
――【韻シスト】インタビュー前編より
あなたがどんな現状に置かれていようが “いつも同じ空を見てる”
――「Old school-lovin'」がジェームス・ブラウン的な70'sファンクとしたら、「ニコイチ」はプリンス的な80'sファンクだったりとか。
TAKU:「Old school-lovin'」は“ファンクにラップ”で、「ニコイチ」はバブル時代みたいな“ギラつきファンク”と呼んでましたね。
BASI:めっちゃ柔軟になったよな。
TAKU:リーダーのシュウ(Shyoudog)の発案で、若いヤツに1曲プロデュースしてもらいたいということで、「CRCK/LCKS(クラックラックス)の(小西)遼がいいと思う」と言われて、「いいですね」と。CRCK/LCKSの圧倒的な演奏力と、アイディアと知識は別格なので、ロバート・グラスパー以降の感じで、「俺らに合う感じのものを提示してくれないか?」とお願いして、こういうアイディアを出してくれた。幕の内弁当の中で、漬物だけ別注でお願いしましたという感じですね。

――曲順も絶妙です。「時代」は最初から、1曲目と決まっていた?
BASI:決まってました。
――今で言うシティポップに通じる、メロウでスムーズなヒップホップ。しかもBASIさんの最初のヴァースがすごくいい。20年前と今とを対比させて、喜びと憂いを同時に噛みしめているような。
BASI:この始まりだけは、ずっとありましたね。“枝”を作るもっと前からこの歌詞だけがあって、絶対アルバムの冒頭はこれで行きたいと。僕の中では、韻シストって、華やかで陽気で、そういうふうにみんな見てくれてるんやなというイメージがあって、それはうれしいんですけど、でも一方では、デビューした頃にCDレビューに酷評を書かれたり、ヒップホップのハコに出ようと思っても、「うちはバンド用のアンプはない」と言われたり。そういうところからの20年があって、今は街を歩けば、駅前にヒップホップのバンドがいてる状況があって、ここで何が言えるかな?と思って書いた言葉ですね。韻シストを華やかなイメージで見ている人が、CDを再生した瞬間、ピリッとして聴いてくれるんじゃないかなと。


――ヴァースの最後を締める「受け止めろ、時代は変わる」。最高のフレーズです。
BASI:文句ばかり言ってたり、自分の価値観を貫くだけだったら、気づかぬうちにガケから落ちてることも絶対あるやろうし。僕らはただただ、バンドの音楽を鳴らしていきたいというのは、98年から変わってないから。憂えてる部分もあれば、受け止める部分もないといけないし。でないと、長く音楽を聴いてもらうことはできないんじゃないかということも、予見しながらのフレーズですね。それが、制作を一回中断してTAKUが話し出してみんなが耳を傾けるとか、CRCK/LCKSの遼ちゃんにプロデュースしてもらおうとか、全部そういうところにつながってるんちゃうかなと思います。

――ラストを締める「景色」も、「時代」と響きあうような、少しの憂いを含んだ、じんわりと余韻が残る1曲。
BASI:シュウの歌うサビの、いろんなことがあるけど、結局みんなが同じ空の景色を見ているというのが、去り際に一番美しいフレーズかなと思うんですね。あなたがどんな現状に置かれていようが、どんなにハッピーだろうが、どんなにくすぶっていようが、“いつも同じ空を見てる”というのは、韻シストのメッセージとしてめっちゃいいなと思います。リアルやと思うんですよね。ハッピーでもないし、残酷でもない。ただただ、いつも同じ景色を見てるよというのが、一番リアルかなと。
――皆さんじっくりとご堪能ください。幕の内弁当のようなバラエティ豊かさで、1曲1曲の完成度が高くて、リリックには20年間の経験を振り返って今を噛みしめるようなものが多く入っている。いつまでも胸に沁みるアルバムです。

BASI:20年間、良くも悪くも、いろんな経験をさせてもらったことはすごい貴重やし、それを音に変えれること、言葉に変えれることで、経験を音楽に昇華できるので。それを聴いてくださった方がポジティブになれるというのは、すごくいい生産の仕方というか、音楽があることによって、マイナスやったものがプラスになる、それはすごいことやなと思います。
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