少年アッシュがどんどん傷ついていく、ボロボロになっていく。それ、見たかった。

アニメ『BANANA FISH』(→公式サイト)。
「第四話 楽園のこちら側」が今日7月26日(木)25:05より、フジテレビ”ノイタミナ”ほかで放送。Amazon Prime Videoで毎話フジテレビ放送開始1時間後より配信予定。
「バナナフィッシュ」美しい少年は壊され続けて山猫になっていく3話
吉田秋生「BANANA FISH」3巻表紙。アニメ三話は刑務所編

性的虐待と不信感


「第三話 河を渡って木立の中へ」はアッシュが刑務所に入ってからの話。順番をシャッフルしつつ、2巻171ページまでをきっちりさらっている。

アッシュに対して起こる出来事は、絶望してもしきれないことの連続。
男だらけの刑務所で、きれいな顔つきのアッシュはいい獲物。

彼は複数人の男に連れられて、図書室で性的虐待を受けてしまう。

3話でアッシュに漂うのは、怒りよりも、人生の諦念だ。
1話2話では、徒手空拳でも無敵の働きをしたアッシュなのに、図書室のシーンでは全く反撃をしていない。これにはちゃんと理由がある(現時点では明かされていないが)。
アッシュ「多勢に無勢なんだもの 殺されちゃもとも子もねーじゃないか」
彼の言葉の裏にある傷は、根深い。

2話ではアッシュは、かつて自分が犯されて撮影されたときの児童ポルノを、彼を目の敵にする刑事にさらされた。

写真も動画も突きつけられた。強靭なように見えるアッシュも、これだけは心底嫌がっている。

子供の頃の性的虐待、男娼としての日々、刑務所での性的暴行。
彼にとって「性」は、愛情のためのものではなく、嫌悪すべき対象だ。
味方の刑事に対して≪「その汚い手で俺に触るな!」≫と睨みつける始末。
性のトラウマが、大人への拒絶を引き起こしてしまっている。


生きるために戦う少年たちが、大人たちにボロボロにされていく様子は、この作品前半の見所のひとつだ。
特にアッシュは、幸せな瞬間がない、と自分で認識しているくらい、気がピリピリし続けている。

少年は壊されていくことで、大人への激しい不信感がわきあがり、より一層少年であり続けようとする。
山猫のごとく周囲に牙をむく彼のそばに寄り添ってくれるのは、損得勘定で動かない日本人の英ニだけ。
(いや、本当はいっぱいいるんだけど、彼は拒絶してしまっている)
アッシュが傷つけられればられるほど、住む世界が違う少年同士の惹かれ合いは、強いものに変わっていく。今は傷つき続けるターン。


「割といい大人」なマックス


今回登場したマックスは、この作品としては珍しいコミックリリーフ寄りのキャラクター。
ニューヨーク市警に頼まれて、アッシュと同じ房に入った元陸軍軍人だ。
コラムやルポを書いていた彼。汚れた世界を見てきただけあってタフだが、なんせおっちょこちょいで、言動が雑。
英ニにもマックスにもないこの性格は、損得勘定を持たない大人側の代表だ。アッシュの周りに出てくる大人がほとんど面倒くさいやつばかりなので、「信頼していないけど敵でもない」さじ加減のマックスの存在は貴重。


アッシュが性的暴力にあったあとに、バナナでシモネタを言おうとするマックスのほんとどうしようもない感じ。
ここも残さず再現されていて、安心。地雷を土足で踏む男、これからも期待できそう。

(たまごまご)