130億の含み損を抱えた、倒産寸前の会社「デリシャス・フード」の社長となった樫村徹夫(仲村トオル)が、再建に向けて奮闘する……が、この期に及んで夢見がちな理想論ばっかり言ってる樫村にちょっとイライラしてきた。
樫村さん、話が噛み合ってないよ
運営するチェーン店「モンゴルの空」や「北京秋天」を全店閉店するらしいという情報がマスコミに漏れたようで、株価が大きく値下がりをした「デリシャス・フード」。
大株主であるファンド会社社長・山本知也(大谷亮平)は大騒ぎ。フランチャイズ権の買い戻しを求めているオーナーたちも会社に押しかけてきた。
かなりヤバイ状態なのに、樫村の再建策は相変わらず「夢」一本槍なのだ。
「おたくのせいで倒産したらどうするんだ!」
「倒産はさせません。私は社長です。社員とその家族を守る責任があります。だから絶対に潰しません!」
いや、たぶん話が噛み合ってないよ。
オーナーたちは、フランチャイズ権を買い戻ししてくれないせいで、自分の会社が倒産するかどうかを心配しているのに、なぜ「デリシャス・フード」が倒産するしないの話になっているのか?
この噛み合っていない会話、脚本で意図的にやっているのだとすれば、様々な問題を抱えてテンパッた樫村が、ちょっとトンチンカンなことになってしまっている……という表現なのかも知れない。
当然、そんなことでオーナーたちが納得するわけもないのだが、樫村は必殺・土下座を繰り出して、買い戻しを待ってもらうことに成功する。
ただし期限は半年。それまでに金を返せなければ銀行口座を差し押さえる。
多少の猶予はできたものの、ある意味、倒産までのタイムリミットが設定されてしまった形だ。

いい人なんだけど……
崖っぷちに追い込まれた樫村&「デリシャス・フード」だが、コンサル契約を結んでいる宮内亮(椎名桔平)から「いい話」が持ち込まれる。
メガフランチャイジー会社「カタヒラ食品」から、主力チェーンのひとつ「新潟屋」を40億で買い取りたいという話があるのだという。
40億円あれば資金繰りも改善するということで、当初は前向きに考えていた樫村だったが、「カタヒラ食品」は買い取ったチェーン店を育てて価値を高め、売り払うことによって利益を上げている会社だと知り、売却を断念する。
「店を単なる商品と考える経営者に大事な新潟屋を任せるわけにはいきません。そんなことをしては現場で懸命に働いている従業員たちに申し訳が立たない」
ドラマの主人公的にはすごく正しい判断なんだろうけど、「潰れそうな会社の社長がそんなこと言ってる場合かよ!」とも思ってしまう。
スタッフと一緒になって弁当を売ったり、がんばっている社員の心意気に打たれて新店舗を出すことを決めたり、さらには糖質オフのヘルシーメニューを出すというナイスアイデアを提案したり……。
樫村が「いい人」であることは間違いないけど、死にかけている会社の経営を立て直せる社長なのかどうかは微妙なところだ。
そもそも、店頭で弁当をいくら売ったところで、130億円の含み損の前ではハナクソみたいなもんだと思うのだが……。もっと他にやることあるでしょ、社長!
諸悪の根源・創業社長が登場
がんばってはいるものの、どうも空回って見えてしまう樫村。
その理由のひとつには、今のところこのドラマに明確な「敵」となる巨悪が存在しないからというのがあるだろう。
前社長の大友(本田博太郎)がチョロチョロと動き回ってはいるものの、小悪党レベルの悪さだし、金を返せとメチャクチャプレッシャーをかけてくる龍ケ崎(大鷹明良)にしても、借りた金は返すのが筋。言ってることは正論だ。
厳しいことを色々と言ってきていた宮内だって、コンサルトとしてよかれと思ってのことだ。
そんな「よかれと思って」のアドバイスを、樫村が「夢」の一点突破で突っぱねてしまうので「大丈夫か?」の気持ちがどんどん膨らんでしまうのだ。誰も悪い人なんていないのに、「夢」を理由にしてむきになっちゃってない? と。
このドラマに、ものすごく悪いヤツがいるとしたら、フランチャイズ権を乱売したり、ヤバイところから金を借りたりと、「デリシャス・フード」をメチャクチャにした創業社長の結城(池田成志)ということになるだろう。
樫村は、そんな結城と突然、会うことに。
今まで姿を現さなかったド悪党がとうとう登場するのかと思いきや……、見た感じいい人そうな雰囲気が漂っている。
とことん無能だったのか、悪意があったのか? 会社をあそこまでメチャクチャな状態にしてしまったのには何か深いワケがあるのだろうか?
何にしてもそろそろ、弁当を売るとか、ヘルシーメニューを出すとかいう細かい話ばかりではなく、130億円返済するためのドデカい動きが出てきてもらいたいところだ。
(イラストと文/北村ヂン)
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『ラストチャンス 再生請負人』(テレビ東京・月曜22:00〜)>(テレビ東京)
原作:江上剛『ラストチャンス 再生請負人』(講談社文庫刊)
脚本:前川洋一
演出:本橋圭太
主題歌: 村松崇継「Starting over」(Climbing Records)
音楽 - 村松崇継
チーフプロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)
プロデューサー:川村庄子(テレビ東京)、松野千鶴子(アズバーズ)、木川康利(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
製作著作:テレビ東京