脚本:福田 靖
演出:保坂慶太
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平、
桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功、瀬戸康史ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎

58話のあらすじ
萬平(長谷川博己)は捕まったままで、たちばな塩業の経営も危ぶまれるが、福子(安藤サクラ)は萬平の釈放を信じ続けていた。
事件を知った歯科医の牧(浜野謙太)や加持谷(片岡愛之助)が釈放を訴えに進駐軍を訪れる。
会社がピンチ
夜、源をあやしながら、萬平のことを想う福子の後ろ姿に圧倒的な味わい。背中で魅せる、朝ドラヒロインはなかなかいない。
状況は芳しくなく、大阪商工会から退会させる話が持ち上がる。世良の会社も……。
専売局からは近々取引停止があるかもしれないと電話がかかってきた。
一方、萬平の取り調べはダネイホンに及ぶ。
「産後の肥立ち」の意味はアメリカ人にはわからず、萬平は身振り手振りで説明を試みる。
陸軍曹長ハリー・ビンガム(MONKEY MAJIKのメイナード・ブラント)は、萬平の話に興味を持ち始めているようだ。
世良とタナカ
桐谷健太の芝居が暑苦しいのは、台本に沿っていることがわかる57話。
進駐軍の人たちもそう思って、うんざりしている描写がある。
それでもなお、世良はしつこく話をし続ける。
魚が手榴弾でとれなかったのは時間帯の問題だと主張。もう一度試してくれと言う。
ものすごく熱心なのは、自分が助かりたい一心なのだ。まったく調子がいい。
時間帯の問題なんて、野村(南川泰規)、高木(中村大輝)、堺(関健介)が言えばいいことではないかという話はともかく、うるさい世良が、チャーリー・タナカ(岡崎体育)を「生意気過ぎる」とうざがる。口が達者なのは同類だと思う。そのうち仲良くなったりしないかな。
どんだけ回想するんだ。
なつかしい顔が続々。
萬平を助けようと、牧善之介と加持谷圭介が進駐軍を訪れる。ダブル“介”である。
いかに萬平と福子に善人であるか(加持谷にいたっては「善人」だけでは言い表せないとまで言う)、ふたりは滔々と語る。
これによってふたりの過去が回想される。
朝ドラの「振り返り」の手厚さにはおそれいる。
そもそも一日、BSの本放送、昼の再放送、総合の本放送、昼の再放送、夜の再放送、土曜の一週間まとめがある。「まんぷく」では公式サイトが漫画でその日のあらすじを紹介している。
のみならず、本編でも、何かとこれまでの話を回想する。どれだけ手厚いのか。それだけ、いつでもどこからでも入ってこられるように考え抜かれているのだろう。
「半分、青い。」の勝田プロデューサーが「朝ドラはNHKの飯のタネ」と言っていた。それだけ大事にしているのだろう。
牧と加持谷がやってきた!
牧は大阪歯科医師会の理事になっている牧。大変な出世。
牧とジョナサン・メイ(MONKEY MAJIKのブレイズ・プラント)のやりとりが面白い。ミュージシャンだからか呼吸の合わせ方がうまい気がした。
牧が、萬平が軍事物資の横流しの嫌疑で捕まった話をしたあとに、加持谷が現れメイが「おまえか」というところは面白かった。…ところで、この件はもう無効なのだろうか?
加持谷は、絶望していたところを萬平に救われてから、チンドン屋になっていた。
ピエロの扮装で、萬平の無実を訴えるビラを配り、「立花君は悪くなーい」と叫ぶ。
ピエロの扮装を考えたのが愛之助なのか演出家なのかわからないが、道化者の愛嬌ならびに哀愁が出ていてよかった。
道化には深い歴史と意味があることは、38話のレビューで道化と「まんぷく」について考察したところで
少しだけ触れている。
“
福子は道化キャラ
引用してみる
……と、ここで、舞台にあがった安藤サクラを見ていて気づいたことがある。
彼女のもんぺのシルエットと明るい色味が“道化”に見えて、そうか、福子はヨーロッパの古典的演劇における“道化”なんだなと感じたのだ。
道化とは、王様に仕えて、盛り上げたり、ちょっと鋭い意見を言ったりする役割。おバカさんを装いながら実は賢いキャラである。演劇では巧い俳優しかできない。トリックスターとも言う。日本の歌舞伎にもそういう役割が存在する。
有名なのは、「リア王」の王様にくっついている道化だ。
萬平と並んで漫才している時の安藤サクラは、シェイクスピアの『間違いの喜劇』の主人公と彼にくっついている道化キャラ、もしくは、イタリアのコメディア・デラルテにいけるコロンビーナという女性キャラのようだ。
長谷川博己は実のところそんなに器用な俳優ではないから、芝居が固くなっていくこともある。四角四面の真面目キャラの役だからパキパキするしかないところを、安藤サクラが頑張っておバカさんになって盛り上げて支えている印象。それでバランスがとれている。
ちなみに、ピンはねして話題沸騰の世良(桐谷健太)もコメディア・デラルテ道化のひとつの典型(ずる賢いキャラ)のようでもある。
「まんぷく」には古典的な大衆芸能が基盤になっていて、そのわかりやすさが多くの人の心を捉えているのであろう。“(エキレビ! まんぷく38話レビューより)
加持谷のピエロ(道化)の扮装によって、この考察がまんざら深読みし過ぎなわけでもない気がしてきた。
萬平という圧倒的な善人(ヒーロー)がいて、彼を崇拝する一番の人物が福ちゃん。そして、一癖も二癖もある牧や加持谷や世良が絡んできてドタバタを繰り広げていく、シンプルながら盤石な土台が作られている「まんぷく」。ダネイホン師匠(誰もが手軽に栄養のとれるいいものの意味ですので誤解なきよう)に勉強させていただきました。
それと、57話で印象的だったのは、ピエロのあと、「あさイチ」がこれまた扮装による民俗文化である「ナマハゲ」(ユネスコの無形文化財になった)特集だったことである。ひじょうに興味深い重なりであった。
(イラストと文/木俣冬)
連続テレビ小説「まんぷく」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
朝夕、本放送も再放送も オールBK制作朝ドラ
「べっぴんさん」 BS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。
かわいいイラスト入のお弁当箱をつくりはじめる。
56話
「あさが来た」 月〜金 総合夕方4時20分〜2話ずつ再放送
「透明なゆりかご」で活躍した清原果耶が女中ふゆ役で出演している。
19話
20話