
平田満がもう人格破綻し過ぎてて行動が読めない
娘が亡くなる瞬間をテレビ中継で目撃し、同じバス事故に遭った矢部香織(野崎萌香)とその父・矢部英介(小須田康人)を逆恨み、香織を誘拐した挙げ句に、桜井美咲(吉瀬美智子)を殉職させてしまった工藤(平田満)。
2018年を生きる三枝(坂口健太郎)は、無線機で1999年を生きる大山(北村一輝)とやりとりをして、工藤が事件を起こさないよう、工藤がえん罪で捕まってしまった過去を変えるために動く。
工藤「俺を理解出来るヤツなんて、この世の中に一人も居ない!」
しかし工藤は、精神が歪みに歪み切っているため、聞く耳を持たない。そりゃそうだ。焼死する瞬間の娘を見てしまい、それから20年もの間、無実の罪で服役しながら復讐を計画し、それを実行した男が、そう簡単に人に歩み寄るわけがない。工藤は、人の常識の中には生きていないのだ。もはや人外と思われた工藤だったが、三枝に頭を下げられると、意外にも素直な反応を見せる。
工藤「20年も前のことなんて…思い出せるかな…」
あっさり協力。刑事を一人殉職させる大事件を起こしたクセに、工藤は両手を膝に乗せキチンと目を合わせて、三枝の質問にあれこれ答えていく。香織を冷凍車に閉じ込めて凍死寸前まで凍えさせ、また、別の冷凍車を爆発させて桜井を殺した工藤が、「あっそうだ!確か…」とか言い出して、まるでただの目撃者のように過去を語る。もう人格が破綻し過ぎていてわけがわからない。
その甲斐あって得た情報を、三枝は1999年の大山に無線機を使って提供。大山は、見事に本物の連続窃盗犯・白石智弘(白石隼也)を捕まえることに成功した。
無線機は、全然ドラゴンボールじゃなかった
これで終わりなら、3話分も続いたこの事件もめでたしめでたしで終わるのだが、そんなにあっさり終わらないのが、不幸の連鎖ドラマ「シグナル」だ。簡単には視聴者に“救い”を与えない。
せっかく捕まえた白石は、白石の父と、警視庁刑事部長の中本慎之助(渡部篤郎)と、衆議院議員の野沢(西岡徳馬)の黒い繋がりから、不起訴処分になる。悪が捌かれないという結末だ。さらに、過去が変わり事件を起こさない予定だった工藤は、えん罪で捕まらずとも、復讐鬼であることは変わらず、矢部英介を刺し殺してしまい、結局は捕まってしまう。なお、その変化を知った三枝が、2018年に刑務所を訪ねると、工藤は10年前に服役中に亡くなっていた。
もう、工藤が全く思い通りに動かない。あれだけ必死に三枝と大山が動き回ったのに、工藤が変わらないから水の泡だ。桜井を復活させ、無線機は「ドラゴンボール」のシェンロンのようなチート的な存在になるのかと思って見ていたが、「悪は生き延び、不幸な者は不幸なまま」という全く救いの無い結末を迎えてしまった。
今夜放送の8話で、三枝の兄・亮太(神尾楓珠)が主犯として逮捕された集団暴行事件に突入。いよいよクライマックスだ。最後に完ッ壁な救いを見せ、スッキリさせて欲しい。
(沢野奈津夫)
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