2月7日に『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)の第4話が放送された。

このドラマは、基本的に一話完結。
それでいて微妙に毎話つながっている。その積み重ねが、終盤で窮地に陥るであろう的場中(杉咲花/以下、アタル)を救うことになると思う。

アタルに救われた者が救いの手を差し伸べる


今回の主役は、制作Dチームのベテラン社員・上野誠治(小澤征悦)だ。話の展開はいつも通り。上野にフォーカスし、彼の内面にある苦悩や問題をあぶり出していく。

上野を指名した仕事がDチームに舞い込んだ。依頼主は上野と一緒に“伝説のイベント”を手がけた人物。
新しい携帯サービス会社を立ち上げるにあたり、お披露目イベントの演出を上野に任せたいというのだ。
俄然、張り切る上野。“伝説のイベント”のときのスタッフを10年ぶりに招集し、今回のオファーを成功に導こうと意気込んでいる。何しろ、“伝説のイベント”のスタッフジャンパーを引っ張り出してこれ見よがしに着ているのだから。

しかし、10年前の仲間は集まらなかった。そして、上野が徹夜で書き上げた企画書はボツになった。
上野を指名してきたクライアントから「体裁を変えてるけど10年前にやったことの焼き直しにしか見えない」と全否定されてしまったのだ。
頭に血が上った上野はDチーム全員に向かって暴言を吐きまくった。部長の代々木匠(及川光博)には「あんたのこと上司と認めてないから」、大崎結(板谷由夏)には「お前のリーダーシップのなさがチームを苦しめてる」、田端友代(野波麻帆)には「残業しないでチームの一体感を壊している」、目黒円(間宮祥太朗)には「仕事が低レベル」、神田和実(志田未来)には「妊娠してるからイチイチ気を遣わなきゃなんねえ」、品川一真(志尊淳)には「俺のことをうぜえと思ってるだけ」。極めつけは、全員に向かって「なんでおめえらみたいな奴らと働かなきゃなんねえんだよ。俺はもっと優秀なスタッフと仕事がしてえんだよ!」と吐き捨てる始末。

自暴自棄になり居酒屋で酒に溺れる上野を、神田、目黒、品川、アタルが迎えにきた。
アタルに占ってもらうことで上野を立ち直らせる目的だ。でも、上野はヤケになっている。
「うるせーな。俺は『助けてくれ』って言葉が一番嫌いなんだよ!」(上野)

このドラマは、前の回でアタルに救われた者がキーマンになる。そのときの主役に“きっかけ”を与える役割を担う。
「後悔してもいいのかよ、ジジイ! たまには誰かを頼ってもいいんじゃないですか!?」(品川)
虚勢を張り周囲に助けを求められない上野に、品川は助け舟を出した。

「ハケン占い師アタル」小澤征悦の変化とリンクする弟子・志尊淳の成長。それは杉咲花の救いに繋がる4話
イラスト/Morimori no moRi

師(上野)と弟子(品川)の成長がリンクする


アタルが上野に授けた助言に特別なものはなかった。至極普遍的な内容だ。

Q:なぜ、俺は周りの奴らから嫌われる? 俺は良かれと思ってあえて厳しいことを言ってるつもりなのに……
A:本当は仕事に行き詰まって自信なくしてるのを誰にも知られたくないから、つい声がでかくなって人を攻撃してしまうんだよ。人のこと説教してる暇あったら、もっと自分を磨こうよ!

Q:俺はまた“伝説のイベント”をやることができるのか? 俺にまだ才能は残っているのか?
A:自分の成功例をひけらかして、みんなに「凄い!」って言われたいだけでしょ? “伝説のイベント”で、あんたはいい顔してた。「たくさんの人を喜ばせたい」っていう情熱とやる気に溢れてた。あんたが失ったのは才能じゃなくて、そのときの気持ちじゃないの!? 過去の栄光をいつまでも追ってないで、今残ってるものを大事にしようよ! あんたのこと心配してくれる人が周りにいるじゃない!

アタルに占われた上野は、Dチーム全員に自分のことをどう思っているか尋ねた。

「これからはみんなの意見ちゃんと聞いて、直すべきところはちゃんと直したいんで」(上野)
「声と態度がでかい」「難しい英語を使うのやめてほしい」「コーヒーを自分で淹れてほしい」「自分がいつも正しいという自信満々な態度をやめてほしい」など全ての声を受け入れ、変わろうとする上野。

でも、品川がまだ何も言っていない。上野の下に付き、パワハラまがいの扱いを受けて衝突した過去が品川にはある。
「今までの上野さんが全く変わっちゃうのは嫌です。上野さんは厳しいけど言ってることは正しいし、逆に上野さんが本当に伝えたいこと、俺が全然わかってなかったな……って」(品川)

上野のいいところを最も見ていたのは、意外にも品川だった。彼は上野を素直に受け止められるほど成長していた。
仕事中にインスタをチラ見していた頃とは大違い……。第3話で始まった品川回は、まだ終わってない。彼の成長記は、今回と地続きだ。変わろうとする上野がいて「全く変わっちゃうのは嫌」という品川がいる。品川と上野、2つのエピソードで一つの話になっていた。
各人の成長や関係性の好転がこのドラマでは起こる。基本は一話完結だが、流れと並走してこそ見える事実が今作には多い。回が進むにつれ、バラバラだったDチームが少しずつまとまりかけていくのだ。

アタルが母のキズナ(若村麻由美)と複雑な関係にあることは明らかである。娘を連れ戻したい(利用したい?)キズナと、“天才占い少女”と持て囃されていた頃(利用されていた頃?)に戻りたくないアタル。母と娘は緊張関係にある。「内容がパターン化している」と言われがちな今作だが、Dチーム(代々木を含む)全員を占ってからガラッと変わる気がしている。

Dチームが一つになろうとしている事実は、アタルを救う状況に繋がっている。神田が“初めての友だち”だったのに、Dチームを占うことでアタルは仲間を増やしている。もし危機に瀕しても、もう孤軍奮闘じゃない。
アタルが危機に瀕した場合、彼女を助けるのは一つにまとまった後のDチームであってほしい。「自分だけで仕事ができる人間なんてこの世に1人もいない」と上野に助言していたアタル。その言葉通り、仲間に救われるときが彼女にもきっと来るはずだ。
(寺西ジャジューカ)

木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』
脚本:遊川和彦
主題歌:JUJU「ミライ」(Sony Music Associated Records)
音楽:平井真美子
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、山川秀樹(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)、田上リサ(5年D組)
演出:遊川和彦、日暮謙(5年D組)、伊藤彰記(5年D組)
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
※各話、放送後にビデオパスにて配信中