咲田「あの、みかんさん、本当につらい思いをさせてしまって申し訳ありませんでした」
みかん「つらいっていうか、悔しかった。うちらみたいな立場じゃ、泣き寝入りしかできないんだって。
うちらって、お天道様の下歩いちゃいけないのかな。そんなに悪いことしてるのかな……」

1月25日(金)深夜放送のドラマ24『フルーツ宅配便』(テレビ東京)第3話。

地方都市のデリバリーヘルス「フルーツ宅配便」で、咲田(濱田岳)は店長見習いとして働いている。咲田が取った、レギュラー出勤の人気嬢・みかん(徳永えり)を指名する客の電話。その客は、デリヘル嬢とのプレイを無理やり動画で撮影し、インターネットに流して金を稼いでいる二人組の男たちだった。
「フルーツ宅配便」犯罪に巻き込まれるシングルマザーデリヘル嬢。食も性も暴力も「普通のことだよ」3話
鈴木良雄『フルーツ宅配便』3巻(小学館・ビッグコミックス)

原作は、鈴木良雄の描く同名漫画だ。


犯罪に巻き込まれる風俗嬢・みかん


シングルマザーのみかんは、息子・諒(高橋曽良)のために新しくこども部屋のある部屋を借りようとしていた。しかし、契約する日になって大家から断られてしまう。

不動産屋「お客さん、仕事『接客業』って書いてあるけど『風俗業』ですよねえ」

みかんの仕事を、大家が調べたのだという。風俗業だって接客業じゃん。でも、水商売の女が嫌いだという大家には通じない。

不動産屋「大家さん、女性なんだけど、嫌ってるんですよ。風俗嬢って男とっかえひっかえ連れ込んだり、犯罪に絡んでそうだって」

他の女の子たちの前でNGにしたい客の名前を口にするなど、みかんはムカつくことはムカつくと臆することなく言う性格だ。
でも、自分の仕事を理由に入居を断られたことは、誰にも明かせない。

デリヘル嬢を呼んでは無理矢理動画を撮影してインターネットにアップしている城田(野中隆光)も、仕事を理由にみかんを脅した。

みかん「こんなことして、どうなるかわかってんの?」
城田「訴える? いいよ、別に。裁判になったら、あんたがデリヘルで働いてること公になるけど、いいんだ? 全部バレて。息子にも内緒なんでしょ? デリヘル嬢なんだから、黙ってヤラれりゃいいんだよ」

みかんは何も言えなくなる。大家は風俗嬢のことを「犯罪に絡んでそう」と言ったけれど、絡んでいるのではない。
逃げ場のない風俗嬢たちはこうして追い込まれ、犯罪に“巻き込まれて”いる。

流れるような食事シーンと、引っかりのあるマサカネの咀嚼音


『フルーツ宅配便』は、誰かが何かを食べるシーンがよく出てくる。

席につきテーブルを囲んで食事する、という改まった場よりも、立ったままクラッカーにソースをかけたり、おにぎりやアイスなど、食べ物を持ったまま歩き回ったりするようなシーンが多い。

エンディングでは、咲田、ミスジ(松尾スズキ)、マサカネ(荒川良々)、みず子(原扶貴子)が手巻き寿司をしている様子が描かれている。そこでもミスジとマサカネは立ち上がったままだし、なんなら途中で全員が立って歩き回る。

1話でのミスジの「こんな話、ここじゃ誰も驚かない。
この世界じゃ普通のことだよ」という台詞を思い出す。食事の風景もプレイや暴力の現場も、ことさらに改まって強調して描くことはない。食も性も暴力も「普通のことだよ」と白石和彌監督に言われた気がしてしまう。

「うっ……」となった瞬間があった。城田に脅され、何も言えなくなったみかん。城田が「今日オプションで即尺頼んでっから。
早くしてくれよ。早く!」と声を荒らげる。次の瞬間、むっちゃむっちゃと咀嚼音を立てておにぎりを食べるマサカネの顔が現れる。

即尺とは風俗店のサービスのひとつで、部屋に入ってすぐ、シャワーも浴びずにフェラチオをすること。「早く!」と叫ばれたあと、きっと無理矢理即尺をさせられただろう。マサカネの唾液が絡む音の奥に、みかんのつらそうな姿を想像してしまった。
そんな姿はどこにも描かれてないのに。

第4話は、ギャル系のデリヘル嬢・イチゴ(山下リオ)がフィーチャーされる。また、咲田の同級生・えみ(仲里依紗)が風俗嬢であることが、徐々に明らかになっていく。

前回はスーツ姿だったのでわからなかったが、咲田とえみの同級生・小田ちん(前野朋哉)の私服がぶっ飛んでいる。宇宙と地球の(そしておそらく右の腹あたりに猫か何かがいる)全面柄Tシャツに、黒い革ジャン。小田ちんも、まだひと癖もふた癖も隠し持っていそうだ。

(むらたえりか)

▼配信サイト
Amazonプライムビデオ(テレビ東京オンデマンド)
ひかりTV(テレビ東京オンデマンド)
TVer

ドラマ24『フルーツ宅配便』(テレビ東京)
毎週金曜 深夜0時12分から放送
出演 濱田岳、仲里依紗、前野朋哉、徳永えり、山下リオ、北原里英、原扶貴子、荒川良々松尾スズキ、ほか
原作 鈴木良雄『フルーツ宅配便』(小学館・ビッグコミックス)
脚本 根本ノンジ
監督 白石和彌、沖田修一、是安祐
楽曲制作 高田漣 
主題歌 EGO-WRAPPIN’「裸足の果実」(NOFRAMES / TOY’S FACTORY)
エンディングテーマ 超特急「ソレイユ」(SDR)
チーフプロデューサー 浅野太(テレビ東京)
プロデューサー 濱谷晃一(テレビ東京)、木下真梨子(テレビ東京)、赤城聡(フラミンゴ)、押田興将(オフィス・シロウズ) 
制作 テレビ東京 オフィス・シロウズ
製作著作 「フルーツ宅配便」製作委員会

※「高橋曽良」の「高」は正式には「はしごだか」