夏休みももう終わり。
最近は8月じゅうに新学期がスタートする小中学校も多いと聞くが、まだ必死に残りの夏休みの宿題を片付けている子ども(とその親)も少なくないと思う。


夏休みの宿題の難題といえば読書感想文だ。小学3年生で400字詰め原稿用紙3枚(1200字)書かなければいけないらしい。大人だって大変かもしれない。

筆者は先日「読書感想文の虎の巻」(WEB RONZA)という企画で、現在、書店でよく見かける読書感想文の指南書6冊を読んでレビューを行った。指南書にはそれぞれ一長一短、向き不向きもあると思うので、詳しくはリンク先を参照していただきたいのだが、個人的にもっともしっくり来た内容の本が『ちびまる子ちゃんの読書感想文教室』(集英社)だった。
読書感想文必勝法『ちびまる子ちゃんの読書感想文教室』これさえ知っておけばOKの「満点わざ」

何よりのアドバイス「自分に合った本」を探そう


集英社の人気キャラクターを起用した「満点ゲットシリーズ」の1冊で、著者は高等学校国語科教諭の貝田桃子。まんがとカットは相川晴という人が手がけている。時折挿入される四コマまんがも含めて、いかにも『ちびまる子ちゃん』テイストで非常にクオリティが高い。対象年齢は明記されていないが、まる子が小学3年生なので、そのあたり想定されていると考えられる。

スタートはまず本選びから。課題図書を挙げたり、「書きやすい本を選ぼう」と書いたりする指南書が多いが、この本では「書けない本をえらんでいませんか」と問いかけている。この差は大きい。

課題図書はコンクール向けにはいいが、読書感想文や読書そのものが苦手だと感じている子どもにはハードルが高いことがある。
「書きやすい本」として古典などを挙げる指南書もあるが、何を基準に「書きやすい」と言っているのかわからない。教える側のひとりずもうである。

『ちびまる子ちゃん~』では、「きょうみのない本を読んでも、なかなか感想文は書けないですよね」と子どもに寄り添ったフォローをしつつ、「自分に合った本」を探すことを推奨している(チャートつき)。とにかく自分が興味のある本、自分とかかわりのある本、面白そうだと感じた本を選ぶことが大切なのだ。

これさえ知っておけばOKの「満点わざ」


だいたいどの指南本を見ても出てくるのが、読書感想文の「構造」である。この「構造」に従って書けば、あらすじを書くだけで終わってしまうこともなくなるし、「おもしろかった」という一言だけで終わることもなくなる。

『ちびまる子ちゃん~』の構造(「満点わざ」と表現されている)は、以下のとおり。

1. 本との出会い
2. あらすじ
3. 感想のたね
4. 「たね」が気になったわけ
5. 本を読んで変わったこと

5つと大変シンプルだ(指南書によっては10を超えることもある)。

1.は、その本とどうやって出会ったか、なぜその本を選んだのかを書く。
2.は、「いつ」「どこで」「だれが」「なにをした」に気をつけてまとめてみる。
3.は、本を読んで心が動いたところを書く。
4.は、心が動いた理由を書く。
5.は、本を読む前と読んだ後で変わったことを書く。


これらを「きほんの感想文シート」にメモして、それをもとに文章を書いていき、つなげれば感想文が完成するというわけ。『赤毛のアン』を題材に、メモの例と完成した感想文の例が掲載されている。

ここまで第1章(45ページ分)なのだが、読書感想文の基礎としてはこれだけで十分だろう。第2章以降はさらに上達を目指すための人向けに書かれている。読書や読書感想文が苦手な子どもには、親がこの5つの「満点わざ」を把握して説明するといいだろう。

さくらももこからのメッセージ


『ちびまる子ちゃん~』は指南書の中でも教え方がシンプルでわかりやすく、何より他の指南書がコンクール向けの課題図書や古典などを推奨しているのに対して「自分に合った本」を選ぶように勧めているところが良い。

そもそも興味や関心のない本を読んで感想文を書くほど苦痛なことはない。そんなことをやらされても読書が嫌いになるだけだ。

先日逝去した漫画家のさくらももこは「キャラクター原作」とクレジットされているだけで本書には直接かかわっていないが、カバーの折返し部分にさりげなくコメントを寄せている。読書感想文で頭を悩ませている子どもたちに、彼女の言葉をおくりたい。

「わたしは子どものころから文章を書くことが好きで、
読書感想文もほめられていました。
どうやって書いていいか、なやむ人もいると思いますが、
自分の好きな本を楽しく読んで、
思ったことを正直に書くと、よいと思います。

頑張ってくださいね!」
(大山くまお)
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