福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

福井県のJR小浜駅すぐそばにある「AKAO」というお店に「カレー焼」なるB級グルメがあると知り、食べに行ってみた。ふわふわのホットケーキのような生地でカレーを包んだホットスナックで、今川焼のような円形のまんじゅう型ではない、独特のスティック型が特長。
他の地方ではあまり見かけないものである。あんこやクリームなど他の味もあるようだが、名称は一応「カレー焼」なので、たとえばあんこ味が食べたい場合、「カレー焼のアンください!」という謎な注文方法になるのだろうか……。

小浜で50年以上愛されている味


福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

駅から歩いてすぐの商店街に「AKAO」発見! 店頭に「小浜名物カレー焼」という看板が立っており、おお~名物なんだ!と期待が高まる。海辺の町らしい、明るいイエローとブルーに塗られたリゾート風の外観と、看板に描かれたゆる~いキャラクターもかわいい。80年代のクレープ屋さんを思わせるファンシームードもあり、ファストフードといえばチェーン店ばかりになった現代ではなかなかない雰囲気である。
福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

テイクアウトコーナーのメニュー。カレー焼のほか、お好み焼きや焼きそばもあるようだ。部活帰りなどに、腹べこで寄りたい感じのラインアップがたまりません!! ん? よく見ると下のほうになぜか「かしわ餅」や「栗赤飯」がある……店主で2代目の赤尾正明さんにこれはいったい……?とうかがってみたところ、実は「AKAO」はもともと和菓子屋さんだったのだそうだ(当時は一部、洋菓子もつくっていて、昭和の頃はそういった業態のお店が多くあったという)。創業はなんと昭和13年というから驚きだ。
福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

「カレー焼」はカレー、アン、クリーム、チーズ、チョコの5種類。1本130円というお財布にやさしい価格もうれしい。ちなみに売り始めた昭和40年には、1本50円だったという。53年もの間、小浜で親しまれていることになるんですね。

福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

じゃーん! 「カレー焼」が焼き上がりました!! 手に持つとけっこうずっしりしていて、ボリューム感あり。さっそく食べてみたところ、少し甘みのあるふんわりした生地が、やさしい味わいのカレーとよく合って絶妙。今時のスパイシーなカレーではなく、昔、お母さんがつくってくれたようなカレー味に癒やされる……。
福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

看板や店内のあちこちにいる謎のキャラクターはもちろん、細長いカレー焼をイメージしたもの。店を改装した際に、業者さんが描いてくれたもので、特にご主人がモデルというわけではないそう。


カレー焼考案のきっかけは?


福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

全種類の断面をカットしていただいた。左からアン、クリーム、チョコ、カレー、チーズの5種類。

看板商品のカレー焼は昭和40年に先代の赤尾玄蔵さんが考案したもので、当初はカレー、アン、クリームの3種類だったという。チーズとチョコはその後、店を受け継いだ正明さん、和美さん夫妻が20年ほど前にラインアップに追加。最も人気があるのはやはりカレーで、次が意外にもクリームなのだとか。
「一般的なあんこやクリームのおまんじゅうとは違う何か変わったものを……ということで、当時から家庭で人気があったカレーを入れてみたと父から聞いています。外側の生地も、中身のカレーあんも、つくり方は53年間、ほとんど変えてないですね。
子どもたちに人気があるのはやはりカレーで、年配の方にはあんこかな。学生さんにはチーズやチョコが人気です」と正明さん。

私もカレーがいちばん好きだと思ったが、チーズも捨てがたい。2~3本食べれば、おやつには充分なボリュームだ。
福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

赤尾さんに、使い込んだ焼き機で作業しているところも見せていただいた。型に生地を流し込んだ後、これはカレーあんを1個ずつ詰めているところ。じっくり火を通していくので、完成するまでに10分以上はかかるという。この後、反対側の生地を型に流していき、フタをする要領でくるっとひっくり返して仕上げていく。
福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

手前が自家製のカレーあん。かなり水分を飛ばして、煮詰めてある。朝の5時から仕込んでいるとのことで、130円という値段はなんだか申し訳ない気がするほどの、手間暇がかかっているのだ。
「具はたまねぎ、にんじん、じゃがいものほか、お肉は牛肉と豚肉両方、そして実は、キャベツのみじん切りも入ってるんですよ」と和美さん。
“ファーストフード”と銘打ってはいるものの、実は野菜たっぷりでヘルシーなのもうれしい。
福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

お店にはイートインコーナーが併設されているので、店内でできたてを食べることもできる。
ちなみに、カレー焼が最も売れるのはお正月の2、3、4日と、8月のお盆休みなのだそうだ。昔からこの味に馴染んでいた小浜っ子が帰省した際に、家族とともに食べようと大量に買うことが多く、毎年大忙しなのだとか! それにしても、「カレー焼」というのは他の地方にはないのでしょうか?と最後に聞いてみたところ、

「海の京都といわれる宮津や、大阪の鶴橋などにも、カレー焼を扱う店があったと聞いたことがあります。ただ、宮津のほうにあったお店は、店主のおばあさんが高齢でやめられたと聞きましたね」(和美さん)
というわけで、いまとなっては稀少な昭和の味となりつつあるようだ。最近はうわさを聞きつけ、遠方から買いにくる人も増えているという。
福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

福井県・小浜で50年以上愛される、あんこやクリーム味でも「カレー焼」ってなんだ?

外に出てみるとなるほど看板のほか、現店舗の左手に和洋菓子店だった頃の名残がまだ残っていた……。そんなわけで実家に帰ったかのようなやすらぎを感じさせてくれた「AKAO」。カレー焼の味わい、不思議なキャラクター、店主夫妻の人柄などすべてがなんだか懐かしく、温かなお店だった……。小浜には「人魚の浜」という海水浴場や1000年以上の歴史を誇る寺社仏閣なども点在し、夏にのんびり訪れるには最適な場所。その際にはぜひ、カレー焼の味をぜひ思い出に刻んでほしい。
(野崎 泉)
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