米倉涼子主演のドラマ『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』。弁護士資格を剥奪された自由奔放な主人公が、ワケありの仲間たちとともに法廷劇を繰り広げる。


米倉涼子演じる主人公の翔子があまり活躍しない分、仲間の弁護士たちにスポットがあてられるエピソードが多い。先週放送の第5話は人気爆発中の林遣都演じる“ポチ”こと青島弁護士がメインのお話だった。視聴率はちょっと下がって15.4%。
「リーガルV」エグゼイド、ウィザード、W、仮面ライダーから続々登場、匿名掲示板に制裁、林遣都活躍5話
イラスト/Morimori no moRi

ライダー関連俳優、続々登場?


最近ヒマな京極法律事務所だが、ポチだけは忙しそう。京極法律事務所に入る前から抱えていた案件を控訴審で逆転勝訴に導くために一生懸命だったのだ。

ポチの案件とは――。人気学生ベンチャー企業を起業した帝国大学4年生の町村(瀬戸利樹)が激しい暴行を受けた。
それを発見したのが町村の幼馴染で武藤(戸塚純貴)なのだが、凶器から指紋が検出されたため、傷害容疑で起訴されてしまう。武藤の弁護を引き受けたポチだったが、町村自身が「武藤から暴行を受けた」と証言したため、一審で実刑判決を受けることに。さらに武藤の母(片岡礼子)が自殺するという悲劇に見舞われていた。

しかし、翔子は話を聞いても、「儲かるの、それ?」「ウチは慈善団体じゃないの」と一切興味を示さない。ところが被害者の町村の学生ベンチャーが年商10億円と聞いて態度が豹変。もし、武藤の無罪を証明できたら、偽証を行った町村にウン千万単位の賠償金を請求することができる。
がぜんやる気スイッチが入った翔子。やっぱりこの人の行動原理は「カネ」なのだ。

町村役の瀬戸利樹は『仮面ライダーエグゼイド』の準主役、武藤役の戸塚純貴は『仮面ライダーウィザード』でこちらも準主役だった。第2話には『仮面ライダーW』の桐山漣も被告人役で出演しており、今後もライダー関連の出演者が登場する可能性がある。

ポチが童貞! ツイッターがフィーバーに


「弁護士ならもうちょっと人を疑ったほうがいいんじゃないの?」
「人を信じるのも弁護士ですよね」

ポチはいつも誠実だ。ナナメから物事を見る翔子にイヤミを言われても、真っ正直に返事する。返事をするとき、真正面を向いていたのは彼の一本気なところを表している。


ポチが弁護士になった動機は「弱い人の味方をしてあげられたら」というもの。「いじめられっ子だったとか?」と翔子に聞かれると否定していたが、同級生に裸にされたり、裸の写真を5万円で買わされたりしていたらしい。それはもういじめでもなくて犯罪! こういうエピソードを冗談のように扱う脚本は、ちょっと雑だと思う。視聴者がこれで笑うと思ってるのかな?

傷害事件現場の近くにあるラブホテルに行こうとする翔子に戸惑うポチ。「経験がない」と言うと翔子はひとしきり驚き、帰り際に「童貞君」と言われる。これも会社の上司と部下(翔子は「管理人」なので厳密には上司ではないが、実質事務所のオーナー)の会話としては明らかにアウト。
だけど、ツイッターのタイムラインを覗くと「ポチは童貞!?」「ラブホ連れ込みたい!」とポチファンが狂喜乱舞していたので……まぁ、いいのかな。

ネットでバッシングされる被害者の母親


「息子が有罪になったのも、女房が死んだのもあんたのせいだ!」

武藤の父(志垣太郎)はポチに辛くあたる。息子の無実を信じた武藤の母は懸命に行動していた。武藤が事件の直前に電車(ぬれ煎餅で有名な銚子電鉄)に乗っていた時間を証明するため、目撃者を探すビラを配ったり、息子を誹謗中傷するまとめサイトに反論の書き込みを行ったりしていた。そういえば母役の片岡礼子は『シグナル 長期未解決事件捜査班』でも事件解決のために情報を求めるビラを配っていた。

武藤の母はネットで誹謗中傷の嵐に遭う。「犯罪者の母親が何か言ってるぞ」「過保護のバカ母」などと叩かれて、挙句の果てには写真や住所、さらに過去に風俗で働いていたことまで暴かれてしまった。


「イジメで学校を訴えたせいで息子が余計いじめられたバカ母」
「息子の塾代金の為に風俗嬢をしていた救いようがないバカ母」

スタッフなぜ文字数を揃えたのか。なお、武藤の母が風俗で働いていたのはデマかもしれないのだが、脚本での言及はない。風俗で働いて息子の学費を稼いだとしても非難されるいわれはないので、そのあたりにも触れればいいのに……と求めてしまう神経が細かすぎるだろうか? 

武藤の実家は、壁にも「馬鹿親子」「バカ母」などのひどい落書きがされていた。まるで長嶋一茂邸か範馬刃牙の家だ。京極(高橋英樹)の「被害者にも加害者にも家族がいる。それは守られなければならない」という言葉はラストにつながっていく。


ポチの大逆転勝利!


町村と武藤は親友だった。いじめられていた武藤を町村はかばい、優秀な町村を追って武藤は帝国大学に入学した。ならば、なぜ町村は武藤が犯人であると証言したのか?

事件には半グレ集団のドラゴンユニオンが絡んでいた。町村の後輩、中西(金子大地)を介して町村のベンチャー企業とつながったドラゴンユニオンは、事業の解散を提案する町村に対し、事業の継続を強く求めていたのだ。町村は半グレ集団の脅威に心が折れ、大切な友人の名を出してしまったようだ。

「人間はそんな強くないのよ。追い詰められると大事なものを見失うことだってあるわ」

翔子の言葉は自分自身の過去ともつながっているのかもしれない。翔子には中学卒業前、自営業をしていた父親が投資詐欺で騙されて全財産を失い、失踪した過去があった。周囲の陰口に耐えきれなくなった母親は娘を連れて別の街に逃げていた。弁護士になった動機について、過去にはこんなことを言っていた。

「法律さえ知っていれば避けられる悲しみがある」

翔子は証拠集めに苦戦を強いられるポチを叱咤激励する。

「あんたの何十倍も何百倍も本人や家族は苦しい思いをしてきたのに、簡単に悔しいなんて言わないでよ。これはあんたの裁判でしょ? あんたの戦いなの。あんた勝たなきゃいけないの!」

法廷でポチは、武藤の母が町村に渡そうとした手紙を読み上げる。そこには息子を想う母親の心情と、かつて息子をかばってくれた町村への想いがせつせつと訴えられていた。心打たれた町村は、真犯人が中西であることを証言する。武藤は逆転無罪、中西は逮捕されることになった。これで事件は解決! ……と思ったらまだ放送時間が5分ほど残っていた。そう、まだ事件は終わってなかったのだ。

ネットの匿名の書き込みも見逃されない


翔子たちは情報開示請求が認められ、武藤の母を誹謗中傷していたネットの書き込みの主たちに片っ端から損害賠償請求を行う。賠償額は30万円、書き込みしていたのは300人だから合計9000万円。事務所の成功報酬は1800万円となる。

もはや匿名の書き込みで人を傷つけて知らぬ顔ができる社会ではない。今年1月には妻をネットの匿名掲示板で誹謗中傷されたプロ野球選手が、書き込んだ相手に対して191万円の損害賠償を請求した。ちょっと性質が異なる事例だが、今年5月にはネットで煽られて弁護士に大量懲戒請求を行った人たちが逆に賠償請求や刑事告訴される騒ぎが起こっている。

損害賠償請求を受けた人たちが怒って京極法律事務所に殺到するが、翔子は「自覚してる? あんたたちは殺人犯なの」と一喝。書き込みをしている人たちが年齢高めなのがリアルだった。支払いを拒否すれば裁判所で争うことになる。怒った一人のデブ(これはステロタイプ)が「お前ら全員ネットで公開処刑だからな」と言うと、ポチが毅然と言い返す。

「判断するのは裁判所です! 法廷でお会いしましょう」

これはポチファンも納得のカッコ良さ。しかし、ラストで翔子に部屋に誘われてあからさまに動揺してしまうのだった。しかし、翔子の頼みはシリアスで次回に続く。

ラブホテルの受付嬢(YOU)が偶然武藤の電車に乗っていたことの証人になったり、その証言が裁判でたいして役に立たなかったり、女性が相変わらずハニートラップの駒にされたり、ポチが読んだ手紙の真偽が明らかにされていなかったり、まとめサイトの主も糾弾しなきゃダメだろうと思ったりと、いろいろ思うところはあった第5話だったが、これまでのエピソードよりは好きでしたよ。

本日放送の第6話は、若い女結婚詐欺師を京極法律事務所の面々が追い詰める。今夜9時から。
(大山くまお)

『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』
木曜21:00~21:54 テレビ朝日系
キャスト:米倉涼子、向井理、林遣都、菜々緒、荒川良々、内藤理沙、宮本茉由、安達祐実、三浦翔平、勝村政信、小日向文世、高橋英樹
脚本:橋本裕志
演出:田村直己(テレビ朝日)、松田秀知
音楽:菅野祐悟
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、峰島あゆみ(テレビ朝日)、霜田一寿(ザ・ワークス)、池田禎子(ザ・ワークス)、大垣一穂(ザ・ワークス)
制作著作:テレビ朝日