『犬夜叉』は高橋留美子先生があまり乗り気じゃなかったのに大ヒットした!?
画像出典:Amazon.co.jp「犬夜叉 ベストソング ヒストリー

週刊少年漫画誌において、作品を連続でヒットさせることは至難の業。長期連載という条件も加えると、そのハードルはさらにグンと上がる。

時代を超えて愛される名作を生み出しても次作でコケるなんてよくあること。人気を集めても、前作ほどのヒットには届かないのが通例だ。
そんな中、同じ雑誌を通じて4作連続で大ヒットを続けているのが高橋留美子先生。
40年に渡って、最前線を走り続ける漫画界のトップランナーである。


長期連載が4作続けて大ヒットする大偉業!



週刊少年サンデーでの連載デビューは、言わずと知れた『うる星やつら』。
約8年半の連載期間(連載当初は約1年半の不定期連載)でコミックス全34巻と、いきなり看板作家の地位を確立。
続く『らんま1/2』も同じく8年半ほど連載を続け、全38巻を刊行。国内のコミックス発行部数約5,300万部は、高橋留美子作品ではNo.1ベストセラーとなる超人気作だ。
この時点でも異例なのだが、第3作の『犬夜叉』では11年半にも渡って連載し、全56巻で現時点での最長連載記録を達成。
さらに、『境界のRINNE』は再び8年半ほどの連載で全40巻を記録。しかも、2017年の35巻発売時には、高橋留美子先生のコミックスが全世界累計で発行部数2億部突破と、大偉業を成し遂げている。

常に時代に合わせてアップデートを続ける創作意欲も凄いが、そのバイタリティ&タフネスぶりも圧倒的。(実際、何人もがオーラが凄いと語っている)
これらの作品はすべて、半年から1年ほどの充電で絶え間なく発表されており、しかも『うる星やつら』連載時には『めぞん一刻』も同時連載しているのだ。
もちろん、どの作品もアニメ化始め、メディア展開も大成功。
手塚治虫先生が“漫画の神様”なら、高橋先生は“漫画の女神”といっても過言ではないのである。


あまり乗り気ではなかった『犬夜叉』の連載!?


今回、連載最長記録を誇る『犬夜叉』にクローズアップしてみたい。
高橋先生は前作『らんま1/2』 の後期ごろから、お笑いを描き続けることがとにかく辛かったそう。そこで、逆にシリアスものとしてスタートしたのが『犬夜叉』だ。
『犬夜叉』は高橋留美子先生があまり乗り気じゃなかったのに大ヒットした!?
画像出典:Amazon.co.jp「犬夜叉 (1) (少年サンデーコミックス)

中学生の日暮かごめは、15歳の誕生日に自宅である神社の井戸から戦国時代へタイムスリップ。そこで出会った「半妖(妖怪と人間のハーフ)」の犬夜叉と、強力な妖力を持つ「四魂の玉」の欠片を探し集める旅に出る。

結果として大ヒットした作品だが、連載当初は高橋先生が思ったほどには受けなかったという。そもそも、『らんま1/2』で燃え尽きてしまい、積極的に始めた作品ではない。
編集部から「戦国時代が好きならそれを舞台にどうか?」と勧められ、それならばと先生が乗った形で生み出されたという。
1話の時点では、主人公「犬夜叉」とヒロインの前世だった女性「桔梗」が闘っている理由も考えていなかった上、最重要キャラ「奈落」も連載を始めてから思いついたそうだ。
結構、行き当たりばったりなのである。
しかも、今までなかった本格的なヒーローが主役の上、ギャグ要素少なめは異色。
当初は、「高橋作品なのに笑えない」と戸惑った読者も多かったのだ。


新たな作風でさらにファン層を拡大した『犬夜叉』


しかし作品が進むにつれて、シリアスなイケメンキャラ「殺生丸」の登場を始め、魅力的な男性キャラや、王道のヒーローものから外れる犬夜叉のメンタルの不安定さなど、これまでになかったテイストが受け入れられることに。
また、青年誌で不定期連中の『人魚シリーズ』で描く、人間の業やグロテスクな描写なども、少年誌向けに薄められてスパイスとして加わり、作品のカラーとなった。
これが功を奏し、新たなファンを集めていく。
実際、小学生がメインだった『らんま1/2』に対し、『犬夜叉』では中高生まで女性のファン層が拡大したという。


アニメも大ヒット!知ってる?犬夜叉ワールドのV6メンバー


2000年10月から4年に渡って放送されたアニメ版も、劇場版が4作も公開されるなど大人気に。また、20カ国以上の国と地域で放送され、世界中に熱狂的なファンを生み出している。
主題歌はエイベックスのタイアップだったが、印象深いのは初代主題歌となるV6の『CHANGE THE WORLD』。V6が初めて担当したアニメの主題歌であり、初回盤の特典は高橋先生によるメンバー6人のイラストが描かれたクリアファイルだった。
高橋先生はジャニーズ系がお気に入り。願ったり叶ったりのコラボだったのではないか。
ちなみに、『犬夜叉』の世界観に合わせて描かれたメンバーイラストだが、筆者が確実に認識できたのはイノッチのみでした。ゴメンなさい。
また、連載が追いついてしまったがゆえの打ち切りだったため、連載終了後にはファン待望の『完結編』も放送され、再び人気を集めている。



原作のラストはヒロイン声優のアドバイスから


原作ラストのヒロイン「かごめ」の選択は、高橋先生も悩んだという。
そんな中、アニメでかごめの声優を務めた雪野五月さん(現ゆきのさつき)に相談すると、「戦国時代に行きたい」との答えが。そこで、かごめの幸せをあらためて考え、さらに犬夜叉が今後どう生きるかを踏まえて、これがベストなエンディングだと判断したそうだ。
美しい大団円はぜひコミックスで確認を!
(バーグマン田形)


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