人気VTuberグループのバーチャルライバー、“でろーん”こと樋口楓が明日、1月12日(土)にZepp Osaka Baysideで、初めてのソロライブ「Kaede Higuchi 1st Live “KANA-DERO”」を開催する。
公演日直前に実現したエキレビ!の樋口楓インタビュー後編では、ライブ当日に会場で発売される1stシングル『KANA-DERO』の収録曲や、ゲスト出演する月ノ美兎、静凛、えるとの関係性、今後の目標についても語ってもらった。
(前編はこちら)

歌うのがめちゃくちゃ辛かった『WISH!』
──前編に続いて、セットリストに入っていそうなオリジナル曲について、曲に対する思いや収録時のエピソードを教えて下さい。『MapleDancer』は、オリジナル曲の動画の中で最も再生数が多く、樋口さんを代表する曲にもなっていますね。
樋口 曲を作って下さったかずぺそさんには、すごく申し訳ないのですが、正直、動画を公開した時には、ここまで伸びるとは思っていませんでした(笑)。
──(1月6日現在)再生数が約53万回と、他の動画と比べても飛び抜けた数です。
樋口 たぶん、樋口楓自身のことを表わしている歌詞に加えて、「楓と美兎」の関係性を表わしているような歌詞も多いので、たくさんの方に聴いて頂けたのかなと思っています。
──月ノさんのファンも聴いてくれていると予想してるのですね。曲の印象も教えて下さい。
樋口 私の好きなギターのカッティングから始まり、そこにトランペットが入って来て歌が入るというところは、私のことを考えて作ってくださったんだなという気持ちが大きいです。あとは、私が初めてがなりを入れた曲でもあったので。「でろーん、こんなこともできるんだ」と気づいて下さった方が多い曲かもしれないですね。私も「がなれるんだ……」と、この時に初めて気づきました。
──ガッと下がる低音は、意識的に出しているのですね。
樋口 曲調からイメージしたというよりは、歌詞に漢字が多かったので、演歌っぽく歌ってみようかな、という遊び心がきっかけでした(笑)。

──「WISH!」は、12月20日の雑談配信(【樋口楓】お雑談をいたします!5)で、バンドメンバーとの練習動画も公開されました。疾走感あふれる「ザ青春」という印象の曲ですよね。
樋口 でも、『WISH!』は歌うのがめちゃくちゃ辛くて……。
──難しいとかではなく、辛かったのですか?
樋口 『奏でろ音楽!!!』の時に培った考察力を『WISH!』で駆使したら、歌詞の中に私の内面のことがけっこう書かれていることも読み取れて……。これをどう落とし込んで歌えば良いんだろう、みたいな感じになったんです。曲調はあんなにも明るいのに、歌詞は、樋口楓の光と闇の部分を表わしているような内容だったので。
──たしかに、切ない歌詞ですよね。その内容が刺さりすぎて、最初は歌うのが辛かった?
樋口 そうでしたね(笑)。本当に。あと、この曲はPVもすごかったです。「こんなところまで!」と思うくらい私の配信を観て下さっていることが伝わってきたし、PVを観て、「あ、こういう捉え方もあるんだ」ということをまた学びました。
──最初は歌うのが辛かった曲ということですが、ライブに向けての練習などで歌っていく中、その気持ちは変化していますか?
樋口 う〜ん……変わりますね、きっと。変わると思います。

樋口楓の曲として、すごく大きな宝石をいただいた
──「Kaede Higuchi 1st Live “KANA-DERO”」の会場では、1stシングル『KANA-DERO』も先行発売されます。ご自身のCDが発売されるということについての心境を教えて下さい。
樋口 インディーズのバンドさんが、自作のCDをライブの時に手売りしたりするじゃないですか? 私はああいう感覚だったんですよ。そうしたら、「樋口楓、1stシングル発売!」って感じでドーンと発表されていて。「こんな大々的にしてもらえるんや?」という驚きが大きかったです。出来上がったCDもまだ実物を見てないので、自分のCDのお皿が出来るという実感は無いというか、まだ夢のようですね。
──シングルの収録曲についても教えて下さい。3曲ともクロスフェード動画として公開されていますが、1曲目の『響鳴』は、大晦日のライブイベント「Count0」でフルバージョンを初披露していましたね。
樋口 さっき(前編で)バーチャルライバーを始めてから変わったことという質問もありましたが、以前から憧れていた『ラブライブ!』の声優さんたちに加えて、LiSAさんも憧れの対象になったこともそうで。最近は、買ってきたLiSAさんのライブBlu-rayをずっと観ています。だから、LiSAさんみたいな格好いい曲を作っていただきたい気持ちは漠然とありました。
──まさにLiSAさんの曲のように、アニメのオープニングにもなりそうな曲です。
樋口 私が「『うりゃおい!うりゃおい!』ってできる曲が良いです」とお願いしたら、この曲が出来上がってきたのですが、音域的にも、歌詞の意味的にも「これで問題ないですか?」という確認をたくさん取っていただいて。樋口楓の曲として、すごく大きな宝石をいただいたというか……宝物になりました。
──ファンはここでコールするしかないという感じのフレーズがありますよね。
樋口 私も歌っていて楽しいので、早くライブで歌いたいですね。ライブの盛り上げ方とかも、けっこうLiSAさんリスペクトなところがあるのかなと思います。
──ちなみに、LiSAさんが好きになったきっかけはあるのですか?
樋口 『ラブライブ!』はアイドル寄りですが、LiSAさんは完全にロックとかパンク系のアーティストさんだと私は感じていて。にじさんじというグループでライブに出るのだったら、アイドル路線でも良いけれど、私個人の場合、自分がアイドル寄りの人間でないってことは生まれた時から分かっていたので。
──生まれた時から(笑)。でも、たしかに、樋口さんのパワフルかつキレのある歌声は、LiSAさんと重なるところがあると思います。2曲目の『Brand-New LIVE』は、コラボ配信もしたことがある作曲VTuberミディさんの曲ですね。
樋口 ミディさんが『ハイカラ浪漫』という曲を公開された時、すごく歌ってみたいと思って。ミディさんにお願いして、私はVTuberデビューしてから間もない頃にミックス講座をしていただき、その際に『ハイカラ浪漫』を歌わせていただいたりしたんです。その時から、「いつかミディさんにも私の曲を作っていただきたいな」とは思っていました。それでお願いしたら、『ハイカラ浪漫』を作詞された石川慧さんも一緒に今回楽曲制作チームとして参加して下さったんです。(最初に)「どういう曲にしたい?」と聞かれた時、「アニメで流れていそうな爽やかで明るい感じで」とお願いして。「ちょっとラップぽいのが入ってたら良いなあ」ということもボソッと言ったら、それも組み込んで下さったので、ラップにも注目していただきたいです。あと、この曲でもトランペットを吹かせてもらいました。

──3曲目の『楓色の日々、染まる季節』は、『MapleDancer』のかずぺそさんの曲ですね。
樋口 私、シングルを作ってもらえるという話になった時に以前から曲を作って欲しかったミディさんにお願いしたいと考えたんです。でも、にじさんじのスタッフさんが「(他にも)希望される方がいらっしゃるのであれば、お願いすることはできますよ」と言って下さって。そんな機会をいただけるのなら、ぜひ、ということでお願いしました。
──曲や詞について何かリクエストはしたのですか?
樋口 かずぺそさんは、ギターの音作りがすごく上手い方なので、しっとりした、でも少しキャッチーなフレーズのある曲をお願いします、と伝えました。
今の私がいるのも、この3人たちがいてくれたおかげ
──ライブ当日は、数多くのゲーム音楽などを生みだしてきた「KLab Sound Team」のメンバーが5人組のバンド「Deroon5」として生演奏を披露するそうですね。生バンドとのライブも、樋口さんからのリクエストだったのですか?
樋口 最初は音源を流して、私は生で歌うというライブを想像していたので、「まさか生バンドになるとは!」という感じです。「生バンドが入ってくれることになりました」と聞いた瞬間に「あ、LiSAさんのライブ動画をもっと観て勉強せな!」と思いました(笑)。「KLab Sound Team」の皆さんのお力で、Zepp Osaka Baysideという会場に合ったライブになると思います。
──ライブには、同じにじさんじ1期生出身の月ノ美兎さん、静凛さん、えるさんもゲスト出演します。ゲストの人選も樋口さんが?
樋口 ゲストを誰にお願いするかについては、けっこう迷ったんです。
──3人とも定期的にコラボをしていて、特に仲が良さそうな顔ぶれなので、迷ったことが意外です。
樋口 にじさんじの中にも、歌をたくさん歌っているライバーさんがいるので。その人たちと歌った方が良いのかな、という思いもあったんです。でも、今の私がいるのも、この3人を始めとした1期生出身のメンバーがいてくれたおかげなので。1stライブだし、やっぱり、この3人に出て欲しいなと思ってお願いしました。

──月ノさんとえるさんはすでに練習にも参加されているそうですね。練習中の印象的なエピソードがあれば教えて下さい。
樋口 美兎ちゃんは、さすがいろいろな大舞台を経験しているだけあって、「KLab Sound Team」の皆さんともすぐに馴染んで。「もう一度、ここが歌いたいです」みたいなことも自分からお願いしていたんです。でも、えるちゃんは……けっこう緊張してましたね。あはははは(笑)。
──初めての相手とコラボする時に見せる、人見知りの「借りて来たエルフ」状態になっていましたか(笑)。
樋口 なってました(笑)。でも、二人はゲストパートのところだけ練習する予定だったんですけど。えるちゃんはゲストパートが終わった後も「でろーんちゃんのソロの練習も聴いて良いですか?」と言ってくれて。ずっと練習室に一緒にいてくれました。
──練習やライブ当日なども含めて、親しい仲間が一緒にいてくれることは、樋口さんご自身にとっても嬉しいことなのでは?
樋口 本当にすごく心強いです! もし一人だったら、ライブ前はずっとトイレにこもっていると思います(笑)。私、「超会議」の時も本番の直前までずっとトイレにこもっていて……。
──2018年4月に開催された「ニコニコ超会議2018」の「超バーチャルYouTu"BAR"」という企画で、初めてファンの一人一人と会話をした時のことですね。
樋口 控え室でも座ったまま固まっていたら、凜先輩が肩をポンポンと叩いて下さって。それで緊張がほぐれたんです。今回も、この3人が一緒にいてくれて、本当に良かったなと思います。
ライブを観て下さった方に、1月12日を忘れないで欲しい
──ライブのチケットはすでに完売していて、大勢のファンの方が、樋口さんの1stライブを楽しみにしていると思います。本番も間近ですが、実感は湧いてきましたか?
樋口 まさかチケットが売り切れるとは全然思っていなくて。期待して下さっている方がこんなにもいるのだと思うと緊張感が高まりました。実感については、先ほど(前編)もお話ししましたが、キズナアイさんのライブを観て、キュッと引き締まったというか。「私もここに立つんだ」という感覚を味わったことがすごく大きくて。それまではずっと「楽しみ、楽しみ!」という気持ちばかりだったんですけれど。年が明けた頃からは、「もう始まる! 煮詰めなあかん!」という気持ちでいっぱいですね(笑)。
──ニコニコ生放送での配信を観られるネットチケットは現在も発売中ですが、気になっているけれど、まだチケットを買ってはいないという人たちに向けてのメッセージをお願いします。
樋口 私がライバーを始めてから、ずっと思ってきたのは、たくさんの人と一緒に何かを楽しみたいということなので。1stライブという同じ時間を共有して、一緒に楽しんでいただきたいのが一番大きな気持ちです。VTuberのライブに、まだ抵抗のある方もいらっしゃるとは思うのですが。生バンドでのライブですし、私は2.5次元から3次元の間の存在……ほぼ3次元寄りの人だと思ってもらえれば良いので。バーチャルとかリアルとかは関係無く、そのステージには一人の“樋口楓”が立っているんだよ、という認識で観ていただけたら、違和感のある方にも、すっとライブの世界に入っていただけるんじゃないかなと思っています。
──1月12日を、樋口さん自身にとってどんな日にしたいですか?
樋口 その1日を皆さんに楽しんでいただきたいです。
──自分が楽しむよりも、まずは皆さんに楽しんで欲しいのですね。
樋口 そうですね。ライブを観て下さった方たちに良い思い出を抱いて帰っていただきたいというか……。1月12日を忘れないで欲しいという気持ちです。
──では、最後の質問になりますが、1stライブから始まる2019年をどんな年にしたいですか?
樋口 他の媒体さんで同じ質問をしていただいた時は、「にじさんじが続きますように」としか言ってないんですけれど(笑)。にじさんじのスタッフさんに「それよりも、1年後、2年後、5年後、10年後、樋口さん自身が何をしていたいか考えた方が良いよ。その方が、目標に向かって進めんでいけるから」というアドバイスをいただいて。私は基本的にマイナス思考なのですが、「あ、目標に向かって頑張れる時間が1年、2年とあるんだ」とも考えるようになりました。だから、私はこの1年で、2回目のライブに繋がるような配信活動や音楽活動ができたらな、と思っています。
──バーチャルライバーとしての活動の中で、「音楽」がそれだけ大きな存在になっているのですね。
樋口 はい。「音楽活動と言えば、でろーん」と思っていただきたいなって。
(丸本大輔)
≪開催概要≫
「Kaede Higuchi 1st Live “KANA-DERO”」
【日程】 2019年1月12日(土)
【開場】 16:00
【開演】 17:00
【会場】 Zepp Osaka Bayside
【出演】 樋口楓
【ゲスト】 月ノ美兎、静凛、える
【バンド】 Deroon5(KLab Sound Team)
【ネットチケット販売中】
https://secure.live.nicovideo.jp/event/KANA-DERO