「メゾン・ド・ポリス」は、夏目惣一郎(西島秀俊)、伊達有嗣(近藤正臣)、迫田保(角野卓造)、藤堂雅人(野口五郎)、高平厚彦(小日向文世)という退職警察官だけが住むシェアハウス「メゾン・ド・ポリス」の住人に振り回されながら、新米刑事の牧野ひより(高畑充希)が難事件に挑む刑事ドラマ。

大黒が無能すぎる
自殺で片付けられたひよりの父・牧野尚人(水橋研二)、市野沢譲(税所伊久麿)、池原慎吾(関幸治)、高遠建設に勤めていた3人が不審死を遂げた過去の事件。メゾン・ド・ポリスのメンバーは、高遠建設常務取締役のラスボス・野間(佐野史郎)にバラバラにされてしまっていた。
前話で野間は、伊達を相手にチェスに例えて、戦略を皮肉たっぷりに解説していた。警察に追われる夏目、若林(笠松将)殺しの容疑で拘置所に入る迫田、娘の件で脅された高平、薬品の爆発で入院する藤堂、自宅謹慎を命じられたひより、幾重にも重ねられた策で、シェアハウスの“キング”と思われる伊達のコマたちを封じていた。しかし、肝心の野間のコマ、青戸組のフロント企業・青幸興行社長の大黒(中野英雄)の脇がめちゃめちゃ甘い。
警察に追われながらも夏目は、青戸組のチンピラをボコボコにして大黒に迫る。「刑事じゃないからなんでもできるんだよ」と強引な手口で若林殺しの証拠品となる大黒の靴を奪おうとする。しかし、マッサージを受けていた大黒は、警察に内通者がいるのをいいことに、余裕しゃくしゃくで夏目の蛮行を無視。警察に一本電話を入れるも、夏目は警察の鑑識ではなく、シェアハウスの鑑識役・藤堂に届ける。野間のコマ・大黒が無能すぎる。
伊達の「みんな久しぶりに燃えている」というセリフ通り、夏目以外のシェアハウスメンバーも、持ち味を発揮。迫田は人たらしスキルで拘置所にいながら警察の新木(戸田昌宏)と原田(木村了)を懐柔。
予定調和と予測不能
ラストで野間は、シェアハウス内でメンバーたちを結束バンドで拘束。絶体絶命なシーンに、警察人事一課でシェアハウスの三河屋・草介(竜星涼)「コンチャース。極上SIT一個小隊お持ちしました」と突入する。このシーンの伏線が、予定調和と予測不能のバランスが気持ちいい。
バラバラになったシェアハウスのメンバーが、再集結し始めた家を直すシーン。ひよりがシェアハウスに仕込まれた盗聴器を外さない理由を、「情報を共有するため」と草介に伝えた。このひよりのセリフは、完全に予定調和。のちに盗聴器が生きてくるのはバレバレだ。だが、草介が盗聴する場面は必要以上に細かく差し込まれていたし、おそらくわざとバレバレに演出したのだろう。
草介という見た目も良くて笑顔がかわいい愛されキャラがスパイ。この時点で視聴者としては、「実は味方だった」というオチが欲しい。これは予想ではなく、願望だ。最後に一緒に笑って欲しいに決まってる。
そんな草介がいない状態でシェアハウスメンバーがピンチに陥る。これが「どうせ草介が助けにくるんでしょ?」ではなくて、「早く来てくれ草介〜」になる。予想通り助けに来たら、「待ってました!!」となるのだ。こんなのめっちゃ気持ちいい。草介が愛されている前提での、あえてのバレバレな伏線なのだ。
そんなバレバレにちょっとした予想外の伏線が絡まってまた気持ちいい。家を直すシーンでは、草介が三河屋として大工道具を持ってきていた。もはや何でも屋として活躍する草介に、どこまで状況を知ってか、高平は「拳銃とかないの?」と質問していた。
これがラストの美味しいところで「チャース。極上SIT一個小隊お持ちしました」に繋がる。拳銃からSITという遊び心が、予想通りの展開に味付けをする。さらに、その拳銃が「射撃の腕が超一流」と言い張る高平のおいしい見せ場までプレゼントしていた。
1話から二転三転する展開が見どころとなっていたが、“おじさんだらけのシェアハウス”というほのぼのした雰囲気の設定には、やっぱり、大どんでん返しや予測不能な展開よりも、予想をちょっと上回るラストが一番楽しい。
(沢野奈津夫)
「メゾン・ド・ポリス」
金曜 22:00〜21:54 TBS系
キャスト:高畑充希、西島秀俊、近藤正臣、角野卓造、野口五郎、小日向文世、西田尚美など
原作:加藤実秋「メゾン・ド・ポリス」シリーズ
脚本:黒岩 勉
演出:佐藤祐市、城宝秀則
主題歌:WANIMA「アゲイン」