連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第6週「叫びたい!」第35回5月11日(金)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:田中健二

35話はこんな話


鈴愛(永野芽郁)が秋風羽織(豊川悦司)に左耳が聴こえないことを伝えると、まるで問題視せず、むしろ、
その体験をいつか漫画にしたらいいと言う。鈴愛は大いに救われる。


東京2日目


「半分、青い。」のエンド5秒は、視聴者投稿で、写真の上に絵を描いたアイデア写真。35話の「電話船は進む!」の発想はすばらしい。ここでは本編と少し関係ある写真が選ばれることがよくあり、この日も「電話」の小道具が活用された。

いよいよ、秋風の仕事場オフィスティンカーベルで「メシアシ」として働きはじめた鈴愛。
まずは、掃除や料理、買い物、カップや筆の洗浄、ペン先の手入れなどの雑用から。秋風が飼っていた犬とうさぎの墓にお供えするのも鈴愛の仕事となった。
リラクゼーションルームに飾ってあった動物の名画は、死んだペットの肖像画だったことがわかる。

働き始めた鈴愛は、左耳が聴こえないことを秋風に告白する。
菱本(井川遥)はそれを知ったとき「なにか気をつけることある?」とニュートラルで、
秋風も「だから?」とさらっとしたもの。

“経験があるから描ける ないから描けない
自分の境遇は描ける そうじゃないものは描けないだと 描くものは狭まる。
ようは想像力だ  それさえあればなんだって描ける
想像の翼はどこまでも羽ばたく(エコー)“

という秋風の演説を聞いて、鈴愛は「片耳聴こえないことがハンディじゃなくて上乗せになる世界や」
「ここは描くものがすべてだ」「その人がどんな人であるか問題ない」「ここは自由や」と大喜びで晴(松雪泰子)に電話(秋風ハウスに備え付けのピンクの公衆電話)する。
じつは就職試験に落ちまくったことを気にしていたことも明かされた。
性的指向が異性愛でない人(ゲイ)も、身体にハンディキャップのある人も関係ない。
秋風の仕事場は“アルカディア”である。

一週間後 律、上京


律(佐藤健)は和子(原田知世)に付き添ってもらって上京、入学式も済んだ。
和子が探してくれた部屋は、いかにも裕福な家庭の、大学生が住みそうな部屋(私の大学時代、友人がこんな感じの部屋に住んでいた)。
和子から、晴と相談して鈴愛の近所に決めたと聞いた律は「えっ俺またあいつと一緒なの」と言うが、おそらくまんざらでもないのだろう。「嫌ってわけじゃ・・・」と言うときの律は正面顔よりも横顔のほうに本音が出ている気がする。というか、場面によってちょくちょく横顔のカットが挟み込まれており、そっちのほうがそれこそ見ているほうの想像力を喚起させることがあるのだ。「半顔、良い。」のが「半分、青い。」の楽しみのひとつ。

半信、半疑。


「ここは描くものがすべてだ」「その人がどんな人であるか問題ない」「ここは自由や」というオフィスティンカーベル。性的指向が異性愛でない人(ゲイ)も、身体にハンディキャップのある人も関係ない。「半分、青い。」というドラマそのものが「自由」であり、一般的な“人としてこうあるべき”という固定観念から飛躍しようとしている。登場人物の言動に、視聴者が疑問をもつと、そのままスルーのときもあれば、あとで回答がされるときもある。そういうことも楽しむドラマにしようと意識しているように感じ、みごとに、Twitterでは、#半分白目 というタグで疑問を語り合って楽しむ視聴者も現れている。

そこで、固定観念に凝り固まった常識人として、35話で、あえてかうっかりかわからないところを挙げておく。題して「半信、半疑。」。なお、事象を羅列し感想を述べているだけで、否定しているわけではけっしてない。

◯締め切り直前をどう捉える問題
鈴愛が働き始めた日、締め切り明けで、みんな仕事場で爆睡している。つまり、締め切りギリギリで殺気立っているときに、鈴愛は原稿にコーヒーをこぼしたということ。かなりダメージな気がするにもかかわらず気にしてないのは、それだけ秋風以下スタッフが百戦錬磨ということか。だが、そもそも、締め切りの大変なときに、わざわざ鈴愛を来させるものだろうか。締め切り過ぎてからでいいじゃん。

◯料理をあまりしたことない問題
メシアシとして料理をするも、おぼつかない鈴愛。これまで家の手伝いをまったくしてこなかったようだ。商売人の家の子は、両親が忙しいから、家のご飯を自分で作るものと思い込んでいたが、そういうわけでもないようだ。引退したおじいちゃんが家のことをやっていたと考えたとしても、晴(松雪泰子)は相当働き者だと感心する。


◯くらもちふさこの絵の書かれた壁に両手をついてストレッチ問題
神様のような漫画家・くらもち先生の絵(原画じゃないとはいえ)に手をつく? と恐れおののくが、
ドラマでは秋風の描いたものだから、自分の絵に自分が何をしようと自由だと思い直した。

◯想像がすべてと言いながら火事のシーンを描くために家を焼く問題
わざわざ古い家を買って焼いてみる秋風。リアリティーをとことん追求する表現者はかっこいい。「ようは想像力だ それさえあればなんだって描ける」と発言とは矛盾するが、人間は矛盾を孕んでいるもの。そのほうがチャーミングでもある。
そして、億万長者らしい秋風なのに、なぜ秋風ハウスはこんなにボロ屋なのか? という疑問はこのエピソードで解決した。

◯実家との電話問題
律は部屋に電話がついたが、鈴愛の下宿は、ピンクの公衆電話。東京岐阜間が遠く、10円がどんどん消費されて、話の途中で切れてしまう。晴しかしゃべれず、宇太郎(滝藤賢一)と仙吉(中村雅俊)はしゃべれなくてがっかり。
お金の乏しい娘から電話がかかってきたら、親のほうがかけ直すのでは、と思うが、まだピンクの電話の番号を鈴愛が伝えてなかったのであろう。早く伝えて、電話をかけ直してもらってね。

想像の翼といえば、


「半分、青い。」35話。半信、半疑。な点をみんなで語り合って楽しむドラマなのか
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「想像の翼」といえば、朝ドラ連続テレビ小説「花子とアン」(脚本:中園ミホ)。
主人公・花子(吉高由里子)は「想像の翼」を広げて創作活動に励んだ。
(木俣冬)
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