
――【H!dE】インタビュー前編より
自分で考えてきた正解というものが本当に正解なのか
──「星の相合傘」はテーマ的にも今までのH!dEさんにはなかったタイプの曲だと思いました。「Pinky Ring」の方が“左の指輪を今夜だけ外してきなよ”って(笑)。
H!dE:そう、そうなんです(笑)。これは略奪愛みたいな、今までだったら絶対書けないだろうみたいなテーマの曲で。ただ略奪愛と言ってもドロドロしたものではなく、純愛のなかでの略奪愛というか。そのあたりに、今までのH!dEらしさも残っている歌詞になっていると思います。
──これまではどちらかというと少年性が必ず歌詞のどこかにあっったような気がしたのですが、この曲は少年性というより大人の男性なので。
H!dE:そうですね。今まで曲の物語はアニメと連動していたので、アニメの主人公も僕のなかに入り込んで歌っていたところがあったんですね。でもこの曲では自分が主人公になったつもりで歌っているので、歌う上でもそんなに抵抗はなかったです。と言っても僕もまぁ、けっこう大人なので(笑)。正直、略奪愛というテーマには、最初は多少引っかかるところもありましたけど、歌ってみるとすんなり入ってきて。新しいものができたのかなって思いますね。
──「星の相合傘」を筆頭に、曲の主人公像が今回はかなり変化していますね。
H!dE:「ハッピーエンド」もそうですけど、“うたものがたり”の括りがないぶん、どちかというと主観で書かせてもらった曲が多いので。これまではどうしても物語の性質上、好青年にしてしまうところがありましたけど、それが僕の主観に変わったことで綺麗にまとめなくてもいい、遊び心もあっていい、というものになっていますね。だから自分のストレートな想いっていうのがバランスよくアルバムに詰め込めたかなと思います。
──だからなんでしょうね、聴いた印象がだいぶ違うのは。
H!dE:1曲目から「おっ!」ってなる、今までと全く違うサウンドの曲も多いので。そういう効果もあるから、例えば「君らしさ」みたいに今までのH!dEテイストに一番近いスタイルの曲でも、新鮮な感じに聴いてもらえるんじゃないかなって。
──今回はボーカルも、これまでとかなり違っていませんか?
H!dE:今までは優しく歌うことを意識していたんですけど、「星の相合傘」「最後のキス」とかは、大人な感じの新しいH!dEが歌い方にも出ていると思っています。あと「この先のものがたり」は優しく優しくウィスパーで歌わせてもらいました。

──「この先のものがたり」は作詞作曲に関わらない、歌手H!dEという曲でもありますね。
H!dE:そうですね、これはこれで新鮮で。自分が作った曲と違って、どういう想いで書かれたのかを読み取って歌うのは、またちょっと感覚的に違うものがありました。なんかカバー曲に通じる面白さがあるというか。難しさもありましたけど、そこを乗り越えていいものができたので、すごく勉強になりましたね。あと今回は全体的にキーが高めで。いつもより2個くらい高くなってるんですよ。
──それはどうでしたか? 歌うのは難しかったですか?
H!dE:歌いこなすのは難しかったですね。でもそこは曲の良さを大事にチャレンジして、すごく試行錯誤してレコーディングしました。でもそれも僕の声を客観的に見て「声のここがいい」ということだったので、挑戦する意味があったというか。自分の声の新しい魅力を引き出してくれたというか。ただキーもそうですけど、今回は自分で考えてきた正解というものが本当に正解なのか、それを考え直してみようというのが一番のテーマだったので。自分では100点だと思っていたことが、他の人が入ることで120点になるなら、自分の100点を超えられるならと、ずっと思っていたので。
──戸惑ったり苦労することはあったけれども。
H!dE:挑戦してみてよかったです。でもそれもタイミングもあったと思います。1年前だったら、自分の100点を押し通していたかもしれないですし。
──実際どうですか、120点のところに行けました?
H!dE:僕のなかでは、新しいH!dEを作り出せたと思っています。なので今までのH!dEを応援してくれた方はもちろん、今までH!dEの曲を好きだと思わなかった人たちにも届くものができたんじゃないかなって。
──そういうアルバムを携えて3月にはツアーも始まりますね。
H!dE:7ヵ所まわらせてもらいます。そしてその先には地元倉敷の倉敷市芸文館でのコンサートがあって。昨年、西日本の豪雨があったとき、自分でも倉敷に何か力になれることはないかと思い立って、このコンサートを決めたんです。僕にとっては大きな挑戦になる会場なんですけど、だからこそ成功させたいと思っています。
――【H!dE】並んでまで買うことをしてこなかったH!dEが並んでまで買うハマりもの/マイ旬