連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第23週「信じたい!」第136回 9月6日(木)、137回 9月7日(金)放送より
脚本:北川悦吏子 演出:土居祥平
「半分、青い。」136、137話。2度目の放送休止明けはご当地グルメ・炭水化物祭り
「半分、青い。 」下  文春文庫 北川 悦吏子

半分、青い。 下  文春文庫 北川 悦吏子

136、137話はこんな話


136話:草太(上村海成)から報告をもらい晴(松雪泰子)が癌だと知った鈴愛(永野芽郁)は慌てて実家に電話する。だがまだ初期で、手術すれば治るものであった。


137話:鈴愛が急ぎ岐阜に帰ったため、カンちゃん(山崎莉里那)の面倒を見る律(佐藤健)と正人(中村倫也)。シェアオフィスを案内された律は、旧知のロボット研究者・南村(山崎樹範)と再会する。

地震による」二度目の休止


9月6日深夜、北海道で最大震度7の地震が起こったため、136話の総合での放送は朝、昼共に中止となった。
「半分、青い。」が休止になるのはこれが二度目。一度めは6月18日早朝、大阪で地震が起きたため67話が休止、翌日、68話と合わせて放送になった。これで二度も地震で休止になったことになる。
数日前には関西方面が大きな台風の被害に遭った。自然災害で被害に遭われた地域の復旧をお祈りするとともに台風も地震ももう来ないでと願う。毎日、皆が心穏やかに朝を迎えられるように。朝ドラがそんな祈りと鎮めのドラマでずっとあってほしい。
136話の「いい夢を見られますように」という廉子さんのナレーション(風吹ジュン)のような穏やかなで優しげな声を常に届けてほしいものだ。

136話  晴の病状


おばあちゃんが病気で弱っていると知ったら、孫を連れて、孫の若々しい生命力に触れさせようと思う気がするが(実際、晴もカンちゃんに会いたがっていた)、カンちゃんがシェアオフィスに残ることで、律がシェアオフィスの魅力に取り憑かれる話を書くためには、鈴愛とカンちゃんを分けなくてはならない。

癌という衝撃的なワードで135話から136話に興味を引っ張ったが、晴は深刻な状態ではなさそうで、ほっとした。具体的な話は出ないが、劇中に図が出てきたのを見ると、胃癌と思われる。

近隣の人たちも癌で治った人が多いと晴が語るなかにゴロちゃん(高木渉)が入っていて、あのおしゃれ木田原の飄々としたおじさん(菜生のおとうさん)もとりたてて活躍する機会がないまま、いつの間にか癌になって治っていたという人生があったのだなとしみじみ。治られたということでなにより。

そうはいってもやっぱり不安なもの。そっとしておいてほしいのに鈴愛にわーわー言われたら晴には煩わしい。これまであえて触れずに来たと思うのだが、ここへ来てようやく鈴愛がうるさいことが言葉にされ始めた。カンちゃんが「カンが強くて困る」とかもそう。

40歳に手が届きそうな鈴愛は少しだけ大人になったようで、自分がうるさいこともうすうす自覚していて、核心にあえて触れず話題を切り替えて笑い話にすることを覚えた。
そんな鈴愛に「あの子は勘がええのかもしれんなあ」と今更晴が言うのはよくわからない。「あの子も成長したのかもしれんなあ」とかじゃないのか。まあ親ばかなのと日常会話は辻褄が合わなくてもいいかとも思う。

あと一ヶ月でまとめに入るために、いろいろ台詞で工夫していることを感じる。
ふいに“風通し”を意識するシチュエーションや台詞が増えたのも明らかにそれであろう。


137話  律と風


律の会社は「はめ殺し」の窓になっていて、風を感じることができない。「はめ殺し」とは誰がつけたかすごく物騒な言葉であるが、それだけ息が詰まるという意味なのだろう。
風の谷の家、シェアオフィスの風通しの良さにひと心地つく律は、大手自動車メーカーでロボット開発していた(ホンダを思わせる)南村が独立して起業している姿を見て、感化されはじめる。
倒産して夜逃げした津曲(有田哲平)も戻って来られるような居心地の良さ。誰も彼を厳しく咎めない。
失敗しても受け入れてもらえる場所なのだ。

律は、加藤恵子(小西真奈美)に空き部屋を案内してもらう。「グリーンビューでバードウォッチングもできる」というが窓の向こうはすぐ塀でそこに木が植わっていて、そこから向こうが白っぽく奥行きがない。ここはあんまり風通し良くないだろう。

家事の合間や出かける間際に見ている人には気にならずとも毎日じっくり見ている(BSも再放送もオンデマンドも録画も見ているヘヴィーユーザー)と、辻褄が合わないなあと感じることが多々ある。
例えば、正人が律のことを「抜けがない すきがない いつもパーフェクト」と言うが、これほど虚ろで、妻子に対して何もできてないまま離婚した人物がパーフェクトとは言えるか? 
・・・と思ったが、完璧主義だから、妥協できない。理想の鈴愛との結婚生活でないとダメなのだというような意味かもしれない。その完璧主義が彼を彷徨わせてしまっているのだ。
なんたる不幸。
幼い頃から鈴愛に言われている「幸せになる天才」も、そう前向きに言って彼を懸命に励ましているのだろう。
そうしないとすぐ沈んでしまうから。
とにかく、あと三週間、律よ立ち上がれ!!

いい仕事した俳優


「迷うことは 人生の醍醐味だ」
「自由にしていていいんだよ どっかにたどり着く」
137話で正人がまたいい台詞を語り、いい仕事した。
でも正人だけではないのだ、いい仕事をしているのは。
136話の宇太郎(滝藤賢一)。仙吉(中村雅俊)のものまねで「あの素晴らしい愛をもう一度」を歌うところも面白いが、晴の話を寝ながら聞いているとき、晴側の腕をなんとなく晴のほうに伸ばしていることに注目したい。
滝藤賢一は人間の心と体の連動をよくわかって動いている俳優だといつも思う。だからこの人の芝居はいつ見ても、心地よい気持ちの流れを感じる。こういうのこそ気持ちいい風というのだ。

まあかん袋欲しい


鈴愛の「まあかん袋」。大声で袋にわめくと声が小さくなって人に聴こえない。しかも、ばしっとやると「ふぎょ」と袋が言って気分が楽になる。136話で「なんでこれ売れん」と悔しがる鈴愛。
センキチカフェでも売れないらしい(137より)が、これはストレス社会でありなんじゃないだろうか。

自由な生き方


137話で大きな集団のなかで生きていくことの居心地悪さが語られる。みんな個々に自由に生きることの良さ。商店街をそういうものに例えたことは良かった。ただドラマで商店街のコミュニティーの魅力はほとんど描かれてこなかった。

それでも五平餅は美味しい。
137話では、五平餅のほか、名古屋名物八幡餅まで登場。炭水化物まつりであった。
(木俣冬)
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