月9「SUITS/スーツ」第8話。最終話の10話まで今話を含めて残り3話。
サブタイトルが「最終章スタート!」だったが、その感じは一切なく、今まで通りの1話完結だった。前にも「新章スタート!」みたいなことがあったけど、本当にどういうことなのだろう?
「SUITS」織田裕二山本未來の昔のトレンディドラマ感が凄い、何かが始まった感はあった最終章8話
イラスト/Morimori no moRi

甲斐VS畠中


前回、替え玉受験問題を起こしたの真琴(新木優子)と鈴木(中島裕翔)のシーンからスタート。替え玉しようとしたくせに真琴は、鈴木に対して「反省はしてます」「私のことバカにしてたんですよね?」と逆ギレ。今までクールで欠点のほぼない優秀なパラリーガルだったが、急に人間味が出てきた。「私は替え玉する気なんてなかった。替え玉の人に会って、勉強を教えてもらおうと思っただけ」とか言わないで本当によかった。

チカ(鈴木保奈美)が持ってきた案件は、大手建設会社「烏丸建設」を相手取った、有害性塗料による健康被害の集団訴訟。
幸村・上杉法律事務所は、総力をもって挑む。相手は、過去にも登場したスタンリー法律事務所の畠中美智瑠(山本未來)だ。畠中は甲斐(織田裕二)の元部下であり、その教えを引き継いでいるため、勝つためなら手段を選ばないい。原告団代表の弱みを調べ上げ、訴訟を取り下げるよう脅す。

一方、甲斐は、蟹江(小手伸也)から烏丸建設専務の富永光郎(大林丈史)が横領しているという情報を得る。その情報を利用して和解交渉を有利に進めようとするが、烏丸建設社長の烏丸世之介(須永慶)と畠中は、富永を切り捨てることでこの交渉を突っぱねる。
畠中はその後、ホテルに原告たちを集め、その目の前で甲斐と大声で交渉。ホワイトボードに自分の携帯番号を書きなぐり、原告と相手側の弁護士が交渉してはいけないという法をかいくぐる荒業を見せる。なんだか甲斐より甲斐っぽい。

終始押されっぱなしの甲斐だったが、鈴木の何気ない一言から、あらゆる手段を用いてくる畠中が唯一“しなかったこと”に目を付ける。ここからチャンスを見出し、一発逆転。師弟対決は、甲斐の勝利となった。


アメリカンではなく、トレンディ


アメリカ版「SUITS」をまんま日本でやっているという印象の今作。セリフ回しや演出もアメリカナイズドされすぎており、日本でやるには若干の違和感がつきまとい、やることなすことしっくりこなかった。しかし、今話はちょっと違った。もしかしたら畠中役を務めた山本未來のおかげかもしれない。

元よりキャラ強めの演じ方を得意とする織田裕二の演技は、ハマっていた方だと思う。それでも、他の役者との掛け合いになると、喋り方が浮世離れしすぎていて少しだけ噛み合っていなかった。
蟹江とは噛み合っていたが、その風貌と会話の内容からコメディに寄り過ぎてしまい、かっこいい!という方向には向いていなかった。

だが、大仰すぎてショボくなりかねないセリフが、織田裕二と山本未來だとバシバシ決まる。単純に年齢的な問題か、それとも同じような志を持つ者同士の戦いだからなのか、違和感が生まれない。日常生活で絶対聞くことのないような嫌味たっぷりの皮肉や、それに対する完璧な意趣返しも、わざとらしさがない。いや、わざとらしいのだが無理がない。織田裕二と山本未來の会話は、アメリカのマネではなく、昔のトレンディドラマのワンシーンのようだった。


「ようやく君の電話番号を知ることが出来たよ。必ず君を落として見せる」

ホテルで畠中の策略が決まり、多くの原告が訴訟を取り下げようとしたシーン。過去に口説こうとするも電話番号を教えてくれなかった畠中に対して、甲斐が言ったセリフだ。圧倒的に不利になった甲斐は、畠中の異性としての魅力を認めるという余裕を見せることで、畠中を揺さぶった。畠中は畠中で、「そうこなくっちゃ」と言わんばかりの不敵な笑みでその場を去る。

上手く出来過ぎていてダサい。
しかし、振り切っていてカッコいい。これが片方だけのトレンディな演技だったらどうしようもなくしっくりこないのだが、同じレベルで同じトーンだから面白い。

今話のラスト、さきほどまで敵同士だった甲斐と畠中が酒を飲みながら、ビリヤードに興じていた。甲斐は畠中を口説き、畠中はそれを交わす。お互い大人のクールな恋愛を楽しんでいるようで、次の戦いのためにと揺さぶり合いをしているよう。やっぱりすごくトレンディ。8話にしてようやく、このドラマの方向性が見えた気がする。

(沢野奈津夫)

「SUITS/スーツ」
月曜 21:00〜21:54 フジテレビ系
キャスト:織田裕二、中島裕翔、新木優子、中村アン、今田美桜、國村隼、小手伸也、鈴木保奈美など
脚本:池上純哉
演出:土方政人、石井祐介
主題歌:B'z「WOLF」