廃屋で椅子に拘束されている和都(貫地谷しほり)。頭部には電極があてられており、犯人はシャーロック(竹内結子)がパスワードの解読を間違えると電流を流すと言う。
猛烈な衝撃と痛みで大脳が吹っ飛び、廃人になる仕掛けだ。

続けて間違えるシャーロック。そのたびに電流を流され、和都は激痛にのけぞり、うめき続ける。「次は廃人にする」と呟く冷酷な犯人。シャーロックに残されたチャンスはあと一度、時間はたった30秒――。

竹内結子主演のHuluオリジナルドラマ『ミス・シャーロック/Miss Sherlock』。HuluとHBOアジアの共同製作で世界19カ国に同時配信されている本格ミステリードラマだ。現在、第1話のみTVerにて特別公開中。

先週配信された第3話「ヘッドハンターの素顔」。人間離れした洞察力と莫大な知識を持つシャーロックと平凡なパートナー・和都が「恐怖を消す薬」をめぐる犯罪に巻き込まれる。今週もネタバレなしです。
衝撃「ミス・シャーロック」3話。貫地谷しほりが電流拷問、田中圭がろくでなしのヒモ男
イラスト/まつもとりえこ

ジジ役とまったく同じ地味子役の木南晴夏


電流を使った苛烈な拷問を受け続ける男。彼は犯人の要求に応え、息も絶え絶えにパスワードの数字を言い続ける。
そして最後に言った言葉が「adamas」。犯人はその言葉を入力するが、表示はエラー。「adamas」とはギリシャ語で「何者にも屈しない」という意味だった。最大電流を流され、男は廃人となる。

シャーロックのもとに灰谷玲子(安藤聖)という女性から、大手製薬会社・モーソン製薬への転職をオファーしてきたヘッドハンター、椎名有里沙(紺野まひる)に研究論文などを提出したところ、途端に連絡がつかなくなったという依頼が持ち込まれる。モーソンとは、シャーロック・ホームズシリーズの「株式仲買店員」に登場する「モーソン商会」から採られたもの。

シャーロックの洞察力で有里沙の部屋を割り出すと、そこには有里沙の妹・由麻(木南晴夏)が住んでいた。由麻はニューヨークにいた有里沙と連絡を取り、有里沙は素直に灰谷玲子に詫びて論文を返却する。だが、これは事件の発端にしか過ぎなかった。超絶地味な由麻役の木南は『海月姫』のジジ役とほぼ同じ役作り。

廃人にされた男は、モーソン製薬の研究室主任・綿貫弘博士(菊池均也)だった。警視庁の礼紋警部(滝藤賢一)はシャーロックに協力を依頼する。
礼紋が部下の柴田(中村倫也)に言った「捜査なんかして真相を見誤ったらどうする」というフレーズがクール。

シャーロックのパスワード解読芸


綿貫博士は画期的な新薬の研究を行っていた。それが「恐怖を消す薬」だ。モーソン製薬を訪れたシャーロックは、有里沙が預かった論文と履歴書を使って「灰谷玲子」として潜り込み、研究室に出入りしていた事実を突き止める。有里沙は「恐怖を消す薬」のデータを研究室から盗み出していた。

綿貫博士が新薬を開発していたのは、戦争や虐待で心の傷を受けた人から恐怖を消し去るため。しかし、その効き目は強力で、感情のない冷酷な殺人マシーンを作り出すことが可能になる。これは政府も絡んだ極秘プロジェクトだった。シャーロックの兄で内閣情報調査室の双葉健人(小澤征悦)は、手を引くようにシャーロックに警告する。

データには何重にもパスワードがかかっており、最後のパスワードを間違えるとデータは消去される仕掛けになっていた。綿貫博士はこのパスワードを聞き出すために拷問にかけられていたのだ。

有里沙の行方を探るため、再び妹の由麻と接触するシャーロック。由麻は有里沙が父親から虐待されていたこと、そして父親が飲めないはずの酒を飲み、転んで目に傘が突き刺ささって死んだことを告白する。
そして、それが有里沙の犯行だということも。

姉妹の部屋を訪れたシャーロックは窓に殴り書きされた「adamas」の文字を見て、パスワードを解き始める。「adamas」のもう一つの意味はダイヤモンド。ダイヤモンドは「C12」。もともと手に入れていた21桁の数字を12で割ると、4桁の数字が5つ並ぶ。これを元素記号に置き換えると、リチウム(Li)、酸素(O)、フッ素(F)、バナジウム(V)、アルミニウム(Al)。並べると「Li of val」。「Lily of the valley」とは「スズラン」のこと。これが最初のパスワードだった。博士は自著の中で「恐怖を消す薬」のことをスズランにたとえていた。スズランの花言葉は「幸福の再来」だ。

ところが部屋の会話は盗聴されていた。
犯人は最初のパスワードを手に入れたことになる。

田中圭登場! しかし、その正体は……


一方、図書館でアルバイトを始めた和都は、小説家志望のバイト仲間・米山(田中圭)に心惹かれる。一緒にランチをすることになって有頂天になる和都だったが、そこに現れたシャーロックは米山を一瞥して「やめたほうがいい」と言い放つ。その理由はというと……。

「マリンボーダーのシャツにビーンブーツにロレックスのバブルバック。ヘミングウェイが好んだスタイルを真似て大作家になったつもりでいるナルシスト。キーボードが主流の現代にパーカーの万年筆、なのにペンだこはなし。実際のところは作家でも何でもなく気分を味わってるだけの中途半端なフリーター。熱心に読むのは女と会話をあわせるための女性誌、香りも女が好むストーリア。つまり、この人は貢いでくれる女を探すヒモ男。あなたが元医者だと知って近づいて……」

ここまで聞いて、シャーロックに激昂する和都。しかし、当の米山はそそくさと席を立ち、店員に「支払いは彼女がするんで」と耳打ちする小物っぷり。シャーロックに痛いところを指摘され、あわわと指をくわえてしまう田中圭が可愛らしい。
今後も出番はあるのだろうか?

「マリスステラ」の謎


犯人は一人でいた和都をスタンガンで気絶させて誘拐し、シャーロックにパスワードを解くよう要求する。要求に従わない場合、あるいはパスワードを間違えた場合は電流で和都を拷問するというのだ。

ここからパスワードを解くシャーロックの思考回路……というか、パスワードを解き続ける竹内結子の長セリフが圧巻。『リーガル・ハイ』の堺雅人とタメを張ると思う。考えるほうもよく考えたと思うよ。脚本は小谷暢亮、及川真実、森淳一の3人体制。脚本協力は政池洋佑。

事件解決後、「マリスステラ」というキーワードが浮かび上がる。「マリスステラ」はラテン語で「海の星」という意味。カトリックで「海の星」とは聖母マリアを指す。旅人に進む道を教える北極星が由来だ。そして第1話の犯人、水野亜紀子(水川あさみ)のスマホケースには北極星が含まれるこぐま座の模様がかたどられていた。


「恐怖を消す薬」を手に入れようとした犯人とマイクロ爆弾を作った水野亜紀子は何らかのかかわりがあるのか? 「マリスステラ」とは一体何を指すのか? シリーズを通した大きな謎が浮かび上がったところで、安達祐実が登場する第4話に続く。本日午前10時配信。
(大山くまお)

Huluにて配信中
編集部おすすめ