デリバリーヘルス店「フルーツ宅配便」の店長・咲田(濱田岳)は、中学の同級生で友人のえみ(仲里依紗)を悪徳店から引き抜いた。グレープフルーツという源氏名で働き始めたえみは、待機室でスモモ(阿部純子)の悩みを聞いてしまう。スモモは客と店を通さずにデートをし、そしてその客のこどもを妊娠してしまったかもしれないという。

クソ客をドッキリで成敗。安定のミスジさんクオリティ
う、上手い……! と身を乗り出して見てしまった。ふたつ、身を乗り出しポイントがあった。
ひとつは、11話のスモモのエピソードがまるまる「次回の最終話を盛り上げる加速装置」となっていたことだ。
客・野川(山本浩司)のこどもを妊娠したかもしれないスモモ。店外デートをした自分が悪い、風俗嬢の言うことなんて誰も信じてくれないと言う。えみに頼まれ、咲田が一緒になって野川の勤め先までは突き止めるが、それ以上は何もできない。
咲田「ちゃんとした会社じゃない」
咲田の言うとおり、野川はちゃんとした会社で働いている。
仕事中の野川に直談判しにいったスモモは、後日、弁護士を呼んだ野川にDNA鑑定を請求される。「風俗嬢の言うこと、信じられると思う?」と、薄笑いを浮かべ余裕の野川。信じた男に疑われたことと、社会的信用のない自分の立場に打ちのめされ、何も言えなくなるスモモの表情。
これはもう、ミスジ(松尾スズキ)に出てきてもらうしかない。成敗してもらいたい。そう期待させたところで、ちゃんとミスジが出てくる。女の子を守るため、いつも最後はミスジがなんとかしてくれていた。
今回もそうだ。
血まみれのスモモには一瞬ハラハラした。でも、お腹が大きくなっていた。これはギャグか夢だなと、遊び心にホッとする。
最後は、みんなでミスジと一緒に鍋を囲み大団円。フルーツ宅配便の、ある意味で“お決まりのパターン”を今話でしっかりとおさらいした。だからこそ、次回最終話で「ミスジがいない」という事の重大さが鮮明になる。
えみの借金を債務整理で2,000万円から200万円に減らしたうえ、業界のタブーである引き抜きを許可したミスジ。えみが前に働いていた店のオーナー・沢田(田中哲司)が警察にフルーツ宅配便を摘発させる。ミスジ不在で、店の一番の責任者となった咲田。

えみ「ありがとうね。フルーツ宅配便に連れてきてくれて」
もうひとつ良かったのは、フルーツ宅配便におけるえみの存在の描き方だ。
元々働いていた店でも、えみは周りの女の子たちに気を配り、必要なときは助け舟を出していた。フルーツ宅配便でも、スモモのトラブルにいち早く気づいたのはえみだった。
実際の風俗店でも、店のスタッフには言えないトラブルや悩みを同僚の女の子が聞いていたり、気づいたりということはある。最近では、トラブルに早く対処するため、カウンセラーや相談役として女性スタッフを雇う店も増えてきている(本作でも、スモモを婦人科に連れて行ったみず子が似た役を担っている)。
店長と従業員というだけでなく、友達同士としての関係もある。だから、えみがいることで咲田の行動に幅やスピード感が生まれる。咲田や物語をどんどん進める推進力として、えみが存在している。
悪徳店で働いていたときから、他の人に気を配れるえみのパーソナリティは変わらない。脚本も演出も、もちろん演じている仲里依紗も、えみの人生の連続性を大切にしている。
えみの優しさは、悪徳店では裏目に出てしまい他の女の子を追い詰めてしまった。でも、フルーツ宅配便なら誰かを助けられる。環境や周りにいる人が違えば、パーソナリティはそのままでも明るいほうに生きていける。
えみ「咲田くん、ありがとうね。フルーツ宅配便に連れてきてくれて」
咲田もまた、優しさが裏目に出てしまいがちな人物だ。最終話、咲田は優しいままで、咲田のままでみんなを助けることができるのか。最終話は、今夜0時12分から放送予定だ。
(むらたえりか)
▼配信サイト
・Amazonプライムビデオ(テレビ東京オンデマンド)
・ひかりTV(テレビ東京オンデマンド)
ドラマ24『フルーツ宅配便』(テレビ東京)
毎週金曜 深夜0時12分から放送
出演 濱田岳、仲里依紗、前野朋哉、徳永えり、山下リオ、北原里英、原扶貴子、荒川良々松尾スズキ、ほか
原作 鈴木良雄『フルーツ宅配便』(小学館・ビッグコミックス)
脚本 根本ノンジ
監督 白石和彌、沖田修一、是安祐
楽曲制作 高田漣
主題歌 EGO-WRAPPIN’「裸足の果実」(NOFRAMES / TOY’S FACTORY)
エンディングテーマ 超特急「ソレイユ」(SDR)
チーフプロデューサー 浅野太(テレビ東京)
プロデューサー 濱谷晃一(テレビ東京)、木下真梨子(テレビ東京)、赤城聡(フラミンゴ)、押田興将(オフィス・シロウズ)
制作 テレビ東京 オフィス・シロウズ
製作著作 「フルーツ宅配便」製作委員会