先週放送された第6話の視聴率はちょっと下がって8.2%。『週刊文春』の辛口ドラマ評論家・今井舞も絶賛、大泉洋も「面白い」と言っている(古沢良太ツイッターより)のだけれど、視聴率は伸び悩み中。ま、こういうことは慣れっこさ。
悪徳コンサルタント内村光良登場!
第6話「古代遺跡編」には“視聴率男”内村光良が登場! 月9ドラマ出演は『西遊記』以来12年ぶり。かつてWOWOWのドラマ『結婚詐欺師』では詐欺師と戦う刑事役を演じたが、ダー子たちのたくらみを見破ることができたのだろうか?
内村が演じたのは、地方再生や町おこしを得意とする売れっ子コンサルタント・斑井満。しかしその正体は、地方に出向いては耳あたりの良いプロジェクトを持ちかけてタダ同然で土地を買い上げ、産廃業者に転売して大金を得るという悪徳コンサルタントだ。口癖は「田舎の年寄りはチョロいもんよ!」。ひ、ひどい。
ボクちゃんが自分探しの自転車旅で立ち寄った十色村も、斑井のターゲットの一つ。村の特産品を販売する「ふるさとふれあいモール」を作ることになっていたが、いつのまにかプロジェクトは頓挫。その跡地に産廃処理場を建設する工事が進んでいた。ボクちゃんが立ち寄ったラーメン店の夫婦(野添義弘、長野里美)は「もうこの村もおしまいだ」と嘆く。
義憤にかられたボクちゃんは工事を止めようとして、ダー子とリチャードに協力を依頼。

レキシ、シュリーマン、『まぼろしの邪馬台国』
なぜ斑井は土器を執拗に踏み砕いたのか? 斑井は考古学に憎しみに近い感情を持っていた。斑井の父親、斑井万吉(山本浩司)は仕事もせずに遺跡発掘に生涯を捧げた在野の考古学者。意味不明な学説を主張して周囲から変人扱いされ、誰からも相手にされずに一生を終えた。万吉の著書『幻を求めて』(全18巻)は紛うことなきトンデモ本である。子どもの頃は喜んで父親のあとをついていった斑井も、やがて家庭を顧みない父親を憎むようになっていた。
ダー子たちは自分たちで土器を大量に捏造して、あらためて産廃施設の予定地に埋め込むことにする。巨大遺跡を発掘したとなれば、教科書に名前が載るような名誉が得られる。すでに大金を稼いだ斑井だが、名誉には弱いはずという読みだ。土器をつくっているときに流れるのはレキシの「狩りから稲作へ」。ダー子たちがアフロのかつらを被るのもアフロのレキシへのリスペクトだろう。
劇中にも名前が登場するハインリヒ・シュリーマンは、伝説の都市トロイアを発掘したとして有名な人物。武器の密輸などで成功を収め、巨万の富を得た後、大規模な発掘調査を行った。自伝では幼少の頃、ホメーロスの叙事詩「イーリアス」に感動して発掘を志したとされているが、実際は金が余ったから適当に掘ってみたら出てきちゃった、というぐらいだったらしい。後付けで遺跡発掘への情熱を語ったら拍手喝采されて教科書にも載ってしまったのだ。まさにコンフィデンスマンの世界である。
斑井万吉のモデルの一人は、『まぼろしの邪馬台国』を執筆した宮崎康平だろう。島原鉄道の常務を務めながら古代史に情熱を燃やし、失明してからは妻の助けを借りて『まぼろしの邪馬台国』を執筆。ベストセラーになり、日本中に邪馬台国論争を巻き起こした。吉永小百合、竹中直人主演で映画化もされている。実際の宮崎は虚栄心が強く、浪費癖、女好きの一面もあったという。宮崎は万吉だけでなく、斑井満のモデルでもあるのかもしれない。
出た! トンデモ常滑文書!
リチャードは考古学の権威、牛久幸次郎に変装して遺跡に太鼓判を押すが、考古学の知識を持つ斑井に一蹴されてしまう。しかし、現地には多くの考古学マニアが押し寄せ、喜色満面で発掘を続けている。
髪の毛はゴワゴワ、古代服のようなファッションで土偶型のポーチを首から下げている富子はどこからどう見てもイッちゃってしまっている人物。彼女が持っている「常滑文書」によれば、四大文明の発祥の地である「ダー国」はこのあたりにあるはずで、今でも周囲の山を買い取って発掘を続けているという。すべては彼女の亡くなった父親の影響だった。
常滑文書の元ネタは「竹内文書」だ。昭和初期に発見された古文書とされているが、実はまったくの偽書。青森にキリストの墓があり、モーゼは天皇に仕え、富山に日本のピラミッドがあるなどと記されていた。五十嵐(小手伸也)が万吉の本を「トンデモ本」と呼んだが、元ネタである『トンデモ本の世界』(と学会著)でも竹内文書について詳細なツッコミが入っている。
考古学は「とり憑かれるもの」
遺跡発掘フィーバーは十色村を包み、産廃建設は中止。ラーメン店主も「こんな遺跡が見つかるなんて鼻が高い」と大喜びだ。しかし、「騙してはいけない人を騙してしまった」と胸を痛めたボクちゃんが本物の牛久幸次郎に連絡すると、あっさり遺跡はすべてニセモノだと見抜かれてしまい、工事は再開することになる。
それでも斑井はどこか浮かない顔をしていた。
斑井は会社の権利を手放し、富子から山の権利を3億円で購入する。その山には何の遺跡もないと証明されたのに、である。斑井は一人で山に分け入り、夢中で発掘を始めるようになっていた。「考古学は学ぶものでも研究するものでもない。とり憑かれるものだ」と彼の父・万吉が書いているように、彼自身も「とり憑かれる」喜びを求めはじめたのだ。
今回、ダー子たちが使う騙しのテクニックは非常にオーソドックスなもの。斑井は騙されたというより、もともと自分が抑えていた欲望を開放したと見ることができる。その分、視聴者が感じる「騙しの快感」はまったくなかったのが残念。
また、内村の演技も非常に抑制されたものであり、斑井は本心が見えづらいキャラクターだった。せっかくだから「田舎の年寄りはチョロいもんよ!」と叫んだときのハイテンションでダー子たちとの丁々発止が見たかった。
今週は「家族編」。裏社会で巨万の富を築き上げた老い先短い男から金を巻き上げろ! コンフィデンスマンたちが複雑な家族関係に挑む! 今夜9時から。
(大山くまお)