「黒岩くん、どうしてここに?」
「じゃあ、先生はどうしてここにいるんですか」

11月20日(火)放送の火曜ドラマ『中学聖日記』(TBS系)第7話。
聖(有村架純)がいまでも教師として働いていることが、子星中学の卒業生たちの間で噂になっていた。
聖を好きだった晶(岡田健史)に聖の居場所を伝えるべきか、晶の彼女になったるな(小野莉奈)は迷う。しかし、晶は他の同級生から聖のことを聞き、聖の勤めている小学校を目指してすぐに走り出した。
有村架純「中学聖日記」彼女ブロック元カレブロック!それでも聖ちゃんに、先生に会いたい7話
イラスト/まつもとりえこ

やむにやまれぬ感情はジャッジできない


るなは5話で、聖について「男の先生だったらダメで、女の先生だったら良いなんてことないですよね」と言っていた。
晶の母・愛子(夏川結衣)は6話で、聖が教師を続けていることを知り「許せない」と声を震わせた。
元婚約者の勝太郎(町田啓太)は、晶と再会して「あのとき、彼を見て思ったのは、許せないって。もしまたあの二人が会って、やっぱりこの恋は本物だ、運命だなんて言われても、許せない」と憤る。
そして、聖の受け持つ児童・彩乃(石田凛音)の母・美和(村川絵梨)は、聖たち教師のせいで娘を実家に取られたと思い「許さない」と吐き捨てた。


聖は、周囲からこんなにも「許さない」と言われ恨まれている。仕事も婚約者も失った聖。それが「中学生と教師の淫行」に対する罰だった。社会的な面での制裁は受け、その後も、聖は過去を暴かれることを恐れ続けて生きている。

るな、勝太郎、愛子、美和が「許せない」と言っているのは、聖が淫行という倫理的に間違ったことをしたからではない。彼らの怒りは、それぞれに正当性はありつつも、もっと個人的な感情から生まれているものだ(美和だけは、晶との恋愛に関する怒りではないが)。


そのため、この先で描かれるのは個人的な感情の話になっていく。晶も言っていたが「もう18歳」なのだ。婚約者もおらず、担任教師でもなく、晶はるなと別れると言っている。条件だけを見れば恋愛しても良さそうな聖と晶。それでも、その二人の愛の成就を拒みたい気持ちは何なのか。

聖に対する「許せない」の理由は、大事なものを失ったことへの怒りだ。
るな、勝太郎、愛子、美和は、奪われたとすら思っているかもしれない。聖は、主体的に行動して奪ったわけではない。自分の知らないところで晶や野上(渡辺大)が動いていたり、やむにやまれぬ状況でそうなってしまったりしている。

原口「誰かを好きになるとき、正しいも間違ったもない。それが本物なのか、運命なのかもどうでも、何でもいい。ただ好きなの。
どうしようもないほど惹かれ合うの。それが恋」

原口(吉田羊)は、勝太郎の「許せない」という気持ちを「嫌いじゃない」と言いながらも、人を好きになることのやむにやまれなさを説く。人を好きになる気持ちだけでなく、誰かを許せないという気持ちも、ある意味やむにやまれないものだ。

そういう人間の感情のどうしようもない面を、誰がどのようにジャッジできるのか? と、本作は問いかける。人の感情については、良い悪いと断罪するのではなく、原口のように好きか嫌いかを表明することがフラットなジャッジの第一歩なのかもしれない。

続々と集まる感情、感情を言わない聖


「さっき、先生がここにいるって聞いて、ソッコー来ました」

「ソッコー来ました」という台詞が表す若さと衝動の力。
同級生の優(中田青渚)から聖の居場所を聞いた晶。るなたちにブロックされても勝太郎にブロックされても、聖に会いに来た。

聖は、迷子になっていた彩乃を助けた晶と再会してしまう。「僕、またここに来ても良いですか」、「僕、もう18です」と言う晶に、聖は「もう来ないで」と返す。児童や優しい先生たちとの穏やかな生活が、晶によって壊されるのを恐れたからだ。

晶もるなも、勝太郎、愛子、美和も、みんな聖への感情を表明している。
聖のもとに、続々と人間の感情が集まってくる。
なのに、晶の気持ちの表明に対し、聖はまた自分の気持ちではなく「大事な生徒たちがいる」という状況を伝える。3年前から変わっていない。聖がもっと感情を言葉にしてくれたら状況は変わるかもしれないのに、と思わずにいられない。

晶と会った翌朝、野上と交際することを選んだ聖。前の晩は晶と再会した聖を見て何かを察して去った野上だったが、聖が晶を吹っ切るために野上を選んだ可能性には気づいているだろうか。
そんな聖と野上の前に、愛子が現れた。8話は今夜放送。

(むらたえりか)

▽配信サイト
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火曜ドラマ『中学聖日記』
TBS系にて、10月9日(火)スタート 毎週火曜よる10時から放送
出演:有村架純、岡田健史、町田啓太(劇団EXILE)、マキタスポーツ、夏木マリ、友近、吉田羊、夏川結衣、中山咲月
原作:かわかみじゅんこ『中学聖日記』(フィールコミックス/祥伝社)
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、坪井敏雄
主題歌:Uru「プロローグ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/chugakuseinikki_tbs/