「迷宮のトライアングル」決着編。
宇海ゼロ(加藤シゲアキ)自身が「人間柱時計」の中に閉じ込められてしまったことにより、部屋の中を調べて回ることもできないし、解答を送信するためのタブレットにもさわれないというドラマオリジナルの展開。
たとえゼロが解答を導き出したとしても、仲間の協力なしには生き残ることができないということで、原作とは違った、新たなドキドキ展開が待っているのかも!?
……と期待していたのだが、出てくるヤツらの行動やキャラクターがことごとくブレブレになっており、わざわざ用意したオリジナル設定がイマイチ活かされていなかった。

金八ばりの熱血授業でヤクザも改心!?
今回、ゲームをクリアする上でのキーパーソンとなったのが、ゼロのチームの一員、ヤクザの末崎さくら(ケンドーコバヤシ)だ。
ゼロはもうひとりのチームメイト、ヤクザの弟・末崎セイギ(間宮祥太朗)が自分を殺すために、わざと解答を送信しない可能性があると考え、タブレットをセイギから奪ってヤクザに解答権を持たせようとする。
そのためには、ヤクザが自分で問題を解き、自分の手で解答を送信したいと思わせることが必要。
ということで、「三角形の内角の合計は必ず180度……」どうのこうのといった、三角形の定理を駆使した今回の問題をヤクザに説明をすることに。
塾講師をしていたゼロのスキルが活かされた形だ。
しかし、記号を見るだけで吐き気がするほど数学がダメだというヤクザが、おとなしくゼロの説明を聞いていたのは「1000億のため」という理由があるからいいとしても、なんでこのヤクザ、急に人情あふれるキャラクターになっているのか!?
「金と命、どっちが大事か、そんな簡単なことも分かんねーのか、お前は!」
……って、第1話では振り込め詐欺の金をかすめ取ったゼロの仲間たちに、「生きててもしょうがねえだろう、そこまでバカじゃ!」とか追い込みをかけていたのに!
加藤シゲアキによる、金八先生ゆずりの熱血授業のおかげで、いきなり改心しちゃったのだろうか?
原作では、ただの調子がいいチンピラだったこのキャラクターに、ケンドーコバヤシを配役したおかげで、脚本家の中で妙にいいキャラクターになってしまった感がある。
「裏切り者」たち、ボンクラすぎないかい?
3人組のチームにおける「裏切り者」……ゼロのチームだと末崎セイギ(間宮祥太朗)、標(佐藤龍我)のチームでは氷川ユウキ(小関裕太)。
この人たちの行動も中途半端だった。
彼らは、約25分で水が満たされてしまう「人間柱時計」の中に入っているゼロ・標に正解を出させた上で、答えを送信するのを遅らせ、「王」の有力候補であるふたりを殺すのが目的(できればリングもゲットしたい)。
そのためには、タブレットを専有しておき、ゼロ・標が水に沈んで死ぬまで答えを送信しない。もしくは、わざと間違った答えを送信しちゃえば死確定という簡単なお仕事なのに、なぜそれくらいのことが完遂できない!
セイギに関しては、ゼロが自分の兄であるヤクザに熱血授業をしている姿を見て、ちょっと心を動かされた……という事情があるものの、ユウキに関しては、標とほとんどコミュニケーションを取っていないのに。
それどころか「僕は未来の王を暗殺したい」とまで宣言しちゃっているのだ。
ここで確実に標を殺しておかなくては、後が怖い。
それなのに、隣の部屋に立てこもっていたかと思えば途中で出てきちゃうし、タブレットも簡単に奪われちゃう。
ゼロや標ほどではないけど、一応そこそこ頭が切れるというキャラクターだったのに、どうしてこんなにボンクラなのだ。
そもそもセイギとユウキのふたり、ゲームをクリアしてリングを手に入れるのではなく、弱そうなヤツから奪うことでリング4つを集めようとしていたのでは……!?
ゼロも何やってるんだよ!
水に沈む直前の、ゼロ自身の行動も意図が分からなかった。
自らが水に沈むギリギリまで解答が決められなかったのはいいとしても、答えをヤクザに告げた後、「落ちます」(この決めゼリフ、未だに意味不明)と言って、背伸びをやめ、自主的に水に沈んでいったのは本当にワケがわからない。
背伸びを続けていることに疲れちゃったの!?
生きるか死ぬかの瀬戸際なんだから、もうちょっとがんばろうよ……。
水に沈んでも生き残れる秘策があるのかな? とも思ったものの、結局、しこたま水を飲んで心臓が止まっちゃってたし。
何だったんだろう、あの「落ちます」。
そして、すべての部屋で同じペースで「人間柱時計」に水が注がれているとすれば、身長が低い人から順に水に沈んで死んでいくはず。
ゼロと標、さらに他の部屋で「人間柱時計」に入っていた真鍋チカラ(加藤諒)の身長を比べると、明らかにゼロが一番身長が高そう。
そのゼロが心臓止まるくらいなんだから、明らかに身長の低いチカラあたりは死んじゃっててもおかしくなさそうだけど……。
まあ、このドラマ、あまり細かいところを気にするよりも、その場その場のゲーム展開と、それにアタフタする加藤シゲアキくんたちを楽しく眺めるというのが正しい見方なんだろう。
小池栄子のキャラクターもブレてるぞ
今回判明した興味深い情報としては、「ゼロを殺したい(失格にしたい)」と、より強く思っているのは、主催者である在全無量(梅沢富美男)ではなく、その部下・後藤峰子(小池栄子)の方だということ。
在全も、決してゼロを快くは思っていなさそうだが、それでも試練を乗り越える力量があるならば、自分の後継者にすることもやぶさかでない様子。
一方、後藤は、どんなに実力があろうとも、ゼロが勝ち抜いて在全の後継者となることに危機感を抱いているようだ。
今回のゲームで、ゼロが必ず「人間柱時計」の中に入るように仕掛けられていたことを在全は知らなそうだったし、今後も後藤はコッソリと、インチキを仕掛けてきそうだ。
ただ、最初のゲーム「鉄球サークル」の時に、「答えを教えてはいけない」というルールをギリギリ破って仲間を助けたゼロを「失格にしない方がいい」と進言したのは後藤だったのだが……(途中で気が変わった?)。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・日テレオンデマンド
・Hulu
・TVer
『ゼロ 一獲千金ゲーム』(日本テレビ系列)
原作:福本伸行『賭博覇王伝 零』(KCデラックス 週刊少年マガジン刊)
脚本:小原信治
演出:丸谷俊平
主題歌:NEWS「生きろ」(ジャニーズ・エンタテイメント)
チーフプロデューサー:福士睦
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ