
■DISH// Spring Tour 2019「Dress Up a Burnt Whole Cake !!!!」
2019.04.20(SAT)at 千葉・市川市文化会館
4月にリリースした3rdアルバム『Junkfood Junction』が絶好調で波に乗るダンスロックバンドDISH//。恒例となった春ツアー『Dress Up a Burnt Whole Cake!!!!』のファイナルで、4人とスラッシャー(ファンの呼称)との絆、そしてバンドとしての確かな成長を見せつけた。
ステージにはクラシカルで豪華なシャンデリアが吊るされ、深い赤のカーテンがドレープを描く大人っぽいセットが組まれていた。シックな雰囲気が漂うステージに、Red Hot Chili PeppersのオープニングSEが流れるというちょっとしたミスマッチ感……アンビバレントな魅力を融合するDISH//らしい選曲だ。
暗転するやいなや、透過スクリーンに映像が映し出され、稲妻のような2本の閃光が斜めに走った。それが開演の狼煙となり、「僕たちがやりました」でライブはスタート。赤と黒が織りなすダークな世界観とヘヴィでエモーショナルな楽曲が見事に重厚な世界観を構築していた。
北村匠海が吠えるように熱唱した後、「DISH//です。最後までよろしく!」と短く挨拶。「皿に走れ!!!!」では、ステージ最前列に設置された3つのお立ち台に、匠海、矢部昌暉、橘柊生の3人が上がりヘドバンでスラッシャーを煽る。もちろんスラッシャーたちも負けじと頭を前後に振り下ろしていた。

ギターリフから始まる「晴れるYA!」や「勝手にMY SOUL」の印象的なイントロを奏でる昌暉のギターが、バンドサウンドを牽引。始終リードギタリストとしての頼もしさを漂わせていた。
「ファイナルです! ホールなので席はありますが、熱くなれると思うんで」と熱狂的なライブを約束した匠海。
「楽しんでますか?(僕らは)めっちゃ楽しいです! 毎年春ツアーをまわらせてもらっていますが、昨年は右手を怪我して……」と春ツアーの思い出を語り始めた匠海。「利き腕の右手を怪我して、ブラーンとさせながら歌ったり踊ったり(笑)。一昨年は昌暉がやっちゃったよね、気管支(の病気)。それで欠席して、今年は何もないといいねって言ってたんだけど……」。すると昌暉は申し訳なさそうな表情を浮かべた。本ツアー中も胃腸炎で1公演のみ欠席せざるをえなかったという。近年ますますソロも多忙になる4人は、ツアー中にドラマの撮影や舞台、アルバムのプロモーションと精力的に活動。ツアーへの思いの強さもひとしおだったため、誰よりも欠席することを悔しかったのは昌暉本人だったにちがいない。
気分を変えるように、匠海は明るく力強い声で「ダンスロックバンドなので、体をちょっとばかし動かして踊りたいなって気分です。
その言葉が号令となり、天井からミラーボールが出現。光を会場いっぱいに撒き散らしながら「Shall We Dance????」へ突入した。サビ前の「Shall We Dance?」では昌暉がキュートに首をかしげるパフォーマンスで愛らしさを爆発。「スラッシャー大好き!」の決め台詞もキュートに決め、黄色い声を浴びていた。




大智のパワフルなドラムソロからなだれ込んだ「Never Stop Now」や、ダンサブルなビートが心地よい「BEAT MONSTER」では、フロントの3人が演奏しながらステップやふりを合わせて、軽々と切れ味鋭いダンスを見せた。息を揃えたダンスをするだけでも難しそうで、さらに演奏や歌唱もしているのだからすごい。DISH//の底力に改めて驚嘆させられるひとコマだった。
女子高生と付き合いたいと歌うユーモラスな「JK//」では、大智もドラムから離れ4人でパラパラを披露。曲間に4人がスラッシャーに向けて「付き合ってください!」と告白するも、全員から「ごめんなさい」と断られるというやりとりも楽しいナンバーだ。
楽しい空気のままMCへ。柊生がなぜか夢のリゾートに出てくるキャラクターのような口調で「みんな、ファイナルだよー。ありがとう、んな!」とおどけながら話し、さらに場が和やかに。
ツアー中の思い出として、大阪公演では「Shall We Dance?」で昌暉の決め台詞を柊生が受け継いだが「恥ずかしかった~」と吐露。本家の昌暉から「恥ずかしがっちゃダメだよ(笑)」と突っ込まれる場面も。何気ないやりとりに4人の歴史や支え合ってきた絆の深さが垣間見えた。
「懐かしい曲、やります」と告げて再びライブへ。お祭り感いっぱいのナンバー「踊らにゃソン!Song!」では、スラッシャーの「D・I・S・H・//」の掛け声が響き渡った。いっぽう、メロウな「猫」では、再び透過スクリーンにリリックビデオが映し出され、ロストラブソングを鮮やかに彩った。アコースティックギターをかき鳴らしながら切なく歌い掛けるボーカルに、誰もが聴き入っていた。
「お前ら、そんなんでいいのか。行くぜ、千葉!」という絶叫とともに、コラボシングルとしてリリースされた「SING-A-LONG」へ。アイナ・ジ・エンド(BiSH)のパートを3人が歌い継ぎ、DISH//100%の新たなバージョンとして会場いっぱいに轟いた。




「まだまだ行くぞー!」と間髪入れずに続けた「I'm FISH//」では、ホーンが鳴るハッピーな空気の中、釣りをするパフォーマンスで会場みんなが笑顔になった。大智がドラムで繋げて、止まることなく「東京VIBRATION」に突入。会場全員でタオルを片手に持ち回すこの曲で、誰よりも高く手を挙げ力強く振っていたのは柊生だ。彼の導きがあることで、ライブがどんどん熱くなっていくのだろう。それでいて、自身の歌うパートでは「だからアルバム買って」とおねだりするチャーミングな顔をのぞかせるのだから、ずるいとしか言いようがない。ライブ人気定番曲となった「愛の導火線」では、匠海と昌暉のツインボーカルが響き渡りスラッシャーを悩殺した。
「もうやばいね。やばいです。春ツアーも無事にファイナルです。
4人の総意を匠海が代表して真摯に伝えた後、本編ラストの「JUMPer」を演奏。曲の冒頭で威勢良くキャノン砲が打ち上げられ、スラッシャーたちはこの日一番の大きな声で大合唱で応えた。多幸感に溢れる空間を全員で作り上げて終演となった。

4人がステージから去ると、すぐさま「おかわり!」のコールが。Tシャツに着替えた4人が登場し、匠海が「アンコールありがとうございます」と話し始めた。が、急に表情を変えて「一度、照明を落としてもらえますか」と焦った様子を見せた。暗がりの中で息を整えたのか、あいみょんとのコラボ2作目となる「へんてこ」を披露し始めた。
歌い終わるやいなや、「ごめん、完全にミスった(汗)。本当は黙って出てきて歌うところを……ファイナルでやっちまったー」としきりに謝る匠海。どんなことも器用にこなす彼が慌てる姿を見れるのも、ある意味でライブならではの希少な体験。「間違えちゃうんなんて『へんてこ』でいいよ」と柊生が冗談めかしてフォロー。「匠海が気づいた瞬間のあの表情、リプレイしたいね(笑)」と笑わせた。スラッシャーもそのやりとりを嬉しそうに見守っていた。
もしかすると、ファイナルもいよいよ終盤となり、やっと少し緊張の糸がほぐれたのかもしれない。富士急ハイランド・コニファーフォレストでのライブのインフォメーションでは、「山口県河口湖」とありえない失態までサービスしてくれた(正しくは、山梨県です(笑))。「ゼッッッッッッたいに損しない、サイッッッッッッッッッッッこうのライブにします」と柊生が誓った。
自然体でカッコつけないけれど、カッコいいことをサラリとやりのけてしまうDISH//。アンコール2曲目では、そんな彼らの自由さを謳歌する「ビリビリ☆ルールブック」を爽快に歌い、奏でた。オールラストはパンク調のまっすぐでキャッチーな「変顔でバイバイ!!」。ペンライトを懸命に回して応援するスラッシャーたちの姿を、なんとも嬉しそうに眺める4人の表情が、この日のライブの成功を何よりも雄弁に物語っていた。

今回の春ツアーはアルバム発売前からスタートしたこともあり、作品の全貌は未だ届けられていない。新作には挑戦的なナンバーも多く、それをライブでどのように具現化するのか期待値は高まるばかりだ。8月18日の河口湖『Junkfood Attraction』で彼らが何を魅せるのか、今から楽しみで仕方がない。
(取材・文/橘川有子)
セットリスト
1. 僕たちがやりました
2. 皿に走れ!!!!
3. 晴れるYA!
4. 勝手にMY SOUL
5. FREAK SHOW
6. That's My Life
7. コトダマ
8. キット
9. Shall We Dance????
10. Never Stop Now
11. BEAT MONSTER
12. JK//
13. 踊らにゃソン!Song!
14. 猫
15. SING-A-LONG
16. I'm FISH//
17. 東京VIBRATION
18. 愛の導火線
19. JUMPer
<ENCORE>
1. へんてこ
2. ビリビリ☆ルールブック
3. 変顔でバイバイ!!

番組情報
フジテレビTWO/TWOsmart
『DISH// Spring Tour 2019「Dress Up a Burnt Whole Cake !!!!」』
2019年6月29日(土)20:00~22:00
詳細:https://otn.fujitv.co.jp/dishst2019/
ライブ情報
【DISH// SUMMER AMUSEMENT'19『Junkfood Attraction』】
2019年8月18日(日)富士急ハイランド・コニファーフォレスト
特設サイト:http://dish-web.com/summeramusement2019/
■DISH// オフィシャルサイト