那もおらん)人として描かれるという一応の気遣いがあった。
でも、なんだかんだいって、新しい命は愛しい。元気がもらえる。育むということの大切さは忘れたくないと
思わされた朝である。
キミカ先生、「ハルワコ(晴・和子)」と略すセンスがなんかさすが。
(木俣冬)