熱血刑事・矢代朋(波瑠)と、文書解読のエキスパート・鳴海理沙(鈴木京香)がバディを組んで「文字」を手がかりに未解決事件を解決していく本作。
第3話となり、ふたりともキャラをつかんできたのか、ちょこちょこと演技のテコ入れが見受けられるのだが、特にグッときたのが「センパイ、〜〜ッスよ!」という矢代の口調。今までそんなしゃべり方してたっけ!? いや、すんごくいいんだけど。
クールビューティー・イメージの強い波瑠による体育会系熱血キャラというだけでギャップ萌えだったのだが、さらに体育会系要素を強めていてタマラナイ。
極度の「文字フェチ」で、世間離れしていそうな鳴海も、「シワ」という言葉に過剰に反応したり、日焼け(紫外線)を気にしたり、唐突に「ああ……恋がしたい!」とつぶやいたり、かわいらしい一面を出してきている。
このふたりをサポートする財津(高田純次)と草加(遠藤憲一)、やたらイヤミを言ってくるのに手柄は横取りしようとする嫌な上司・古賀(沢村一樹)など、周辺の人たちもキャラが立ってきて俄然楽しくなってきた。
ただ、事件の方はやっぱり微妙だったけど。
くたびれた吉田栄作の演技がいい!
今回の事件は5年前、真っ昼間の自転車駐輪場で大学生・舞阪佳織(福原遥)が刺殺されたという事件。
例のごとく未解決のままとなっていたのだが、新たに起こった殺人事件の被害者・与田秀樹(深水元基)が、かつて佳織と交際していたということから再捜査がはじまる。
与田の腕に入った「MISEBAYANA」というタトゥーは、百人一首の90番(相手のつれなさを嘆き、恋心の辛さを訴えた歌)から取られたものではないかと推測。
さらに佳織が殺害された時、百人一首の札を握りしめたまま死んでいたということから、百人一首をカギに捜査が進められていく。
佳織がかつて通っていた大学で百人一首を研究している教授・塚本秀平(吉田栄作)にも聞き込みに行くが、いい歳して独身で変わり者、佳織の住んでいた久我山駅周辺での目撃証言もあり、塚本教授が佳織のストーカーをしていたのではないかという意見も出てくるが……。
この吉田栄作の演じる、地味でくたびれた大学教授役がまた、いい味を出していた。
かつてトレンディの権化だった吉田栄作が女子大生たちから「キモーい」と言われ、あまつさえストーカー扱いされようとは。
吉田栄作とともに「トレンディ御三家」をになっていた織田裕二がいまだにバブル&トレンディ感を引きずっていたり、加勢大周がアレなことになっていたりすることを考えると、吉田栄作、かつての輝きはないけどいい役者になってます。

今回もエスパー過ぎる鳴海の推理
さて、鳴海による「文字」を手がかりにした推理は今回もエスパーばりに冴えまくりだった。
・佳織の日記に出てくる「彼」という文字に、右肩上がり(心が情熱的に踊っている)のものと、右肩下がり(気持ちが不安定で悲観的)のものがあることから、当時交際していた与田以外に「彼」がいたのではないかと割り出す。
・与田の書き文字の特徴から「普段は穏やかだけど時に興奮して激しい怒り方をする」性格であると見抜く。
・塚本教授の書いた「久我山」という文字の筆圧が高いことから、佳織に対して何かしらの思いを抱いていたのではないかと見抜く。
・佳織の遺品の百人一首の中から、89番(先生への許されない思いを詠んだ歌)がなくなっており、逆に51番(口に出すことのできない恋を読んだ歌)が多く入っていることから、佳織と塚本教授が思いを寄せ合っていて、百人一首の札を贈り合っていたのではないかと推測。
こんなことから、塚本教授のことを好きになった佳織が与田と別れようとしたら与田がストーカー化。知人に依頼して佳織を殺害したのでは……とエスパー推理を展開する。
今回は百人一首絡みということで「文書捜査」の活躍する余地が多く、ズバズバと謎が解決していくのは気持ちいいのだが、
「(証拠に)なるわけないでしょ、科捜研じゃないんだから」
「もし、文字から聞こえてくる空想という推理が許されるなら……」
などと鳴海自身が言っているように、文書捜査といいつつも、基本的には何の証拠にもならない鳴海の空想。
それだけを根拠にバンバン捜査を進めていき、教授の部屋に勝手に入り込んで家捜ししちゃう警察はヤバイぞ!
もうちょっと救われるエピソードも見たいです
結局、佳織を殺害したのはストーカー化した与田に依頼された知人。与田を殺したのは、佳織を殺害され、恨みを募らせていた塚本教授だった。
しかし、塚本教授が与田を殺した経緯も、与田が新しい女にストーキングしている真っ最中、「(電話を)切ったら殺すぞ! 殺しちゃうよ〜、後ろからナイフでグサッとね」とか言ってるところに塚本教授が偶然通りがかるという奇跡的過ぎる偶然から。
「やっぱり与田がストーキングしていた」「実行犯が別にいるらしい」この辺が分かった段階で警察に連絡しようよ、塚本教授……。
最後、「佳織が殺害された際に百人一首の56番の句(せめてもう一度あなたにお会いしたいという思いを詠んだ歌)を握りしめていた」と言われ、佳織に思いを馳せる塚本教授の回想シーン。
百人一首を通じてお互いに思いを通わせながらも、教授と教え子という関係から、手ひとつ握らないふたり。ピュアネスみなぎる佳織(まいんちゃんッ!)と、不器用すぎる塚本教授のザ・純愛にグッとさせられたけど、佳織は死んじゃってるし、塚本教授はこの後、刑務所に行っちゃうし……。救いがねえ!
「未解決事件」をテーマにしているだけに、かつて起こった事件のせいで恨みを募らせた被害者(の関係者)が新たな事件を起こしてしまう。という展開が多くなるのは仕方のないところなんだろうけど、最初の事件を警察がキッチリ解決していたら、この人が犯罪者になることもなかったのに……と、毎回モヤモヤさせられてしまう。
「これだけ沢山の未解決事件があり、その分の沢山の無念の気持ちや色んな気持ちがあって、それに付き合っていくのが我々六係の仕事」
と矢代が語っていたが、無念な思いを抱いていた被害者(であり犯人)が最後に逮捕されていって終わり……という、救われないパターン以外の結末も見たいところだ。
(イラストと文/北村ヂン)