DISH// 紆余曲折を経て放つ、バンドの成長と未来が詰まった3rdアルバム

音楽以外にも、アートワークやファッションなどを通じてカルチャー性を発信していきたい


――3rdアルバム『Junkfood Junction』完成おめでとうございます。全員が20歳を超えた初のアルバムでもあり、アートワークも大人っぽくてオシャレな雰囲気ですね。

北村匠海
:ありがとうございます。
映画『ゴッドファーザー』とか、1950年代をイメージした衣装なんです。僕らとしては音楽ではもちろんですが、アートワークで、ファッションなどを通じてもカルチャー性を発信していきたいと思っているので、このような感じになりました。

橘柊生:『I'm FISH//』でも揃いのジャケットを着たり、『勝手にMY SOUL』では“おしゃれ甲冑”みたいなジャケットをみんなで着てますけど、それに比べても今回は大人っぽくなっているかもしれないですね。

北村匠海:大人っぽさを出しつつも、これまでのDISH//を受け継ぐものから僕らの未来が感じられるものまで、DISH//らしく幅広い楽曲を詰め込めたと思います。

――そもそも個々の活動が多忙になる中で、よくこれだけ盛りだくさんの作品を完成させたなと。

北村匠
海:僕らもそう思います(笑)。

矢部昌暉:昨年の年末頃からレコーディングが始まったんですが、今だから言えるけど、それぞれの活動もあるし、このツアーのリハーサルもあって……(笑)。

橘柊生:しかも、合間にはミュージックビデオも撮らなきゃならなかったし。

泉大智:そうそう。「配信シングルのリリースが迫ってる、ヤバい」ってなってた(笑)。

北村匠海:(笑)。その分、このアルバムは今までよりもメンバーで密に居る時間が多かったなと思います。
バンドにとってはいいことだったなって。

――先行配信シングルの豪華さも話題に。まずは、BiSHのアイナ・ジ・エンドさんがフィーチャリングした「SING-A-LONG」はいかがでしたか?

北村匠海
:レコーディング自体は一緒のタイミングで録ることはできなかったんですが、以前対バンさせてもらっていたし、MVではもちろん一緒に撮影しました。BiSHさんは名前が近いこともあって、気にかけてくださっていたみたいです(笑)。僕らももちろんそうで、シンパシーやアーティストとしてリスペクトを感じていました。今回はほぼハモってもらうような形だったんですが、「こんな合わさり方になるんだな」って。ユニゾンになるところは混ざり合うというより、互いに独立する感じというか。それがまっすぐ届くような感じがしました。

――BiSHを手がける松隈ケンタさんは、これまでにDISH//の楽曲も書いていますから、必然のコラボかなと。

北村匠海
:そう言ってもらえると嬉しいです。MVでは、僕らがバンドで演奏していて、アイナさんとは向かい合って歌ったんですよ。それが新鮮に感じました。
まとっている空気感や人との接し方から不思議なオーラを感じましたね。いい意味でつかめないオーラというか。

橘柊生:女の子の歌声がDISH//に入ることは珍しいと思うんですけど、違和感もなくて初めてがアイナさんというのも良かったなって。ここからいろんな方とフィーチャリングできたら僕らの幅も広がっていくんだろうなって思うんです。DISH//というものを確立している今だから良かった。もっと前だったら、ただ一緒にやるってだけでちゃんとその意義や意味が理解できなかったかもしれない。

――UNISON SQUAIR GARDENの田淵さんに「ビリビリ☆ルールブック」を書いてもらった経緯は?

矢部昌暉
:僕らのプロデューサーである新井弘毅さんは、ずっと前から「田淵さんの曲はDISH//に合う」と思ってくださっていたらしくて。今回、先行配信で3作連続でリリースすると決まって、「このタイミングでやりたいと思った」と言ってました。事実、作っていただいた曲を聴かせていただいたら、DISH//にぴったりで、なおかつユニゾンさんらしい楽曲だなって思って感激しました。

――レコーディングはいかがでしたか?

泉大智
:ベースとドラムから録って、そのあとにギター……って感じだったんですが、あまり話せなくて。

――互いにかなり激しい人見知り同士だったからでしょうか(笑)。

泉大智
:ですね(笑)。
ドラムとベースのブースに入るときに「よろしくお願いします」って挨拶したんですが、照れもあって(笑)。でも、演奏しているときは対角線上だったので、がっつり見させてもらいましたよ。たまに目があったときは、ちょっとだけアイコンタクトできたかなって。

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北村匠海(Vo,Gt)


――リズム隊は特に呼吸を合わせることが大事になりますが、その感触は?

泉大智
:たぶんその辺は、僕に合わせてくださったのかなと思います。僕のスキルが足りない分を補ってくださったんだろうと。直接「こうしてみたら?」みたいなことはなかったんですが、アレンジを手がけたGAKUさんと一緒に「2Aの感じはこうしていこう」みたいな感じで作り上げていきました。音決めはスムーズでしたね。

北村匠海:リズム隊が終わって、僕がバッキングギターのレコーディングだったんですが、めちゃくちゃ難しかったです。パワーコードでガシガシ弾くことが多かったんですが、今回はそうじゃなくてコード感も難しいなと思ったし、何しろテンポも速くて。カッティングギター系だったから、キレも求められましたし。それ以前に、音作りで1時間とかかかっちゃって。ギターをいろいろ試して弾いてみて、普段使っている自分のギターじゃないもので録ることになったので、それも苦戦した原因ですね。
最初はシングルコイル、ストラトキャスターで弾いてたんですが、テレキャスターで弾こうってことになって。指板もローズウッドじゃなくメイプルの硬いものだったので、「手にぜんっぜん馴染まないな~」って(笑)。

――匠海さんは冷静にそつなくこなす印象なので、苦戦すると聞くと、むしろ人間っぽくていいエピソードに聞こえます(笑)。

北村匠海
:(笑)。めちゃめちゃ人情味あふれる人間ですよ。

矢部昌暉:(笑)。僕はいつも通り大変でした。テンポが速いし、耳に残る特徴的なリフでもあるのできちんと鳴らさなきゃいけないって気持ちもあって、それがプレッシャーにもなりました。この曲の“上もの”ギターはちょっと聴いただけだと、そんなに難しいようには聴こえないものも実は難敵で。この曲は速さだけじゃなく、ノリとかも大事なんですよ。これを歌いながら演奏するのかと思うと、結構ぞわぞわしましたね。これまではライブで上ものを弾いてないときはバッキングを弾いていたりするんですが、この曲は上ものに徹するんですよ。
レコーディング云々の話以前のことかもしれないけど、どのタイミングで入るのがベストか体に馴染ませるのが難しいなって。

北村匠海:リズムギターは僕だけなので、今回はピックアップのパターンも変えて2度録ってます。リアで録って、フロントで撮ったのを重ねたりしています。

――柊生さんはレコーディングでつまずく印象があまりないのですが。

橘柊生
:ギターと違って音色がたくさんあるわけじゃないから、自分なりの弾き方に徹すればいいのかなって思っているんです。自分の弾いたものがアレンジャーさんに引っかかるかどうか。3回くらいつるっと録って、微調整するって感じだったんですが、3回とも結構違うアプローチでやりました。サビもデモでもらったものとはぜんぜん違う感じになっていますね。

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矢部昌暉(Cho,Gt)


――あいみょんさんからの楽曲提供は2作目ですが、「へんてこ」を最初に聴いた印象は?

北村匠海
:「めっちゃ好き!」って思いましたね。あいみょんさんの音楽はDISH//の全員が好きだし、向こうも僕らと相性がいいと思ってくれているみたいで。そういうのもあって、歌も一番歌いやすかったです。

――あいみょんさん独特のメロディラインや歌い回しも感じられる曲なので、歌いこなすのは難しいんじゃないかと思ったのですが。


北村匠海
:たしかにシンガーソングライターらしく、彼女らしいフレーズは随所にあると思います。そうやって彼女が1人でゼロから歌詞も曲も生み出していくところに、今回は僕らが乗っかっていきたいと思ったので(前回提供してもらった)「猫」以上に、彼女の世界観に寄せて行った感覚はありますね。それにもともと、レコーディングでストレートな歌い方をしていても、ライブではアレンジしてフェイクを入れたりするんですが、その感覚が近いのかなって思ったりもしました。

――フォーキーなテイストもDISH//には新鮮で、しかもフィットしているなと。

北村匠海
:あいみょんさんはたしかスピッツさんや小沢健二さんが大好きなので、そういうところも感じられていいですよね。この曲は僕らになじんでいる感じがしますね。

橘柊生:うん、そうだね。他の配信2曲にも言えるんですけど、どの曲も楽しんでできています。

北村匠海:「ビリビリ☆ルールブック」はこれまで僕らを応援してくれている人たちにも届きやすい曲だと思うので、お客さんの反応も良くて。この先やっていけばいくほど盛り上がっていく曲だろうなって感じます。「SING-A-LONG」は、僕らが魅せにいく、聴かせにいく楽曲。ライブの中でメッセージを発信する楽曲の一つになると思うし、僕らが僕ららしく見せていけばいいのかなって思っています。


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夏の野外ライブは、これまで僕らが経験したこともひっくるめてDISH//のいいとこ取りのライブにしたい


――いわゆるアルバム曲も、ポップな曲から洋楽的なアプローチまでより幅広く、しかも音楽性も豊か。ライブでそれらがどう響くのかも楽しみになりました。

橘柊生
:ありがとうございます。僕個人としては「乾杯」と「DAWN」をライブでやるのが特に楽しみですね。「乾杯」は自分らでも歌詞を書いたから思い入れも強いんですよ。ライブでやったら絶対に楽しいだろうなってイメージできる曲ですね。「DAWN」は初めて演奏したときはある程度想像できるんですけど、それが段々と浸透して行った時にどう変化するのかが楽しみな曲。短期間で急速に育てていくのがいいのか、じっくりと時間をかけて育てるのがいいのか、いろんな考え方ができる曲ですね。

泉大智:僕は「This Wonderful World」ですね。

――おしゃれな雰囲気の曲ですね。

泉大智
:そうですね。サビの感じも好きだし。アルバムの1曲目にふさわしい。今のDISH//を象徴しているという感じがします。新井弘毅さんが作詞作曲してくれた曲で、いろんな思いを感じられるところも含めて、好きな曲ですね。ドラムも4つ打ちでダンスビートなので、自分が好きなパターン。ライブで乗っていけそうな曲だなってイメージしています。

北村匠海:僕は……「へんてこ」かな。なぜかずっと聴いちゃうくらいすごく好きなので、ライブでやるのも楽しみです。お客さんも「聴きたい」って思ってくれる曲になったら嬉しいですね。「スマホの中のラブレター」は、久しぶりに小倉しんこうさんが書いてくださった曲で、昔からDISH//を知ってくれてる人が書いてくれたこともあるし、小倉さんらしい言葉遊びもいいなって。これを大人に見せていくのが今のDISH//なのかなって思っていて、ライブでどう魅せるかいろいろと考えられますよね。

――大人の男性があえてかわいいラブソングを歌うのって素敵ですよね。

北村匠海
:そうなんですよ。今回はこんな感じのシックな衣装だし、ギャップも楽しんでもらいたいです。

矢部昌暉:僕は、いしわたり淳治さんが作詞してくださった「理由のない恋」がライブでどう聴こえるのか楽しみです。この歌詞を読んだとき、すごいなって驚いたんですよ。バラードはだいたい匠海がメインで歌うことが多いんですが、今回はみんなが歌うのもいいなって。バラードでは「サクラボシ」以来じゃないかなと思います。みんないい声してると思うし、それぞれの歌声が僕も好きだから、それを届けられるのがいいなって。ファンの方もきっと推しの歌声も聴きたいと思うんですよ。それにみんな、バラードって(急に大きな声で)好きじゃないですか!

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泉大智(Dr)


――(笑)。今作はみなさんの歌声が聴ける曲が増えましたね?

泉大智
:そうですね。普段から歌ってないと歌って難しいですけどね。日常的に歌っている人は発声など自然にできるんだと思うんですけど、自分にとっては新鮮で。「理由のない恋」はバラードなのにユニゾンで歌うところが多かったし、新しいなって感じがしました。

――柊生さんは歌う機会も多いから慣れてる?

橘柊生
:どうなんですかね(笑)。自分の歌声ってどんな立ち位置なんだろうって思ったりもしつつ、楽しんでもらえたらいいなって思っていますね。一生懸命歌います!

――ところで、「Sa-La-Band ~the last song~~」を持って皿バンドは終了に?

橘柊生
:一応、最後ってことですかね。

北村匠海:うん。一応、ピリオドは打ったつもりです。

泉大智:状況次第です(笑)。

――『Junkfood Junction』はDISH//にとってどんな作品になりそう?

北村匠海
:まず言えるのは、今までで一番いいアルバムができたなって感じています。常に「今」を更新していかなきゃいけないし、どうあるべきかをメンバーやスタッフさんを交えて話し合いもしました。レコーディングが始まったときは、どんなものになるか着地点は見えてなかったんです。でも曲が出来上がっていくと次第に全体像が見えてきて、マスタリングした音源を聴いて、やっと「いいものができた」と確信できた。点を打ってきたものが一つに繋がった感じでした。自分たちをちゃんと更新できているし、成長もあるんだなってことを僕ら自身も再確認できました。早く届いてほしい、聴いてほしい。自分たちの口から迷いなくそう言えるものが作れてよかったなって思います。2019年に満を持して出すアルバムとして最高のものができたなって思います。

――言葉にするのは簡単ですが、本当にいろんな苦労や思いを乗り越えてきたんだろうなと。「Starting Over」はポジティブな楽曲なのに、聴くと泣けてきたりして……。

北村匠海
:そういうスラッシャー(ファン)の方は多いみたいですね。重い話するつもりはないんですが、僕らが前向きに引っぱっていきたいし、前を向いて進んでいく姿勢を示したいです。

――8月にはアルバムを携えた野外ライブ『DISH// SUMMER AMUSEMENT '19[Junkfood Attraction』の開催も決まりました。どんなライブにしたいですか?

北村匠海
:野外ライブは何度も経験してきましたが、僕らにとって最大規模のものなので気合いが入りますし、まだ見えないこともあります。ただ、『Junkfood Attraction』とあるように、楽しめるものにしたいですね。自信作であるアルバムの全容が届けられるライブでもあるし、これまでにいろんな形態でのライブをやってきた僕らが、イベントや対バンで思い知らされたことや、自分たちの力だけでは成し遂げられないという気づき……、そういった、これまで僕らが経験したこともひっくるめてDISH//のいいとこ取りのライブにしたいです。みんなそれぞれロックな一面があるし、一人ひとりがDISH//で活動してきた軌跡みたいなものを無駄にしない、DISH//なりの音楽エンタテインメント、ライブを作り上げたいです。

DISH// 紆余曲折を経て放つ、バンドの成長と未来が詰まった3rdアルバム
橘柊生(Fling Dish, RAP,DJ,Key)


――では最後に、改めて本作への思い、オススメの聞き方などをお願いします!

泉大智
:僕は次につながる1枚だと思っていて。新しい挑戦を感じる曲も多いので、新たに好きになってくださった方にも入りやすい作品なんじゃないかと思います。ずっと応援してくださっている方には、一緒に前を向いて進めていける1枚だと思いますね。

橘柊生:1枚のアルバムを通してライブを観たかのような、聴いているような感覚になれるように、曲順をセットリストを組むように並べているんですよ。ドライブしていたり、通勤や通学途中に聞いてもらえるといいんじゃないかなって思っていて。生活に寄り添ったり、支えになるようなアルバムなんじゃないかと思います。

矢部昌暉:本当にいろんな楽曲が集まったなって。昨年末にスタッフさんと集まったときに「DISH//、頑張っていきましょう!」って心を固めたんです。そんなチームが一丸となって作ったアルバムなんです。昔歌っていたようなポップな曲からずっと歌っているロックな僕らっぽいもの、「DAWN」みたいに今までは歌ってこなかったような壮大な曲まで。すごく濃い中身になっているので、スラッシャーはもちろんですが、僕らの名前くらいしか知らない人にも届いてほしいですし、僕らを知るには最適なアルバムになっていると思います。

北村匠海:そうだよね。既発曲には今のライブの終盤を担う、すでに大事な曲になっているものもあって、今の僕たちを作り上げてくれた曲たちもたくさん入っています。CD以外にも映像など、あれこれ楽しんでもらえるコンテンツを用意しているので、「DISH//を知って得したな」って思ってもらえる1枚になっていると思います。

(取材・文/橘川有子、撮影/コザイリサ)

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