「私も同じ。あの日の、あのときのまま。
花火大会のあの海に、私も。どうしたら忘れられるの。黒岩くんが好き。好き」

12月4日(火)放送の火曜ドラマ『中学聖日記』(TBS系)第9話。
晶(岡田健史)を追って、聖(有村架純)は山江島行きのフェリーに乗り込んだ。13年間離れ離れになっていた父親に会おうとしていた晶と聖を乗せた船は、夜の海へと出港する。

「中学聖日記」有村架純告白「黒岩くんが好き」に岡田健史の耳は真っ赤、新人起用大正解9話
イラスト/まつもとりえこ

晶の父・島崎康介(岸谷五朗)は、山江島の材木店で家具を作って暮らしていた。康介と再会し、色々と聞きたいことがある様子の晶。しかし、母・愛子(夏川結衣)や下宿先に行き先を連絡していなかったために、愛子は上布(マキタスポーツ)だけでなく、九重(若林時英)ら同級生や勝太郎(町田啓太)に接触した。

同じ景色を見て、同じ気持ちになれる二人


本土と山江島を繋ぐフェリーは一日一便。乗った船にそのまま乗っていないと、その日のうちに本土に帰ることはできない。本土から離れた場所で、聖と晶はしがらみを少しだけ忘れられるひと時を過ごした。

康介の家に泊めてもらうことになり、聖は泊まる用意を買いに商店街へ行こうとする。
地図が読めない聖を見かねて、晶がついてくる。康介と仲の良い島民に自転車を借り、二人乗りをするシーンの美しいこと。

つらい恋愛、自転車の二人乗りで海辺を走るなどのシチュエーションが似ていることや、プロデューサーが同じことからドラマ『Nのために』(TBS系)を思い出すという視聴者の声もあった。新井順子プロデューサーは、インタビューで「おそらく、『Nのために』も話が辛いから、綺麗な映像を撮ろうと作っていったので、それで似ていると感じるのかもしれませんね。」と語っている(参考)。

「この時間が一番好きです。嫌なことがあっても、むしゃくしゃしても全部、溶けてなくなりそうな気がするから」

通りかかった岩場に差し込む光や、海岸で見る夕焼け。
出会った頃に同じ夕日を写真におさめたときのように、同じ風景を見てきれいだとか好きだとか感じる聖と晶。二人の心は、また近づこうとしていた。

しかし、晶が聖のために進学をやめようとしていることや、勝太郎から「下手すりゃ犯罪だぞ!」と怒鳴られたことで、聖はまた置いてきた現実に引き戻される。

「なんで連絡しないんだよ!」リンクする母と息子の気持ち


父に会いにいくことを、愛子に連絡していない晶。叱られるかと晶は身構えたが、康介は「まあ、いっか。こっちは13年待ったし、少しくらいなあ」と言った。教師の聖を好きであることも咎(とが)めない。
それを寛容さだと感じたのであろう晶は、心を許し、13年ぶりに会った康介に自分の気持ちを話す。

「母さんは、いいよもう。何言っても聞いてくれない。特に先生のことになると。父さんのことも、何も話してくれない。いつまでも俺のこと、こども扱いして。
だからもう何も期待しない。諦めた」
康介「だからだろう、お前がこどもだから、息子だから、守ったんだ。昔、俺がどんなに酷かったか、どれだけ最低だったか、愛子さん、お前には何も?」

康介には、仕事が上手くいかないときにイライラして、外で遊び歩き、酒を飲み、愛子を怒鳴りつけていた過去があった。愛子は、離婚したのは自分に好きな人ができたからだと晶に伝えていた。晶に父親がいないことの責任を全て自分が被り、康介を悪く言うことはなかった。

康介「いいか、晶。
本当に先生が好きなら、愛子さんにわかってもらえるように努力しろ。俺みたいに逃げるな。本当に先生が好きなら、立派な男になれ」

康介の寛容さや優しさは、自分が過去に間違いを犯しているからこそ得たものだ。取り返しのつかない過ちを経験した康介は、それでも生きていかなければいけないことや、簡単には許してもらえないことを知っている。そして、そんな自分をも愛子が守ってくれたことも。

康介のこの思いを晶がどう理解したのかは、10話以降を見てみないとわからない。やはり生徒と同じところには泊まれないと、聖は康介の家を出てキャンプ場のバンガローに向かった。途中で雨に降られ、道を間違え(地図が読めない聖、再び)、足を滑らせて谷に落ち怪我をしてしまう。

「なんで連絡しないんだよ! 心配させんなよ……」
「ごめんなさい」
「大丈夫……?」

探しに来た晶が、聖を叱った。でも、同じ頃に愛子もまた「なんで先生と? どうして連絡してこないの?」と上布に悲痛な思いをこぼしていた。大切な人から連絡がなく、どこにいるのかわからないことへの不安や恐怖、苦しさが、これで晶にもわかったのだろうか。
10話、そして最終話に向けて、少しでも愛子と晶、そして康介の心の距離が近づいてくれたらと思う。

岡田健史の「耳真っ赤」演技、新人起用の価値


雨の中、晶と聖は工事現場のプレハブ小屋で少し休むことにする。濡れそぼる聖を見て、晶が「俺だって、男ですよ」と言う。「こうなったのは、全部俺のせいだし」と続ける晶に、聖は自分の引き裂かれそうな胸の内を打ち明け、そして告白をした。

「私も同じ。あの日の、あのときのまま。花火大会のあの海に、私も。どうしたら忘れられるの。黒岩くんが好き。好き」

その言葉に引き寄せられるように晶が聖に近づいて抱きしめ、聖は晶の首に手を回し、そしてキスをする。

『中学聖日記』で、有村架純の相手役として新人俳優の岡田健史が起用されたことには、視聴者からもメディアからも賛否さまざまな意見が飛んでいた。このチャレンジの是非は、最終話まで見てみないとわからない。だが、このキスシーンを見たら、岡田の起用は大正解だったと確信した。

雨と風ですっかり身体が冷え、頬や鼻先も赤くなっている聖。晶も多少頬が赤らんでいたが、聖に比べると大丈夫そうだった。
しかし、「黒岩くんが好き」と言われてからキスまでの間に、晶の耳がものすごい勢いで真っ赤に染まっていった。嬉しさと、信じられなさと、聖に愛することを許された高揚と、そしてキスと。身体の底から押さえられない感情が湧き上がり、血管を駆け巡り、そして晶の耳を真っ赤に色づかせている。

岡田の演技は、共演者たちやメディアからよく「まっすぐ」と形容される。一生懸命で、小手先のテクニックがなくて、素直だということだろう。晶という役や目の前の聖に岡田がまっすぐに向き合い、そして、晶の気持ちと岡田の身体がリンクしたからこその、「耳真っ赤」だった。

9話かけ、3年かけて結ばれた喜びを、ここまで如実に身体に表しだすことができた。それは、岡田が新人であり見るものすべてを新鮮に受けとめていることや、まっすぐに役柄に向き合う人柄だったことの相乗効果だ。

最終話を前に、10話ではついに聖と愛子が本当の気持ちを話し合う。「守ります、この先ずっと」と言った晶は、その言葉を守れるのか。康介の思いを、どんな風に受け止めたのか。
(むらたえりか)

▽配信サイト
Amazonプライムビデオ(TBSオンデマンド)
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火曜ドラマ『中学聖日記』
TBS系にて、10月9日(火)スタート 毎週火曜よる10時から放送
出演:有村架純、岡田健史、町田啓太(劇団EXILE)、マキタスポーツ、夏木マリ、友近、吉田羊、夏川結衣、中山咲月
原作:かわかみじゅんこ『中学聖日記』(フィールコミックス/祥伝社)
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、坪井敏雄
主題歌:Uru「プロローグ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/chugakuseinikki_tbs/