連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第4週「夢見たい!」第21回4月25日(水)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:土井祥平

21話はこんな話


就職活動をはじめるも、落ち続ける鈴愛(永野芽郁)だったが、農協に就職が決まる。

ニコニコ仮面


面接で「ニコニコ仮面」の洗礼を受ける鈴愛。
「ニコニコ仮面」とは、“面接のとき調子のいいことを言っておいてあっさり落とす輩のこと”とナレーション(風吹ジュン)が揶揄。

企業面接に限らず、世の中には、調子のいいことを言ってあっさり翻す輩はたくさんいる。
こういう仕事しますか〜 とか ◯◯さんに紹介します〜 とかニコニコ言ったきりそれっきりとか、ニコニコインタビューに答えていた人があとでばっさりカットしてくるとか、そんな悲しい出来事はたくさんある。
「先生」、「頭のいい学校の新聞部」に続き、「会社のえらい人」と、よさげに見える人がそうでもないシリーズがちょいちょい挟まってくる朝ドラ。
「半分、青い。」21話。豊川悦司が朝ドラ名物「変なおっさん」として登場
「愛してると言ってくれ」TBS
95年に放送された豊川悦司と北川悦吏子の傑作ドラマ。豊川は、聴覚障害をもつ画家を演じた。
第一話のクライマックス、常盤貴子と豊川がホームのあっちとこっちにいて、電車がシャッターし、
常磐が豊川側のホームに駆けていくと、豊川は電車に乗らずに立っているという場面。あれ、どっかで見たような・・・。随所にTBSの名ディレクター生野慈朗の演出が冴えまくる。

家族愛


就職試験に落ち続ける鈴愛を家族が心配して、草太(上村海成)が代表して受験したらどうかと言いに来る。
大学は大勢で騒ぐが、騒がしいところが苦手と告白する鈴愛。
ほんとうは片耳が聴こえないことでいろいろ苦労があるけれど・・・と思いきや、ふたりも進学させるほどの家計でないことを心配しての演技だった。
ただ、ほんとうに演技なのか、そうじゃないのか、わからない気もする。

なんだかんだ言って、左耳が聴こえない不自由さはあって、でもそれはそれで、ほかに楽しむ方法をみつけているのかもと思うと、鈴愛を抱きしめたくなる。
家族愛、健気なヒロイン、これも朝ドラ。

永久なるもの


草太のプレゼントしてくれたぐるぐる定規を使う鈴愛。
マーブルマシーン、ゾートロープ、拷問器具、ぐるぐる定規・・・と鈴愛は、くるくる回るものが好き、みたいだ。
と思った時、「まわれまわれメリーごラウンド♪」と、北川悦吏子の名作のひとつ「ロングバケーション」の主題歌、久保田利伸の「LALALA LOVESONG」を思い出した。
愛はめくるめく。くるくると永遠に循環していく。

「LALALA LOVESONG」「ララランド」「ドドドドドドドドドラえもん」・・・

明日とあさってのことしか考えてないのか


なんとかかんとか農協に就職が決まる。
学校で、お友達が将来の夢を語るのを聞いて、鈴愛は、自分には何もないことを痛感する。
たとえば、菜生(奈緒)は、デザインの勉強をして、実家の洋品店をほんとうのおしゃれにしたい、DC ブランドを置きたいと夢見ていた。

律は、鈴愛を「明日とあさってのことしか考えてないのか」とからかう。
ふたりが歩く静かな夜の商店街。
いつも、夜、妙にキラキラしたふくろう商店街は、夢のフィルターがかかっているんじゃないだろうか。
田舎の商店街って、夜は真っ暗で、とてもさみしいもの。

でも、ふくろう商店街は、鈴愛がお母さんに背負われたり、律とかけっこしたりするとき、キラキラキラキラ、優しい灯りで彩られている。
「鈴愛のこっち側慣れた」という台詞とかさりげなくすてき。

鈴愛は、成長が同年代の人よりも少し遅いのかなと思う。でも、秋風羽織の漫画と出会って、ポテンシャルが開花しはじめた。彼女のなかで「もやっとしていた」ものが形になって、あふれる想像(創造)力が、秋風羽織の圧倒的な想像力に感化され引きずり出されていく。
なにごとも、きっかけや、出会いが大事だ。

秋風羽織と出会って才能を開花させるきっかけを作ったのは律。彼はさらに「漫画を描けば」、と鈴愛の
人生を後押しする。
秋風羽織も重要だが、やっぱり鈴愛にとって律の存在が重要だ。
なにしろ、くるくるまわる「永久機関」は律の夢だから。

東京のカサノバ


秋風羽織の漫画「東京のカサノバ」が出てきて、謎の作家・秋風はどんな人かと思いを馳せる、律と鈴愛。
「東京のカサノバ」のような人だと鈴愛は想像すると(「カサノバ」とは女たらしの意だが)、場面は東京、秋風羽織の仕事場へ(空撮の東京にヘリの音がかぶるリアリズム)。

ロン毛でサングラスの迫力ある中年男性だった。
音楽のリズムで台詞を書く(専門用語だと「ネーム」ともいうが、ネームが示すものは広範囲のため、「台詞」は「台詞」と分けたほうがいいという判断であろう)秋風の仕事場には、カチカチカチとメトロノームが鳴っている。
リズムにこだわり決めた台詞「そうだね、これは、たぶん、きっと」は、薬師丸ひろ子の「探偵物語」(作詞 松本隆 83年)を思い出す。

髪ばっさばさで小指を立てて漫画を描く豊川悦司。風吹ジュンに「変なおっさん」呼ばわりされる。
「ひよっこ」(16年)2話で、ナレーションの増田明美が、峯田和伸の登場に、「朝ドラには変なおじさんがよく出てきますよね、なんででしょうね」と語りかけてSNSで大反響だったが、豊川悦司、朝ドラ名物のひとつ「へんなおっさん」枠だったとは。

(木俣冬)