目の前で江戸川音(杉咲花)が馳天馬(中川大志)に告白するのを見てしまい、心がヘッコリと折れてしまった神楽木ハルト(平野紫耀)。
その折れた心が、さらにペッチャンコになってしまう、ハルト絶望回。
メグリンのキャラが立ちすぎている
少女漫画誌「マーガレット」で連載されていた『花より男子』の続編が、少年漫画中心のWeb漫画サイト「少年ジャンプ+」で連載するという、やや特殊な形で展開されいてる『花のち晴れ』。
従来の女性読者とともに、新規の男性読者にも対応するためなのか、原作漫画ではエピソードによって音目線、ハルト目線が描き分けられており、W主人公といってもいい構成となっている。
ドラマ版は一応、音が主人公と設定されているようではあるが、ハルトの心情がナレーションで語られるシーンも多く、ハルト目線でシーンが展開していくことも。
そういう意味では、今回はほぼハルト主人公回だった。
ハルト目線で見ていくと現在の恋愛ステータスは下記のようになっている。
・ハルトは音を好きだと明確に気付いた。
・音の方も、どうも本心ではハルトのことが好きっぽい。
・しかし音は、親が決めた婚約者・馳天馬と正式に付き合い出しちゃった。
うーん、完全なる手詰まり状態。
こうなると後は、ハルトが玉砕覚悟で音に告白するくらいしか打つ手はないのだが、プライドの高いハルトはやりそうにない。
そんな膠着状態を引っかき回してくれたのが、人気モデルのメグリンこと西留めぐみ(飯豊まりえ)だ。
ハルトのことを「一気に好きになっちゃったみたい」というメグリンは、いきなり英徳学園に転入してきて、音の友達ポジションに。
「私、ハルトくんと付き合っちゃっていいんだよね? 音は彼氏、いるんだもんね?」
主人公が思いを寄せている男子のことを狙って、主人公に「応援してよね」とか言ってくる、ラブコメでは定番のキャラだ。
しかしメグリン、「恋のお邪魔キャラ」にしてはキャラが立ちすぎている。
ちょっとどうかしていると思うほどハルトに対して積極的で、家に強引に上がり込んで薄グリーン色のカレーを作ったり、ベッドに寝転んだり。
いつもニコニコ前向きで男子を応援。だけどおっちょこちょいで料理が超絶下手……というのは、普通だったら主人公に付与される属性なのに!
そんなメグリンの提案した遊園地デートが、ハルトと音の関係も動かすことになる。
ハルト&メグリンが行った遊園地で、音と馳天馬もデートしており、偶然遭遇。メグリンはWデートを提案するのだ。
音の気持ちはともかく、少なくともハルトが音のことを好きだというのは分かっているはずなのに……。空気、読まないねぇ!

遊園地でも完璧なのかよ、天馬
ハルトからすると、自分の好きな女が婚約者&彼氏とデートしているのに付き合わなければならないという地獄のシチュエーション。
そこで、「馳よりいいところを見せれば、音もオレになびくんじゃ……」という、いつもの童貞妄想を広げ、何かと馳天馬に対抗しようとする。
ティーカップをグルングルン回して天馬をフラフラにさせてやろうとした結果、自分の方がフラフラになってしまったり、おばけ屋敷に入ったら、結局ハルトばっかり怖がっていたり……。
遊園地で遊ぶことに関しても、とにかく完璧な馳天馬の前に、ハルトはますまずコンプレックスをこじらせるのだった。
ただ、いくら完璧といっても、何に乗っても怖がらず、おばけ屋敷でも「全部作り物だろ、そもそも霊は信じない」とか言っちゃう男と遊園地に行っても面白くないだろうとは思うが。
メグリンがハルトのことを「こんなに格好良くて面白い」と言っていたように、どう考えてもハルトと一緒の方が遊園地をエンジョイできそうだ。
とにかく「勝負に負けた」という気持ちになっていたハルト。遊園地帰りに、階段から転がり落ちそうになっているベビーカーを見つけ、必死に追いかける。
このシーン、原作では、観覧車の窓から落ちそうになっている子どもを助けに行くという、なかなかダイナミックなアクションシーンなのだが、さすがに実写で再現は難しかったか(観覧車の窓って普通、開かないし!)。
観覧車の窓から出て助けに行く際、「ひとつくらい馳に勝ちてえ!」と言っているように、音にいい格好を見せるために命をかけるというシーンだ。
一方、階段から落ちるベビーカーを追いかけるというのは、観覧車と比べると全然命がけではないのだが、ドラマではスローモーション&効果音でやたら感動的に演出していた。
「少しは馳より格好よく見えたかな?」
命がけ(でもないが)でいい格好を見せて、「見てた? 見てた?(チラッチラッ)」状態のハルトだったが、音が心配をして駆け寄るのよりも先にメグリンが抱きついちゃうという、ガッカリな結果に。
何をやってもダメダメだ。
音よりメグリンの方が魅力的に見えてきた……
他のことには鋭いのに、恋愛に関してだけ、巨大恐竜の脳みそ級に鈍い音も、今回の件でさっすがにハルトが自分のことを好きだと気づいたようで、ハルトの家に上がり込んで(ホントにこの家のセキュリティー、ガバガバだな)気持ちを確かめることにする。
「アナタは、私の事が好きなんですか?」
「……好きだッ!」
「本当に、江戸川の事が大好きだ!」
これまで素直になれなかったハルトが、ド直球で思いをぶつけるザ・胸キュンシーン。普通のラブコメだったら、ここがクライマックスとなり、あとはハッピーエンドが待っているところだろうが……。
「神楽木、今まで苦しめてごめんなさい。
「こんなんで終わりかよ」
「神楽木と私は何もはじまってないよ」
……『キッズ・リターン』かよ。確かに何にもはじまってないんだけど、必死に思いを告白した相手に対して、あまりにも冷たい言葉!
ちょいちょい「やっぱり天馬よりハルトの方が……」と思わせる描写があったのに、ここまでハルトに言わせてもなお、素直に気持ちを出してこない音。
学校への寄付金5000万円を払ってもらっているとか、家庭のことを考えると……など色々事情があるんだろうけど、どうしてここまで頑ななのか。
本音を押し殺してハルトを振り切り、馳天馬とキスしちゃう音よりも、ド直球でハルトに対する気持ちをぶつけまくるメグリンの方が魅力的に見えてきてしまったよ。
特に、ハルトに食べたい物を聞いた結果、「アイツ(音)が作った野菜炒めが食いてえ」という身も蓋もないことを言われても「そっか……じゃあ元気モリモリ作戦は失敗ってことで」と笑顔で対応する健気さには、完全に心をつかまれてしまった。
いっそのこと、婚約者のいる女にほれている男のことを好きになってしまった主人公が、なりふり構わず男にアタックしていたら、やがて失恋で傷付いた男の心も……というストーリーでもいいんじゃないだろうか。
……まあ、ボク的に杉咲花ちゃんより飯豊まりえちゃんの方がタイプというだけだけど。
どう考えてもメグリン的ハッピーエンドは待っていなそうなので、メグリン・スピンオフ(ついでに愛莉も)を作ってあげて!
(イラストと文/北村ヂン)
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