視聴率ってそもそも何?テレビ番組存続のカギ、実は調査方法に変化も
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「ドラマ年間視聴率1位を獲得!」「夏のドラマでは最低の視聴率」。最近こういった視聴率のニュースを見かけることは多くなった。視聴率が高ければ番組が長く続いたり映画になったりすることもあるが、低ければ打ち切られることもある。制作側にとっては無視できない数字だ。
けれど一般の視聴者にとっては、視聴率の意味はなんとなくわかっても、詳しくは内容を知らない人も多いのではないだろうか。
実は視聴率にも種類があり、時代に合わせて調べ方も変わってきている。どんな仕組みになっているのだろうか。


視聴率とは?


視聴率はテレビ番組の人気度や話題性をはかる際によく使われている。まずは視聴率の「基本のき」から見てみよう。

そもそも視聴率とは


視聴率とは文字どおり、テレビ番組やCMを視聴した人の割合を示す指標のこと。
視聴率には大まかに分けて世帯視聴率と個人視聴率の二種類がある。

世帯視聴率は、世帯としてどの程度の人がテレビを見ていたかを示す割合のこと。一般的に「視聴率」と言われるのはこの世帯視聴率のことだ。

一方で個人視聴率は、世帯のうちの誰がどの程度テレビを見ていたかを示す割合のことだ。性別や年齢別などに分けて調べることができるため、より詳細なデータが得られるようになっている。

視聴率は英語では? 高い・低いの表現は?


視聴率は一般的に英語では「audience rating」と表記する。「rating」だけで伝わることも多い。「viewer rating」なども使われる。

視聴率の高い・低いはhighまたはlowで表現される。
例えば「新番組の視聴率はここ数年では最高だった」は、以下のようになる。
The new show had the highest ratings in years.

視聴率調査の目的


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視聴率を調べる目的は二つあるとされている。

まず一つ目は人々の関心や、社会の動きを知るため。どんな番組が視聴されているかを知ることによって、いわゆる「トレンド」が見えてくる。

そしてもう一つは、広告のため。テレビ局には様々な収益源があるが、中でも広告は非常に大事な柱だ。視聴率はCMの広告費を決める際に大きな影響力を発揮する。また広告主にとっては、CMの効果を推測する際にも役に立つ指標だ。


視聴率の調査方法とは?


自分がどんな番組を見ているのか、調べられていると思うと不安になる人もいるかもしれないが、調査はごく一部の人に限られている。


調査はビデオリサーチが実施


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画像はビデオリサーチホームページのスクリーンショット

視聴率の調査を行っているのは、日本では基本的にビデオリサーチのみだ。NHKが独自で調査をすることはあるが、一般的に「視聴率」として扱われるのはビデオリサーチの数字のことを示す。
以前はニールセンというアメリカの視聴率調査会社も視聴率を集めていたが、2000年に日本の調査からは撤退し、メディアリサーチの独占状態となっている。

視聴率の調べ方、謝礼


視聴率調査には種類があるが、ピープルメータ(PM)システムによる調査がメインと言える。
ビデオリサーチによると、この方法ではまず調査対象となった家庭に測定器を設置し、視聴データを集める。調査は朝5時〜翌朝5時の区切りで、24時間行われる。
視聴データはデータセンターに送信されて集計され、翌日には公表されるという流れだ。
PMシステムでは世帯視聴率と個人視聴率の両方を調べている。そのため対象世帯の人は、テレビをみる際にちょっとした手間が必要になる。
まずテレビを見始める場合には、家族の中の誰が見たのかを把握するために自分用のボタンを押す。そして、見終わったときにもまたボタンを押す。自分のボタンがわかりやすいようにリモコンには工夫もされているという。
これにより性別や年齢ごとに、どんな人がその番組を見ていたのか、より細かいデータが集められるようになる。

別の方法として、調査世帯に測定器などを設置してデータを集めるオンラインメータシステムも使われている。ただしこちらは世帯視聴率のみが収集できる。

調査に協力すると謝礼が支払われる。残念ながら詳しい金額は公表されていない。ただ2〜3年ごとに調査世帯は入れ替わりになるため、対象となったとしても一生調査を受け続けることはないようだ。
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調査の対象世帯数


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調査は日本全国を27地区に分けて、エリアごとに行われている。
調査対象となっているのは6900世帯。一番多いのは関東地区の900世帯で、次いで関西地区、名古屋地区がそれぞれ600世帯で、いずれもPMシステムによりデータが集められている。
そのほか北海道や四国、九州などが地区分けされ、それぞれ200世帯ずつオンラインメータシステムで調査が行われている。

平成27年の国勢調査では、日本の世帯数は約5340万世帯だ。そこから考えてみると、調査対象が6900世帯というのはほんの一部に思える。確かに数としては少ないが、統計学の理論に基づいて行われており、調査世帯もランダムで選ばれているため、大きな誤差はないという。


視聴率調査は時代に合わせて変化


インターネットやスマートフォンの普及など、時代の変化とともにテレビを見る方法も変わってきている。実はあまり知られていないが、調査方法も変わってきている。

テレビの録画派が増加


NHK放送文化研究所が実施した調査「日本人とテレビ2015」では、録画したテレビ番組を「週1日以上視聴する人」は49%にものぼる。2010年の前回調査よりも増加した。
またメディアリサーチデータを提供するスイッチ・メディア・ラボの調査によると、録画番組を見る時間は1日あたり平日20分、土日44分。放送日から7日以内に録画を見る人は75%となっている。

仕事などで、見たい番組リアルタイムで見られない人も多い。また自分の都合のいい時間に見たいという人もいる。録画をする人が増え、リアルタイムの視聴率だけを追うのは時代に合わなくなってきている。

2016年に調査方法を大幅に変更


そこでビデオリサーチではリアルタイムだけでなく、録画で視聴した人の割合も調べ始めている。それが「タイムシフト視聴率」だ。

放送から7日以内の視聴の割合を示すもので、リアルタイムとタイムシフトのいずれかで視聴した場合は「総合視聴率」として公表されている。
2013年から関東地区の300世帯を対象に調査がスタートしたが、2016年に900世帯に拡大された。

2018年4月からは、キー局のテレビスポットCMの取引指標が世帯視聴率から、個人視聴率にタイムシフト視聴率を加味したものに変わっている。録画の数字はより重要になってきているようだ。


視聴率はドラマやバラエティ存続のカギ


視聴率は番組の人気度をはかる、制作側にとってはある意味恐ろしい数字だ。だが最近はSNSの影響などで扱いに変化もあらわれてきている。

視聴率が低ければ番組打ち切りも


視聴率はテレビ番組存続のカギを握る。特に近年視聴率はニュースなることが多く、制作側も一喜一憂している状態だ。視聴率ヒト桁となると、俳優の汚点と言われたりスポンサーからクレームが入ったり、影響は少なくない。

『おっさんずラブ』などSNS人気作品も


視聴率ってそもそも何?テレビ番組存続のカギ、実は調査方法に変化も
画像出典:Amazon.co.jp「おっさんずラブ DVD-BOX

最近ではSNSによって視聴率がアップダウンすることもある。
2016年に放送されたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』は、ストーリーやダンスがSNSで話題となり、視聴率を押し上げた。最終回の視聴率は関東地区で20.8%にも達した。
SNSで“バズる”ことは、いい意味でも悪い意味でも、視聴率に影響を及ぼす。


一方で、視聴率だけで人気度を図ることには疑問の声もでてきている。

2018年の春に放送されたドラマ『おっさんずラブ』は、土曜23時15分からという放送時間帯にも関わらず、おっさん同士のピュアな恋愛で人気となった。TwitterやInstagramの公式アカウントを中心にネット上で盛り上がり、Twitterの世界トレンドで「#おっさんずラブ」が1位になったときもあったほどだ。
ただし視聴率は最終話こそ5.7%だったが、それまでは4%程度で、決して高い数字ではなかった。

話題性や人気度、満足度は、視聴率だけではわからなくなってきている。



視聴率ランキングはどこで見られる?


視聴率ってそもそも何?テレビ番組存続のカギ、実は調査方法に変化も
画像はビデオリサーチホームページのスクリーンショット

ビデオリサーチが調べている視聴率の一部はネットで確認することができる。

ビデオリサーチのホームページには、毎週の視聴率ランキングやタイムシフト視聴率のデータ、過去のデータなどが閲覧できる。ドラマやアニメなど分野別になっていて見やすいデータだ。
(ビデオリサーチ:https://www.videor.co.jp/tvrating/)

視聴率歴代1位の番組は


調査が始まった1962年12月3日以降で歴代1位の視聴率となっているのは、1963年の『第14回NHK紅白歌合戦』でなんと81.4%を記録している。
紅白は今でこそ視聴率低迷が叫ばれているが、この数字からいかに国民的人気番組であったのかがよくわかる。

また、その他に高視聴率を叩き出しているのはスポーツ中継が多い。サッカーW杯やボクシングのタイトルマッチ、またオリンピックといったものだ。
ドラマの中ではNHKの朝ドラ『おしん』(1983年)も視聴率が好調だった。
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バラエティ、ドラマの歴代視聴率ランキング


ではドラマやバラエティではどうだろうか。

バラエティの歴代1位は『8時だヨ!全員集合』(1981年)の47.6%。
そのほかも欽ちゃんや加トちゃんといった、人気コメディアンの番組が中心だ。2000年以降では『行列のできる法律相談所』や『SMAP×SMAP』、『めちゃ×2イケてるッ!』も高視聴率だった。
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画像出典:Amazon.co.jp「8時だョ!全員集合 最終盤 通常版 [DVD]


ドラマでは『積み木くずし・親と子の200日戦争』(1983年)が45.3%。水戸黄門も人気だった。比較的最近の『半沢直樹』や『ビューティフルライフ』、『家政婦のミタ』などの話題作も高い視聴率を記録している。


まとめ


時代が変わりテレビの見方も大きく変わったが、視聴率が大事なデータであることには変わりない。一生に一度あるかないかだが、調査対象となったときのために、視聴率のシステムは覚えておくといいかもしれない。