新章開幕!という煽りでスタートした月9「「SUITS/スーツ」第5話。新章というくらいなのだから長編が始まったり新しいライバルが登場したり、物語に劇的変化が訪れるのかと思ったが、特に変わった様子のないいつも通りの一話完結だった。


違法行為ギリギリの際どい手段を用いる甲斐(織田裕二)、完全記憶能力を持つ天才の鈴木(中島裕翔)。基本的にこのドラマの煽り文句は、話半分に聞いた方がいいのかもしれない。甲斐はプライドの高いエリートだが、それほど危ない橋ばかり渡っているイメージもないし、鈴木は完全記憶能力こそ持っているが、どちらかという人間味がある普通の青年。余計な情報を脳に入れずにストーリーだけ純粋に見た方が混乱しないで済みそうだ。
月9「SUITS」ようやく中島裕翔の完全記憶能力がちゃんと役に立ってほっとした5話
イラスト/Morimori no moRi

あらすじ


新章が開幕したなぁと思うほどではないが、変化があったとしたら、曖昧なままだった鈴木の悪友・遊星(磯村勇斗)との関係がいったん整理されたこと。騙されて借金まみれになった遊星を、鈴木は弁護士らしく法律の知識で救うことで、自分の意志で関係を切ったのだ。もちろんこのまま何もないとは思えないが、鈴木が過去と決別した瞬間だ。
ただ、悪役の借金取りが弁護士相手に無計画すぎたのはびっくりした。

甲斐も過去が少し明らかになった。運転手の赤城達男(ブラザートム)が事故を起こした相手の運転手・糸井(半海一晃)は、過去に甲斐が倒産に追い込んだ糸井ベアリングの社長だったのだ。と言っても、当時の甲斐は糸井の会社を救うべく動いており、糸井はそれに気づかずに倒産の逆恨みをしているだけだった。それにしても甲斐は、本当に“意外と良い人エピソード”が多い。多すぎてもはや普通の良い人だ。


この過去が繋がってくる気配はあまりないが、ラストに甲斐の元上司・柳(國村隼)が登場。甲斐に何やら依頼を持ちかけるがその内容は一切不明。もしかしたらこれが“新章”なのかもしれないが、情報がなさすぎてスタートは決してしていない。

珍しく発揮された鈴木の個性


鈴木の完全記憶能力は、過去4話ほとんど役に立っていなかった。甲斐のメモリスティックとして膨大な量の資料を覚えさせられたり、鈴木大貴になりきるために身辺情報を記憶したりと、ストーリーが展開するために役に立っているが、直接的な事件解決のきっかけになることはほぼなかった。

それが5話で初めてそれっぽい活躍を見せた。糸井のトラックのドライブレコーダーが消去されていたが、鈴木はその完全記憶能力で糸井のトラックの後ろを走っていた車を割り出し、そのドライブレコーダーの情報を掴むことに成功したのだ。
弁護士物の仕掛けとしてはシンプルなものだったが、こういうのを待っていた。というより、1話から毎話こういうのがあるものだと思っていた。記憶という一点のみで、大逆転する展開を毎回期待したい。

実在する固有名詞


今話はアニメ「ONEPIECE」のセリフが多用されていた。「ここが地獄じゃあるめぇし」「勝者だけが正義だ」「俺は海賊王になれねぇよ」。原作のアメリカ版では、映画の名言みたいなのがちょいちょい出てくるのだが、そこは日本ということで代わりに「ONEPIECE」が選択されたのだろう。
フジテレビだし。

一方の甲斐は、ニューヨークヤンキースの田中将大との交友関係をほのめかす発言をしている。さらには、SNSのフォロワー100万を越える友人が複数いることも。鈴木は「ONEPIECE」の名言を遊び心を交えて会話をすることで一般性が表現され、甲斐は大物有名人との繋がりを見せることでスケールの大きさを見せた。現実と微妙にリンクさせることで、2人の対比が表現されている。

今話放送の6話では、甲斐と蟹江(小手伸也)が組むらしい。
もっとスケールのでかい案件で、庶民っぽい鈴木が活躍する展開が見たい。
(沢野奈津夫)

「SUITS/スーツ」
月曜 21:00〜21:54 フジテレビ系
キャスト:織田裕二、中島裕翔、新木優子、中村アン、今田美桜、國村隼、小手伸也、鈴木保奈美など
脚本:池上純哉
演出:土方政人、石井祐介
主題歌:B'z「WOLF」
U-NEXTにて配信中