ここ数年は、年一本ペースで連続ドラマを作っていたので、「今年もそろそろ遊川さんのドラマが来ないかなぁ〜」と思っていたら、スペシャルドラマだった。
昨年、中ヒットくらいを記録したドラマ『過保護のカホコ』の続編『過保護のカホコ2018ラブ&ドリーム』(日本テレビ系・9月19日21:00〜放送)だ。
普通、一年前に放送された連ドラのスペシャル版をやる場合、事前に再放送とかしてくれるものだが、今回はなさそうなので(おそらく「Huluで見てね」ということなのだろう)放送前にざっくりと振り返っておこう。
連ドラ版のストーリーを振り返ってみよう
子どもの頃からメチャクチャ過保護に育てられてきた根本カホコ(高畑充希)は、世間知らずというレベルでは収まらない、ちょっと頭が足りないんじゃないかと思わせるド天然な女の子。

過保護……というかサイコ級の過干渉親である母・泉(黒木瞳)の庇護の元、なーんにも考えずにぬくぬくと暮らしていたのだが、両親から捨てられ、バイトで学費を稼ぎながら美大に通っている苦学生・麦野ハジメ(竹内涼真)と出会ったことで色々なことに目覚め、
「みんなを幸せにするような仕事がしたい!」
と思うようになる。
カホコの母方の家族・並木家では、アル中、万引き癖、娘が不良化……などなど、問題続出。
一方、父方の根本家でも、叔母が両親にパラサイトして家の金を食い潰しているという悲惨な状態。
ハジメと出会って恋愛や世の中のことを考えるようになったカホコは、ハジメとイチャイチャしつつも、ピュアネスな一途さで家族みんなの問題を解決するために奔走する。
最終回では、成長し、親離れしようとしているカホコのことをどうしても認められなかったサイコ母・泉からもようやくオッケーをもらい、ハジメと結婚。
「みんなを幸せにするような仕事」として、
並木家のみんなとともに、子どもたちのための施設「カホコハウス」をはじめた。
連ドラ版のストーリーは、ざっくりとこんな感じだ。
よくよく考えると何にも解決していない!
母親べったりだったカホコが成長し、両親のもとから巣立ち、ハジメと新しい家族を作るという成長の物語だった連ドラ版。
家族内の様々な問題も一応、解決した感じで終わっていたわけだが、メチャクチャだった家族が立ち直るための一歩を踏み出した……くらいの結末だったので、あれからどうなったのか気になっていたのだ。
プロのチェロ奏者を目指しつつも、手を痛めてしまったため、夢を諦めざるをえなかった従兄弟のイトちゃん(久保田紗友)。
不良化した状態からは立ち直っていたものの、手が治ったわけではなく、根本的な解決ではない。
盗癖のある叔母・環(中島ひろ子)とアル中の衛(佐藤二朗)の夫婦も心配だ。勢いで離婚してしまった後、再婚をしていたが、問題行動が治ったわけではない。ちゃんと正常な夫婦生活が送れているのか!?
祖母・初代(三田佳子)にべったりだった祖父・福士(西岡徳馬)もどうなっていることやら。
心配したカホコ夫婦が一緒に住むことになっていたが、初代なしでは何もできない祖父と、母親なしでは何にもできなかったカホコの生活、心配としか言いようがない。
そして、カホコが「みんなを幸せにするような仕事」としてはじめた「カホコハウス」だが、それまで色んな投資や事業に手を出して、ことごとく失敗してきた叔母・教子(濱田マリ)と、就活で全滅していたカホコのコンビでまともに経営できているのか!?
こう考えると連ドラ版、根本的には何にも解決していなかったじゃないか!
中でも、もっとも心配なのがハジメ。
世間知らずのカホコを導く常識人というポジションに置かれていたハジメだが、ハジメ自身も、金がないくせに画家を目指し「ピカソを超える!」なんていう夢見がちなことを抜かしている、なかなか生活能力のなさそうな男なのだ。
ずーっとピカソみたいな抽象画を志向してきたハジメも、連ドラ版最終回では似顔絵描きになっていたようだが、絵で食えるようになってるのかな……。
最近の遊川和彦のテーマ「養子」再び
今回のスペシャルドラマでは、カホコ達の結婚から一年後が描かれる。
「カホコハウス」をはじめるきっかけともなった、児童養護施設の頃も・タモツくん(横山歩)の母親が現れるが、その母親が超・ダメ。
何だかんだでカホコたち夫婦がタモツくんを養子にするのしないの……という話になっていくようだ。
養子といえば、遊川和彦が2016年に手がけたドラマ『はじめまして、愛しています』でもテーマとなっていた。
おそらく遊川さん的にも、近年ものすごく気にしているテーマなのだろう。
『はじめまして、愛しています』は、育児放棄された子どもが江口洋介・尾野真千子夫婦のもとに現れ、その子と特別養子縁組しようとするドラマ。
実の親が現れたのに、「やっぱ私には育てられないんで」的な話となり江口・尾野夫婦と子どもが特別養子縁組することを許可しちゃうという、ちょっとモヤモヤっとする終わり方だった。
『過保護のカホコ』は、ものすごく娘のことを思っている母親も、別の見方をすれば過干渉な毒親で、でも毒親は毒親なりに娘を愛していて……という、複雑な親子関係を描いてきたドラマだ。
単純に、ダメな親からタモツくんを取り上げて養子にしちゃおー的な話にはならないで欲しいところだ。
死んだはずの三田佳子も出演するらしいぞ!
そして何といっても一番気になるのは、三田佳子!
三田が演じていたカホコの祖母・初代は既に亡くなっているが、家族の絆をまとめるキーパーソンとして、今作にも登場するらしい。
回想でチョロッと出てくるだけなのか、幽霊的な感じで枕元に立ったりするのか!?
そして、過保護な毒親を描いてきたドラマに、このタイミングで三田佳子が出演するとは……!
もちろん、撮影などは事件前に済んでいたはずだが、三田佳子が家族愛を語れば語るほど、例の次男が脳に浮かんできそうだ。なんちゅうタイムリーさなのか。
とにかく、「あれ、どうなったのかな〜?」と思っていたカホコたちのその後が見られるというのは素直に嬉しい!
最近、1クール続く連ドラだと内容がとっちらかっちゃうことが多かった遊川さんだが、2017年の初監督映画『恋妻家宮本』は(原作つきとはいえ)すごくキレイにまとまっていていい映画になっていた。(レビュー)
そういう意味では、2時間で終わる今回のスペシャルドラマも期待できるのでは!?
漫画やアニメの実写化ばっかりになっている日本のドラマ界において、オリジナル脚本ドラマにこだわっている遊川さんの新作。
ひとまず今夜の放送を楽しみにしよう。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・Hulu
・全話Hulu
『過保護のカホコ2018ラブ&ドリーム』(日本テレビ系列)
脚本:遊川和彦
演出:日暮謙
主題歌:星野源「Family Song」(スピードスターレコーズ)
音楽・平井真美子
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:大平太、田上リサ
制作協力:5年D組
製作著作:日本テレビ