原口「変わったね、聖ちゃん。強くなった」
「その逆です。
ふふ、もうボロボロです」

12月11日(火)放送の火曜ドラマ『中学聖日記』(TBS系)第10話。

お互いの思いを確認し合った聖(有村架純)と晶(岡田健史)は、晶の父・康介(岸谷五朗)が住む島から帰ってきた。これからも二人で一緒にいるために、周りに理解をしてもらう努力をしていこうと心に決めていた。
衝撃の連続「中学聖日記」暴力に見えたバックハグ、「一緒に居たい」願いは未成年者誘拐に今夜最終話
イラスト/まつもとりえこ

晶と一緒にフェリーを降りた聖の前に、聖の母・里美(中嶋朋子)が現れる。晶の母・愛子(夏川結衣)から知らされて来たのだ。里美、愛子、そして勝太郎(町田啓太)は、聖と晶の気持ちは認められないと言い、二人を諦めさせようとする。


もうときめかない“勝太郎のバックハグ”


愛子「いまの晶は、先生といると不安定になります。3年前もそうだった。あなたたちは、自分たちの気持ちを確かめ合うのに必死で、周りが見えなくなって、いろんなものを失って。このままじゃ二人ともダメになる」

確かに、3年前から前回までの晶は不安定だった。聖への思いを愛子に少しでも否定されるようなものなら、苛立ちを隠さず無視をしたり暴言を吐いたりしていた。

でも、晶は変わった。康介の「本当に先生が好きなら、立派な男になれ」という助言。
聖の「黒岩くんが好き」という告白。それらを受けて、自分がどんな人になりたいか、自分がいまするべきことは何なのかを、考え始めている。

「申し訳ありません。黒岩くんが好きです。教師としてではなく、黒岩くんが好きです」

聖もまた、変わった。こうしたい、という自分の気持ちが上手くとらえられず、目の前の相手を正しいと思い込んだり、相手に振り回されたりしてきた聖。
いまは、周りにわかってもらえなくても、嘘を吐きたくないと思っている。愛子に対して「約束します。黒岩くんの生活を妨げるようなことはしません。黒岩さんに、お許しをいただける日まで」と宣言をした聖は、うつむかず、愛子の目をしっかりと見ていた。

まずはお互いの家族と向き合うため、聖と晶はそれぞれの実家に帰る。聖が学校を辞める準備を進めながら、新しい仕事を探して暮らしているところに、勝太郎が現れた。
原口(吉田羊)にフラれた苛立ちと、聖と晶が同じ気持ちでいることへの苛立ちが、隠しきれない。

「あいつのせいで」と憎々しげに吐き捨て、勝太郎は全てを晶のせいにしようとする。晶から聖を引き離すため、海外赴任に「一緒に来いよ」と言い、聖の後ろから抱きつく。

1話で勝太郎がしたバックハグは、聖をコントロールしようとする気持ちがあったとはいえ、優しく頼りがいのあるものだった。聖も、そんな勝太郎に身を委ねようとしていた。同じ二人のバックハグなのに、今回のものはもはや暴力のよう。


聖と晶の思いが純粋であればあるほど、それに勝てない勝太郎は惨めな気持ちになる。以前、原口が指摘していた。ハイスペックである自分への驕り、頼りない女をコントロールしたい欲望、世間に「おかしい、狂ってる、馬鹿」と思われることは悪であるという固定観念。全てをぶつけたが、聖は静かにそれらをかわした。

「わかってもらえるなんて思ってない。もう帰るね」

以前だったら、流されたり対立したりして、そのまま丸め込まれていただろう。
あるいは、思っていることを言葉にできず、黙って悔し涙を流しながら立ち去ることしかできなかったかもしれない。以前と変わらない勝太郎を落ち着いてかわし、言うべきことを伝えた聖。優しいバックハグに守られていた聖から、すっかり変わっていた。

聖ちゃんに優しくできる自分


原口に見限られ、聖にかわされた勝太郎は、今度は晶の前に現れる。晶と一緒にいるせいで、聖がどんなにつらい思いをするかと説きに行ったのだ。
教師を続けたいと言っていた聖が、自分のせいで教師を諦めなければいけないと知り、晶は聖に電話をかける。

「もう、こういうのやめよう。じゃ」

聖はショックを受けるが、原口の助けもあり、晶と聖は再びお互いの気持ちを確認し合う時間を持つことができた。

「私も考えたの。どんな自分になりたいか。嘘のない、そのまんまの自分でいたい。何がどうなっても自分の責任だ、って受け入れたい。黒岩くんの隣にいたい」
「僕もです。先生の隣にいたいです、この先ずっと」

橋の上で話す二人を照らすのは、晶が好きな、嫌なことを溶かしてなくしてくれそうな夕日。夕日の前にいるとき、二人はいつも同じ思いでいられる。勝太郎のバックハグの意味が変わってしまったことに対して、聖と晶が夕日の中で感じている思いは1話から変わっていない。ずっと変わらない、まさに純愛。

中学生だった頃、晶は「聖ちゃんに優しくしたい」と言っていた。それが上手くできなくて、苛立っていたことが懐かしい。いまはもう、聖の人生を思いやり、聖に優しくすることができている。そのやり方が互いに間違っていても、二人はちゃんと話し合うことができる。晶は、3年前に思い描いた「なりたい自分」をひとつ叶えていた。

聖と晶が大人になる過程を描く


衝撃の連続「中学聖日記」暴力に見えたバックハグ、「一緒に居たい」願いは未成年者誘拐に今夜最終話
12月17日発売の、かわかみじゅんこ『中学聖日記』5巻(フィールコミックスFCswing)

今回、聖の母親・里美は聖を連れて晶の母親・愛子に謝罪をしに行った。原作では、里美と愛子が話し合うような場面はない。

原作よりも「母親」や「両親」の存在が色濃い。それは、ドラマ版『中学聖日記』が、恋愛をとおして世間を知り、親の気持ちを知り、そして親離れをして大人になる二人を描いているからだ。

思えば、聖の受け持っていたクラスにいた児童・彩乃(石田凛音)の母親・美和(村川絵梨)もそうだったのかもしれない。
実家にも、自分の過去の失敗にも、彩乃にも上手く向き合えなかった美和。彼女が支援を受けず一人でがんばらなければいけない結末は、美和を「母親(=大人)」と捉えると厳しすぎる。でも、美和がまだ独り立ちできていないこどものような存在だとすると、必要な経験とも言えるのかもしれない。向き合ったからこそ、離れる意思が生まれたのだと。

聖と晶も、向き合ったからこそ自分のやるべきことが明確になった。すぐに感情的になることや、オロオロすることがなくなった。大人になるということは、自分がどんな人生を歩むか意思を持つことなのだ。

原作コミックス最新刊(5巻)では、愛子がなぜ聖と晶の関係に強く反対するかの理由の片鱗が描かれている。ドラマ版とはまた違った理由で、それを知ると「晶を許してほしい」とは簡単に言えなくなってしまう。

ドラマでは、誰かの通報によって聖と晶に警察が声をかけてきた。「ずっと隣にいたい」という夢と、一緒にいれば「誘拐」と思われる可能性があるという現実。聖と晶は、大人として何をするべきと決断するのか。

原口が突然お手洗いに駆け込んだり、急にゆったりとしたワンピースを着ていたりと、もしかして妊娠……? と思うような様子だったことも気になる。
最終話は、今夜10時から放送予定だ。

(むらたえりか)

▽配信サイト
Amazonプライムビデオ(TBSオンデマンド)
Paravi

火曜ドラマ『中学聖日記』
TBS系にて、10月9日(火)スタート 毎週火曜よる10時から放送
出演:有村架純、岡田健史、町田啓太(劇団EXILE)、マキタスポーツ、夏木マリ、友近、吉田羊、夏川結衣、中山咲月
原作:かわかみじゅんこ『中学聖日記』(フィールコミックス/祥伝社)
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、坪井敏雄
主題歌:Uru「プロローグ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/chugakuseinikki_tbs/