前回から引き続き、ゼロ(加藤シゲアキ)たち3人組は、手越祐也くん演じるクレイジーな司会者・城山小太郎とのクイズ対決「ジ・アンカー」に挑戦する。
クイズの問題など、基本的なゲームの進行はおおむね原作に忠実であるものの、ちょこちょことドラマ独自のアレンジが入ってくる……のはいいのだが、そのドラマ独自要素がことごとく上手くいっていない感があるこのドラマ。
この「ジ・アンカー」も、独自アレンジのせいで微妙な展開になっていた。

中二病のイケメンがゲームの鍵を握る
原作とドラマ版の一番大きな違いは、ゲームに挑戦する3人組のメンバー構成だ。
ドラマ版ではゼロと、ゼロに心酔する仲間・ヒロシ(岡山天音)、そして「いつ死んでもいい」と中二病っぽいことを言っているドラマオリジナルのキャラ・ユウキ(小関裕太)。
天才、バカ、まあまあ頭がキレる中二病という組み合わせ。
一方、原作は、ゼロ、ゼロの仲間・ユウキ(名前がかぶっていてややこしいが、ドラマ版におけるヒロシにあたる役どころ)、ヤクザ(ドラマ版ではケンドーコバヤシが演じている)。
天才、バカ、バカという組み合わせだ。
ゼロおよびバカの役回りは原作、ドラマ版ともに大差ないため、ドラマ版「ジ・アンカー」において、キーパーソンとなっていたのはオリジナルキャラのユウキだ。
「友情ごっこは勝負の邪魔。ボクはね、いつ死んだって構わないんだよ。賭けているのが自分の命だから」
事業に失敗したせいで、命を賭けてでも大金をゲットしなければならないユウキに対しゼロは、
「お金のために賭けていい命なんてありません!」
いいこと言ってるけど、ゼロだって明らかにお金のために命を賭けてるだろ! 今まで、失敗したら死ぬゲームばっかりやってきたじゃん!
こういう、雰囲気だけで理屈が通らないようなセリフが多いのも気になるのだ、ドラマ版よ。
とにかくゼロは、ゲームをクリアするのはもちろん、そんなユウキの考えを変えさせるというミッションも背負うこととなる。
司会者である城山小太郎のやりたい放題っぷりにも差があった。
原作でも、クイズの問題をアレンジしたり、アンカー問題のパネル位置を途中で変えたりと、小太郎にある程度、ゲームをいじくる権限が与えられていたが、それはゲームバランスを大きく崩さない範囲に限られている。
最低限ガチンコ勝負の体を保つため、小太郎自身も主催者側から監視されている立場なのだ。
しかしドラマ版では小太郎とともに、主催者側である後藤峰子(小池栄子)までもがゼロを殺すことに前のめり。
問題を変更し放題だし、パネルに割り当てられたポイントも操作し放題。ゼロの解答順を飛ばしたり、パネルが選ばれてから、そのパネルをアンカー問題にするかどうか決める、なんてことまで自由自在。
小太郎がその気になれば、ゼロが偶然アンカーポイントを引き当てることすら不可能になってしまうのだ。
そのため、原作ではゼロが最後のアンカー問題に答えていたのに、ドラマ版ではユウキになっていた。
アンカーが頭ギリギリまで下がった状態でアンカー問題に不正解し、想定以上に思いっきり下げることによって、頭よりさらに下の台座に当てて、アンカーを無力化するというクリア方法は同じだが、その意味合いが大きく変わる。
原作では、ゼロがアンカー問題の正解を導き出した上で、間違えれば生き残れると考え、わざと不正解することを選ぶ→なんとクリア! という流れ。
かたやドラマ版では、
「最後の最後に勝つヤツは、やっぱり守る物を持っているヤツだ」
なーんて、唐突に前向きなことを言い出したユウキが(考えが急に変わるような出来事、あったか?)必死で問題を解こうとするのを、ゼロは、
「もうダメだー! イヤだー! 死にたくないー! もうお終いだー!」
と、メチャクチャ怖がった演技をすることによって妨害。結果的に不正解にした……という形。
しかし、そもそも簡単に解けそうな問題ではないし、小太郎たちも不正解させる気マンマン。ゼロの頭脳プレイでクリアしたというよりは、「間違えたら結果的に助かった」という印象が強くなってしまった。
確かに、問題もパネルの位置も小太郎の自由自在という状態では、ゼロの頭脳で勝負しようがない。
仲間割れをしたように見せたり、思いっきり怖がって見せたりと、小太郎を油断させるための演技力の方が役に立つのは分かるけど……。何の戦いなのだ、このゲームは。
謎解きがメインとなるストーリーだけに、そのままドラマ化すると、原作を読んでいる人は展開が読めてしまうため、ドラマの独自アレンジで先を読めなくしてくれるなら歓迎したいところ。
ただ今のところ、原作のゲーム展開をなぞりつつ、中途半端なアレンジを加えているせいで、ゼロのキャラクターがブレブレだし、結局何のために勝負をしているのかもよく分からなくなっている。
いっそのこと、オリジナルのゲームを登場させちゃった方が、脚本家の意図した形で上手くストーリーを転がせる気もするが……。
福本伸行登場も、ジャニーズ・ファンには響かず
そんな感じでゲームがイマイチ盛り上がらなかったため、今回のピークは福本伸行のカメオ出演シーンだった。
おもむろにサングラスを外して、「在全グループ、福本宛だ!」
突然の原作者登場&大根演技〜!
福本先生、見た目は雰囲気あるだけに、余計に演技のヘタさが際だっていて笑ってしまった。
しかしこのシーン、Twitter等ではほとんど話題になっていなかったのが悲しい。
原作ファンにとっては爆笑シーンだけど、メイン視聴者と思われるジャニーズ・ファンは福本伸行の顔、知らないか。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・日テレオンデマンド
・Hulu
・TVer
『ゼロ 一獲千金ゲーム』(日本テレビ系列)
原作:福本伸行『賭博覇王伝 零』(KCデラックス 週刊少年マガジン刊)
脚本:小原信治
演出:丸谷俊平
主題歌:NEWS「生きろ」(ジャニーズ・エンタテイメント)
チーフプロデューサー:福士睦
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ