第13週「仕事が欲しい!」第73回 6月25日(月)放送より。
脚本:北川悦吏子 演出:田中健二 橋爪紳一朗
72話はこんな話
5年ぶりの再会。次の電車が出るまでの20分間、鈴愛(永野芽郁)と律(佐藤健)は語らう。
そして、律は唐突に・・・。
結婚しないか?
夏虫という駅で再会する鈴愛と律(ロケ)。
待合室のベンチに座って語らう(なんとセットだった)。
「ブライトイエロー。」
「レダハー。」
「うん・・・。」
鈴愛が着たかった服の話をとつとつと語ると、律は彼女の言葉を反復するのと相づちばかり。
眠いのかと思ったら「鈴愛の声聞いとった。なつかしい声。」としみじみ。
それからお互いの近況を報告。
ロボットの研究していた律。漫画家として大成した鈴愛。
突然、いまの服装を恥じる鈴愛。「消えたい」
「やめれ」 その突拍子のなさをなつかしみ、涙ぐむ律。
そこで一旦、駅前で待っている(寝てた)菜生(奈緒)とやって来たブッチャーの場面をはさむ。(ロケ)
次の電車には20分ある。
時間をつぶしながら律の左側にいつも鈴愛がいたと思い返す。
律が缶ジュースをおごる。(セット)
ふたたび、菜生とブッチャー。(ロケ)
缶ジュースをゴミ箱に投げて遊ぶ。(セット)
笛もっていたんだね と笛の話。
5年前、七夕で、鈴愛が書いた短冊「律がロボットを発明しますように!!」をもって帰ったと告白する。
お互い感謝。
「律の夢は私の夢やったもん」
「夢のしおり ここで 夢がかないました・・・の印」
みたび、菜生とブッチャー(ロケ)。 律が清(古畑星夏)と別れたことが判明。
鈴愛と律はホームに出て陸橋でグリコ・チヨコレイト・パイナップルじゃんけんをやって時間を潰す。(ロケ)
大阪の一流企業に就職が決まったという律。
風が吹いて短冊が飛ばされて、鈴愛がとろうとして走って階段から落ちそうになって律に支えられて、
「結婚しないか?」で、つづく!!
「プロポーズのオフサイドだ」
「あさイチ」では華丸が連日連夜のサッカーの熱狂を生かして「プロポーズのオフサイドだ」とうまいこと言った。
北川悦吏子は先週「神回」予告をしていて、言われてみれば神回と言えば神回だった。
ロケとセットを行ったり来たり。鈴愛と律の話も行ったり来たり。
例えるなら、笑福亭鶴瓶の「スジナシ」を見ているみたいだと言えばいいだろうか。
つまり、即興劇のようにゴールを決めず、でもなんとか時間内で話をまとめるために、ふたりの俳優が探り合いながら決着点を見つけていく、迷いながらの道筋がハラハラして面白い。
理屈で考えると、服の話をしたらそのままいまの格好を恥じる流れになりそうと思う。
また、大学院でロボットを作ったと話せば、その流れで就職が決まったとも言いそう。
そもそもまず次の列車の時間を見そうとも思う。
ところが北川悦吏子はそうは書かない。バラバラにする。
それがリアルといえばリアルな気がするのだ。
そんなに辻褄が合うように人は話せないし、いろんなことを唐突に思い出したり思い浮かんだりする。
寄せては返す波のように話題が生きつ戻りしバラバラに撹拌された意識のなかに、律が七夕のときに鈴愛の思い(短冊)を見つけて別れを決意した深い悔恨と未練と孤独といつか・・・の期待や夢も抱えてロボットを研究していた5年間もきっとある。
魂の片割れみたいに運命みたいに思っていた相手をそんなに簡単に忘れられない、久しぶりに会うとなったら
整然とできない感情があふれて「結婚しないか」と突拍子なく言ってしまうところまでを、即興ではなく作家が描いているのだからちょっと稀有な才能としか言いようがない。
北川悦吏子はTwitterで“リツは、もしここで逢えたなら、プロポーズしようと思って岐阜に帰って来ています。就職も決まったし。”と明かしていた。
律はああ見えてばくばくしていたんだろう。
計算が働いているのは菜生とブッチャー。清との別れをふたりの会話で視聴者にインフォメーションすること。
菜生は昔から、鈴愛と律は結ばれるものと思い込んでいるからにやにやしている。
ブッチャーがまだ彼女が出来たことがないとやるせない雰囲気を出すことで、清と3年くらいつきあって、
その後、ひとりなんじゃないかという律のやるせなさもなんとなく想像できる。
ブッチャーが「(ともしびに)ほしたら つきあうか」と言って菜生にスルーされて、車のフロントガラスが曇っていると言うところとかもなんかやるせない。
律「レイトで戻る」
鈴愛「嘘」
律「ほんと」
がんばってロボット作っている律だけど、眼の前の鈴愛は「チョコレイト、パイナップル」と無邪気にどんどん前進していく。
なんかこういうどうしようもない感情って誰しも経験あるはず。もしないと言うならそれはきっと恥ずかしいから理路整然と書き換えてしまっただけだ。北川悦吏子はその恥ずかしいほどに盛り上がっちゃう人間のありさまをそのまんまはいくらなんでもなのでブランドの紙袋に入れて差し出すような感じで描く。
繰り返す。
北川悦吏子は“リツは、もしここで逢えたなら、プロポーズしようと思って岐阜に帰って来ています。就職も決まったし。”とTweetしている。
ここしかない! と律は思ってしまったんだろう。
舞台が駅の待合室のセットだったことは少し残念。七夕といい、なぜいい場面がいつも奥行きのないセットなのか。
美術スタッフの方々はいつもがんばっていらっしゃると思う。
惜しまれるといえば、清。いいとこは初登場のときのみでヒールのまま退場してしまった。『半分、青い。』は主役と脇役の差がロケとセットのごとく歴然と差がある。
「結婚しようか」で一気に時間がふたりの赤ちゃん時に巻き戻り、ロボット作りのいろいろや清とのうだうだした関係や、律の表に出さない心の声を一気に吐き出したような(グルグル言葉が渦巻いているようなやつ)ものを描いた「半分、青い。B面 律バージョン」を74話からこれから74回分やってくれてもいいんだが。
(木俣冬)

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この映画では8年待ったのだから、「半分、青い。」の5年なんて短い。
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