テレ東の贈るビジネスドラマ枠「ドラマBiz」第2弾『ラストチャンス 再生請負人』(テレビ東京・月曜22:00〜)第3話。

務めていた銀行が吸収合併され、再就職した会社もボロボロ……。
「人生、七味とうがらし」(うらみ、つらみ、ねたみ、そねみ、いやみ、ひがみ、やっかみ)がバッサバッサと降りかかりまくっている樫村徹夫(仲村トオル)。

この樫村が、バカな社長や取引先、銀行などにいやがらせをされつつも、そのうち倍返ししする『半沢直樹』系のドラマかなと思っていた本作だが、樫村がサクッと社長に就任。

潰れかけの会社を倍返ししつつ建て直していく『下町ロケット』系のドラマでしたか。
「ラストチャンス 再生請負人」ビジネスドラマあるある連発、いっそ香川照之にも登場してもらいたい3話
イラストと文/北村ヂン

『北京原人』本田博太郎に夢中!


「デリシャス・フーズ」の前社長・結城が資金繰りに困りまくった結果、「出店しなかったら、一定期間の後、返金する」という裏約束をつけてフランチャイズ権を売りまくり、その場しのぎの金を手に入れていたことが発覚した。

将来的に返金しなくてはならない「含み損」は130億円以上。

このことを知った社長の大友(本田博太郎)は激昂。ダチョウ倶楽部ばりに「聞いてないよ〜!」を連発し、社長を辞めると言い出した。


こんな社長実際にいたら災難でしかないが(いそうだけど)、ドラマ内では輝いている!

130億にビックリ→社長辞めるというくだりの、本田博太郎によるザ・ボンクラな社長の演技がホントに最高だ。

「ボクは辞めるよ〜。緊急取締役会を招集してくれるぅ?」

絶妙になまった、文章では表現しづらい本田博太郎ボイスに完全にやられてしまった。本田博太郎の演技にここまで夢中になったのは『北京原人 Who are you?』以来だよ!

「デリシャス・フーズ」としては完全に不要な人物だが、視聴者的にはもっと見ていたい存在。

これで退場しちゃうのは悲しいと思っていたら、どうやら今後もちょいちょいグチや噂話をするポジションで登場してくれそうだ(何してんだ)。

大友は少なくとも1000万円分以上の「デリシャス・フーズ」株を所有しているはず。


樫村新社長の手で再建を果たし、再び株価がドーンと値上がりしたと知り、

「もう売っちゃったよ〜、聞いてないよ〜」

とガッカリする姿を見せてもらいたいところだ。

イヤな銀行員となった後輩と再会


さて、大友社長辞任に伴いなかば押しつけられるような形で新社長になることになった樫村。

ロクな指導をしてこなかったコンサル会社「ジャパンリンケージ」と手を切り、銀行時代の同僚・宮内(椎名桔平)の会社とコンサル契約を結んで、本格的に再建を目指すこととなる。

再建するための施策は下記のようなもの。

・フランチャイジーたちに返金を待ってもらう。
・赤字の直営店を閉める。
・銀行に追加融資してもらう
・支援してくれる会社を探す。


……まあ、正しいんだろうけど、それが出来るなら誰も苦労しないわいといった感じのド直球な再建案だ。

メインバンクに追加融資を頼みに行くと、担当となっていたのは銀行時代の後輩・杉山(町田啓太)。

樫村はメッチャ先輩風を吹かせるが、

「私は樫村さんに大変お世話になりましたが、今後、お取引に関しましては、私と樫村さんの個人的な関係は考慮しませんので(ニヤリ)」

とアッサリ断られてしまう。

杉山役の町田啓太、わりと地味で堅実なおっさん俳優ひしめく中、いきなり「劇団EXILE」のイケメン俳優がいるので、チョイ役ではないな……と思っていたが、イイ感じのイヤなヤツとして登場してきましたな。

今後も、物語にガッツリ絡んでくるはずなので、どんな感じで手のひらを返してくるのか注目だ。

さらに、リストラ対象となった店舗のスタッフからも非難囂々。


「……働く社員たちの夢を大切にしなければ」

なんて眠たいことを言い出した樫村は、赤字店舗の閉鎖を猶予することにしてしまう。

当然、返金を待ってもらいたいと頼まれたフランチャイジーはブチギレるし、その上、結城前々社長がヤバイ金融会社からも金を引っ張っていたことが発覚する。

再建案は早速行き詰まりまくり。

樫村的にはまだまだ、「人生、七味とうがらし」ドッサドッサ状態が続くようだ。

こうなったら香川照之にも出てきて欲しい


みんなの夢のためにがんばる、元部下が偉そうになった、そんな状態なのに嫁はやたらと物わかりがいい……などなど、この手のビジネスドラマあるあるてんこ盛りになってきた本作。

こうなってくると、敵役として香川照之くらい濃いキャラクターが出てきてほしいものだが、そうなるとドラマ全体のノリが変わって来ちゃうか。


いわゆるビジネスドラマというジャンルの中でも、TBSの「日曜劇場」枠というよりは、WOWOWの「ドラマW」枠に雰囲気の似ている本作。

WOWOWとテレ東、予算の規模が似ているのかも知れないが、派手な出演者はいないものの、手堅い脚本と手堅いおじさん俳優をそろえ、熱狂するほどではないけど、安定して次回を楽しみにしてくれるドラマだというのも共通している。

おそらくTBSやフジテレビあたりだったら、すぐに「人生七味とうがらし」を商品化しそうなものを、それをやらないものテレ東らしい。

さて、会社が最悪の状態に向かいつつも、前向きに再建に取り組もうとしつつもから回っている樫村。そろそろ希望の目が見えてきてもよさそうなものだが……。

次回は、そんな樫村に不倫の誘惑が迫るっぽい!? 会社がヤバイのに、そんなことしている場合か、仲村トオル!
(イラストと文/北村ヂン)

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ラストチャンス 再生請負人(テレビ東京)
原作:江上剛『ラストチャンス 再生請負人』(講談社文庫刊)
脚本:前川洋一
演出:本橋圭太
主題歌: 村松崇継「Starting over」(Climbing Records)
音楽 - 村松崇継
チーフプロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)
プロデューサー:川村庄子(テレビ東京)、松野千鶴子(アズバーズ)、木川康利(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
製作著作:テレビ東京